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「イー・アクセス」問題と周波数オークションについて

昨日、周波数政策に関する鬼木阪大名誉教授の意見を取り上げた記事をツイートし、その後私の意見を連続ツイートしたら、結構反響をいただいた。

鬼木阪大名誉教授が警告!「総務大臣は保有免許の『承継』は拒否せよ!政府はソフトバンクによるイー・アクセス買収を阻止すべきだ」  | 小池良次「シリコンバレー・イノベーション」 | 現代ビジネス [講談社]

その中で、私のことをいっしょくたに「政府の御用学者」とお呼びになった方 *1 がおられて、まぁ私自身がどう思われても構わないけれど、この一連の話の構図がちゃんと理解されてないのでは、と思ったので一応まとめておくことにした。

この件は、「正義の味方であるソフトバンクのやろうとしていることを、邪悪な政府やNTT/KDDIが邪魔する」という構図ではない。

私はかねてから、「周波数割り当てのプロセス透明化を目的としてオークションを導入すべきだ」と主張している。遡ってみたら、このブログを始めた2005年ころはほのかに言っている程度だけれど、その後アイピーモバイルやウィルコムやモバイルTV向け周波数10年戦争のドタバタなどをさんざん見て( ´゚д゚`)アチャー とつくづく思って、だんだんはっきり言うようになった。LTE用周波数からオークションをやるべき、というパブコメも総務省に出したことがあるし、いくつかまとまった記事も書いている。

でも、ドコモもKDDIもソフトバンクも総務省も、皆過去の経緯を引きずっているために、周波数オークションはやりたくない。なので、業界あげて、オークションの話を潰した。私の言うことなど誰にも聞こえていないけれど、もし聞こえていたら、むしろ総務省やキャリア全部から疎まれる立場だ。その意味では、松本氏が私をdisられる *2のも仕方ない。*3引きずっている過去の経緯もある程度、それぞれに理解できる部分もあるけれど、それでも業界全体の将来のことを考えたら、どこかでイチニノサンでやらないと、いつまでたっても「あの時の義理をこうやって返さなきゃ」とかの話が延々と続く。

今回の件については、私はソフトバンクの行動を問題にしているのではない。現在のルールのもとで、ソフトバンクがああいった形でイー・アクセスを買収することは全く問題ないし、今は周波数がますますたくさん必要な局面であることも然り。また、900MHzを返上せよとかイーモバの700MHzを切り離して売却しろとかいった話は「独占禁止」の枠内で議論すべきことで、周波数政策の現在のルールではさばけない。*4

ただ今回のソフトバンクの行動に関しては業界内でも「ずるい」という批判が多い *5 ようで、「だから言ったじゃん、裁量行政をやっていたからこういうことが起こる、最初からオークションにして、プロセスを透明化しとけばよかったのに、そうすれば無駄な感情論を避けられたのに」ということを、私は言いたかったのだった。キャリア(SB含む)は「オークションになったらお金がたくさんかかって、サービスの料金が上がってしまう」と言っているが、上記松本氏がご自分でもその後Tweetの中で「それじゃ、天下り受け入れや研究費バラマキやなんたらかんたらやってる他のキャリアはいいのか」と仰っておられるように、すでに周波数合戦には水面下で大きなコストがかかっている。モバイルTV十年戦争なんて、10年やってたんだから、それに関わる人件費だけでも大変なものだ。そういう机の下のコストをオークションという形で机の上に出して、誰かのポッポにではなく正当に国庫にはいるようにし、裏工作の調整で時間を浪費するのをやめてプロセスを迅速化しましょう、と言いたいのである。

そうしないで数年プロセスが遅れれば、新しい無線技術を使ったネットワークの展開が遅れ、日本の競争力が落ちる。たとえばモバイルTVなど、十年たってサービスを入れた時点ではすでにはるかに遅れたサービスになってしまった。今、それがどうなっているか、ほとんどの人は知らないだろう。貴重な周波数と、多くの関係者の時間と労力と、やりたくないけど周波数もらったから仕方なく始めたサービスにかかるドコモの投資が、完全に無駄になり、ユーザーには何の足しにもなっていない。嬉しいのは無駄に設備を買ってもらったメーカーだけだ。まぁ、やってみたけどやっぱダメだった、というのはこの業界でも日常茶飯事なので、その一つといえばその通りだが、仕組みが無駄を促進しているように見える。

今回の件で、もし総務省がソフトバンクに「面子をつぶされた」と怒って妨害工作を始めたら、またまた業界統合のプロセスに遅れが出る。またまた、多くの関係者の労力が無駄遣いされる。もう感情論はやめにしたほうがいい。

「誰かが悪い」と批判する気はない。皆、今の枠組みの中で合理的にやっているだけで、その枠組みが時代に合っていないと思うのだ。オークションはパーフェクトな解決方法ではないけれど、しょせんこの世にパーフェクトは存在しない。でも、この感情論の泥沼よりはもう少しマシな仕組みにする(種々の設定や調整が必要だが)ことができると思う。

周波数に関しては、「難しい、わからない」というのが多くの業界外の人の反応で、一般マスコミの反応も鈍かったが、国民共通の財産である「周波数」をどうするかの大事な政策だ。私の言い分に賛成か反対かはどちらでもいいが、この件でなるべく多くの方に興味を持っていただき、将来の通信産業と、ユーザーの利便性向上のために、日本政府が周波数の割り当てルールをどうすべきか、考えていただければ望外の喜びである。

残念ながら、次にオークションを導入して実際に大きな新サービスができるチャンスは、この先数年か、おそらく十年、もしかしたらそれ以上、ないだろうと思う。日本はLTEの好機をまたまた逃した。でも、のろい日本で何かの仕組みを変えようと思ったら最低十年はかかるだろう。だから、どちらの立場をとるにせよ、今からでも根気強く、議論を積み重ねておく必要があると思う。

*1Twitter / min117: 遠隔操作犯も警察おちょくるなんてくだらないことより、 ...

*2Twitter / matsumotot68: 経済もビシネスも全く分かっていない人には困ったもの。 ...

*3:なお、私は、1990年代前半にリサーチャーとしてアメリカのオークション仕組みづくりプロセスを調べ、その後アメリカ周波数オークションに深い縁のある会社社員だったことがあり、その後現在に至るまではこの件に継続的に興味をもっている泡沫コンサルタントかつ日本の将来を憂える一日本国民です。ただ現場にいただけで、経済もビジネスもわかっていないと言われても仕方ありませんが。w

*4:私はオークションは「供給過剰局面では新規参入促進、需要過剰局面では企業統合促進」になると考えており、必ずしも新規参入を増やすためにオークションをやれと言っているわけではない。また逆に「大プレイヤーがますます有利になるではないか」という批判に対しても「だって、今の局面では巨額の長期投資が必要なのだから、そういう体力のない企業はそもそも成立できない」と思う。アイピー某とかイー某とかウィル某とか・・

*5:「ソフトバンクは900MHz、イーモバには700MHzをひとつずつあげて、みんな仲良く分けましょうとやってあげたのに、その二つがくっついたら一社で二つになっちゃう、ずるい!」という話。ぜんぶタダでもらうからそういう話になる。オークションで国民の眼前で公開された状態で戦って決着つけた後で、やっぱり統合したほうがいいよね、ということになって相手の会社の払った周波数免許料も考慮に入れた買収額で買収し、そういう場合の免許譲渡ルールに従って政府に申請し、独占禁止の問題がないと判断されて買収が行われるなら問題なしと考える。

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