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アカデミー作品賞へのノミネート条件追加 アメリカでは賛否の声

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数ある映画賞の中でも圧倒的な影響力を持ち、毎年の受賞作品が世界中の注目を集めるアカデミー賞。次回開催される第93回授賞式は、コロナウイルスの影響で2021年4月25日へと延期が決まっているが、その選考を行う映画芸術科学アカデミー(以下、アカデミー)が、現地時間の9月8日、最高賞である作品賞のノミネート資格について新しい条件を発表し、賛否両論を巻き起こしている。

具体的な条件の前に、その経緯について少し説明したい。アカデミーは、アカデミー賞候補作品への投票権をもつ会員の多くが白人男性で占められてきたことなど、その保守的な体制が知られており、2015年と2016年には2年連続でアカデミー賞の俳優部門で、有色人種が一人もノミネートされないという事態に「OscarsSoWhite」(白人だらけのオスカー)と揶揄され、大きな批判を浴びた。

キャストの3割がマイノリティに?作品賞ノミネートの新しい条件

その後MeTooムーブメントも含め、アメリカ社会全体で多様性を求める声が広く上がる中、オークワフィナやゼンデイヤなどの女優たちも会員に招き、アカデミー内部からも2020年までに女性、有色人種、および外国人の会員を倍にしようというイニシアティブが提唱された。

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結果的に2015年当時、会員の92%を白人が、75%を男性が占めていたのが、2020年には白人会員が81%に、男性会員は67%へとそれぞれ減ったものの、完全に問題が解消されたとはまだ言えず、次にアカデミーが打ち出したのが「Aperture 2025」というさらなる多様性実現のためのイニシアティブで、その一環として上記の発表が行われた。会員の割合だけでなく、そもそも作品賞候補になるためには多様性をもった作品でないとダメ、という抜本的な縛りを作ったわけである。

発表されるや否や賛否両論を巻き起こしたこの条件であるが、ここで条件の具体的な内容を見てみたい。

A.主役、あるいは重要な役柄に少なくとも一人のアジア系、ヒスパニック系、アフリカ系、ネイティブアメリカン、中東系、ハワイ系もしくは太平洋諸島にルーツを持つ人々、またはその他人種的マイノリティを起用すること。もしくは女性、LGBTQ、人種的マイノリティ、または身体的障がいのある俳優を、メインではない役柄の少なくとも30%以上で起用すること。もしくは、上記マイノリティの人々をめぐるストーリーライン、主題を映画の中に含めること。
B.上記マイノリティをクリエイティブの責任者または部門長(制作、脚本、カメラ、照明、メイクアップ、衣装、VFXなど)として、一定数以上起用すること。
C.上記マイノリティに当てはまる人たちを、制作に関係する部署の有給インターンシップやトレイニーとして雇用すること。
D.あるいは上記マイノリティを配給・マーケティング部門の責任者として一定数以上起用すること。

ざっくりとまとめたが、おおよそこれら4つのカテゴリーのうち2つ以上を満たすことが、アカデミー作品賞にノミネートされるための条件となる。適用は2024年に開催される第96回授賞式の作品賞からだ。まだあと数年の猶予があるものの、ハリウッドのメジャースタジオによる映画は企画から公開までに数年かかることも珍しくないし、制作だけではなく配給・マーケティング担当の人事にまで条件が及んでいるのだから、これくらいの時間的猶予がないと2024年からの実施は難しいのだろう。

日本映画へはどういった影響が?

主役級の俳優、すなわち映画の顔とも言える要素に対して条件が課されていることに、困惑した人たちも多いことと思う。過去には『おくりびと』『千と千尋の神隠し』といった作品がアカデミー賞を受賞し、近年では特に長編アニメーション賞でノミネートされることも多い日本の作品であるが、上記の条件が日本映画へ影響を与えることはあるのだろうか?結論から言ってしまうと、現時点でこれまでのような映画を作っていく分には直接的な影響はない、というのが妥当だろう。

まず今回設定されたのは、作品賞ノミネートに必要な条件であって、日本作品が最も馴染み深い長編アニメーション賞や国際長編映画賞(2020年に外国語映画賞から変更)はこれまで通りのノミネート条件で据え置かれる予定で、「インディワイア」をはじめとしたハリウッドの情報サイトや業界紙でも、これらの条件がすぐに他部門へのノミネート資格にも適用されることはないだろう、と伝えている。

また非英語作品として初めて作品賞を受賞した韓国の『パラサイト 半地下の家族』のように作品賞を狙うとしても、そもそもこの条件はマジョリティ、すなわち異性愛者の白人男性のみによって作られたマジョリティのための映画にもっと多様性を与えよ、という意図で作られたものであり、我々日本人はマイノリティに含まれる側なのである。

BLOGOS編集部

また忘れてはならないのは、この条件がただ闇雲にヒスパニック系やアフリカ系俳優などのマイノリティ役を一定数登場させることを課すような性質のものではないということだ。例えばヨーロッパを舞台にした歴史物で、ストーリーの文脈からどう考えてもマイノリティのキャラクターが登場することが不自然と思われる場合は、クルーや配給・マーケティングで条件を満たすという方法も用意されている。

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