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マツタケに大異変…絶滅危惧のうえ「中国人が美味に目覚めた」

中国市場に大量に運び込まれるマツタケは、かつて「産地の人しか知らない」存在だった

 なぜか、日本人の心を躍らせる高級食材「マツタケ」。近年までは、この美味を知っているのは、日本人だけだったーー。急激に需要が増えた中国市場。そして、“絶滅危惧種” へ。日本の食文化「マツタケ」はどこへ……。

 9月末からは、例年「マツタケ」の最盛期。2020年は、あの「Go To Eatキャンペーン」を使って、食べたいと思う人も多いだろう。だが……。

「2020年は、マツタケをメニューに出す予定はありません」(「天丼てんや」戦略広報部)
「総合的な判断で、2020年はマツタケを使用しない判断に至りました」(回転寿司「スシロー」担当者)

 2019年までメニューに採用していた外食チェーンが、本誌の取材に “マツタケ離れ” を表明したのだ。

 さらには、2020年7月9日、国際自然保護連合(IUCN)が、マツタケを絶滅危惧種に指定したことも話題に。「過去50年間で生育量が30%以上減少した」のが、その理由だが、秋の味覚の最高峰・マツタケに、たしかに異変が起きている。

「最盛期だった1941年、日本の収穫量は1万2000トンだったが、2019年は凶作もあって14トン。収穫量が激減しているのは、間違いありません」

 そう語るのは、茨城県にある森林総合研究所・研究ディレクターの山中高史氏だ。

「日本の歴史で、最初にマツタケに関する記述が出てくるのは、万葉集。当時、平城京を作るために山から木材が切り出され、マツタケを生む『アカマツ』が生育しやすい環境が、近畿を中心に整っていました。

 石油、ガス、電気が普及するまで、マツタケの育ちやすい環境は続いており、昭和30年代でマツタケの値段は1kg500~600円。じつは日本人にとって、マツタケは身近な存在でした」(同前)

 それが高級食材になってしまったのは、「里山の崩壊」と、線虫がマツを枯らす「松くい虫被害」が原因だ。

「かつては広島、岡山、兵庫、京都など西日本がマツタケの産地でした。しかし、今では西から東へ『松くい虫被害』が進むなか、標高が高い寒冷地では被害が少なく、長野や岩手が収穫量1位・2位という状態が続いています。

 国産マツタケは1kg2万~3万円が相場になっており、さらに高騰するかもしれません」(同前)

大東通商が持つ、中国の生産加工場の作業風景。さまざまな調理に用いやすいように、縦割りスライス・チップと分けて加工している(写真提供・大東通商)

 日本で売られるマツタケの9割以上は海外産。その海外産の6割を占めるのが、中国産だ。中国雲南省、四川省にまたがる山岳地帯は、世界最大のマツタケ産地。大手飲食チェーン店などと取引している「大東通商」は、現地でマツタケを加工し、日本へ輸入する。大東通商の東野文武社長が語る。

「中国は日本より収穫時期が早く、7月後半に第一波が始まります。6~7月に価格が決まり、8月に加工して、9月から日本で販売する流れです。

 冷凍加工したものの相場が、1kg6500円ほど。2020年はコロナの影響で、7~8月の段階で例年の6割しか需要がありませんでした。今は9割ほどに回復しましたが、外食が厳しいと、うちの会社も厳しい」

 2003年の同社創業以前から、東野社長はマツタケ輸入に携わり、中国の状況を見てきた。

「私がマツタケと関わり始めた20年前、中国人はマツタケを食べませんでした。外貨を獲得するため、100%が輸出品でした。それが、医食同源で『マツタケを食べれば免疫力が高まる』という考えが広がり、お金持ちの人が食べるようになったのです。いまは現地価格も高騰しています」

 漢方的な美味に目覚めた中国人たち。変化は早かった。

「10年ほど前に産地の近くに空港ができ、3~4年前に中国の流通大手が自社ジャンボジェット機で買いつけるようになりました。いまは、毎日の相場がリアルタイムで実況されます。アプリで数回タッチするだけで簡単に購入できて、2~3日で家庭に届くようになっています」(同前)

 世界最大の産地でも、当然、無尽蔵に採れるわけではない。

「中国では10年ほど前から、減少を食い止めるための法律があり、売り上げの数%を山の管理費として徴収されるのです。だから、収穫量は安定しています。ただ採取場所が、どんどん奥地、高地になっているのは心配です」(同前)

 まだ採れるとはいえ、減少中なのは間違いない。そうなれば、最後の希望の光は「人工栽培」だ。現在、成功しているのは、「マツタケから菌を分離して菌を持ったアカマツ苗を作る」段階まで。

「『苗木を山に植えて、そこから広がった菌糸が2年ほど残った』というのが実験の “最高到達点” です。菌糸が定着して、そこからマツタケが生育しなければ、人工栽培成功といえません」(前出・山中氏)

 だが、山中氏の森林総合研究所は奈良県森林技術センターと共同で、“代用きのこ” ともいえる近縁種「バカマツタケ」の人工栽培に成功した。

「香りはマツタケと、ほぼ同じ。商品化できるのは、まだ先ですが、マツタケの約1割の値段で市場に出せるのではないでしょうか。人工栽培のおおまかなやり方は一緒です。20年ほどかかると思いますが、マツタケの人工栽培も不可能ではないでしょう」

 マツタケが日常に。再び、そんな日がーー。

(週刊FLASH 2020年10月13日号)

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