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「困っている人たちは待てない」熊本地震、豪雨被害…元日本代表・巻誠一郎が独自の災害支援続ける理由

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多くの熱狂を生むスポーツ・サッカーの舞台裏を取材する森雅史さんの連載『インサイド・フットボール』。今回は元サッカー日本代表の巻誠一郎氏にインタビュー。巻氏は熊本地震をきっかけに災害時に被災者を支援するNPOを立ち上げ、独自に活動を続けています。今回は現在行っている熊本南部豪雨災害の復旧活動に加え、災害時にサッカーができることについても、お話を伺いました。

2020年7月3日、熊本県を豪雨が襲った。4日の早朝、県南部を流れる球磨川は氾濫し、広範囲に泥水が溢れた。水位の上昇が1時間で1メートルを超えるほど急激だったため避難が間に合わず、最終的に九州豪雨では、死者68名、行方不明者12名という大きな被害も生んでしまった。

5日、サッカーの元日本代表で熊本出身で現地在住の巻誠一郎氏は被災地への支援を始めることを宣言。2016年4月の熊本地震のときに設立したNPO法人を活用しながら、支援物資の拠点を作り、クラウドファンディングで資金を募った。今回は、現在も被災地を訪れ、復旧活動を続ける巻氏に見えにくい現地の現状を聞いた。

話を聞いた巻誠一郎氏

7月の洪水被害 支援の届かない高齢化した集落も

——7月3日から4日にかけて熊本は洪水に襲われました。約2カ月が経過して、熊本の現状はいかがですか

復旧は多くの場所でまだまだ進んでいませんが、人吉球磨地方の被災地の中で一番人口が多い人吉市など、進んでいる場所もあります。市街地は若くて体力のある方が住んでいて、復旧・復興しているし、メディアの方もよく取材なさっています。ですがそこから離れると、道が土砂で塞がれていたり、橋が崩落していて、支援の手が届かない集落があります。

不通になっている線路の上を通って迂回し、やっと被災地にたどり着けるという場所もたくさんあります。家が崩れて道を塞いでいるのですが、家屋の持ち主と連絡が取れず、勝手に処理が出来ないために開通できないというところもありました。そういう集落は被災して2カ月経過しても、市街地の1〜2週間経った程度の復旧しか進んでいません。

また、ボランティアがなかなかたどり着けないような場所には、60代ですら最年少という高齢の方が多い集落が点在しています。そこでは後期高齢者の方々がお互いに助け合って、少しずつ復旧を進めているというのが現状です。

——被害はどれくらいの規模で、被災者の方々の住む場所はどうなっていますか

全半壊した家屋が550軒以上、床上浸水した家屋は5500軒以上と言われています。仮設住宅の設置は進んでいますが、8月中旬の時点で20軒程度が建てられたに過ぎません。最初に出来上がった仮設住宅はコンテナを使用した住戸で、木造の建築物は今基礎を作っている段階です。まだこれから1000戸から2000戸分は必要ではないかと思います。

2016年の熊本地震のときも、仮設住宅に住めるようになるには災害発生から3カ月程度かかりました。今回も同じように3カ月程度かかるのではないかと思っています。

被災地の様子 写真提供:巻誠一郎

熊本地震から継続 巻誠一郎の災害支援活動

——7月5日に巻さんは支援活動を行うと素早く宣言なさいました。

熊本地震のときは、発生の3日後にNPO法人「ユアアクション」という支援団体を立ち上げ私が理事長になりました。そのときに感じたのは、支援活動を行うにしてもやはり素早く行動しないと困っている人たちは待てないということです。ですから今回は翌日からすぐ活動開始し、まず被災者の方へ物資の提供を行うことにしました。

——支援活動をスタートするにあたって、協力者が必要だったと思います。必要な人数はすぐに集まりましたか

新型コロナウイルスの影響で県外の方を受け入れるのが難しい状況なので、協力してくださる方がまるで足りず、現在もその状態がずっと続いています。活動が始まったばかりの段階では特にマンパワーが足りなかったので、僕も物資を運ぶトラックを運転しましたし、今でも助手席に乗ったりしています。

地震のときにも協力していただいた株式会社「えがお」さんが、今回も青汁などの商品や人材を提供してくださっています。「えがお」さんのボランティアの方は3カ月間ほど継続して復旧活動をやっていただけるそうです。そこで、まだ他の人が入れない最前線の、ご老人の方が1人で作業している場所にチームを組んで行っていただいています。

写真提供:巻誠一郎

新型コロナを恐れる被災者も 元日本代表香川はボールを寄付

——物資を配る際に問題となったことは何でしたか

行政も避難所などに物資を提供しています。ですが、被災した方の中には新型コロナウイルス感染を恐れて避難所に入らない方が多数いらっしゃいます。行政は物資を用意していても、どこに避難者がいるかなかなか把握できないようでした。どちらかというと私たちのほうに細かな情報が入りやすかったようです。

私たちは、誰がどこにいるか知るには地元の人とのコミュニケーションがカギになると思っていたので、ラフティング協会の人たちに協力してもらいました。ラフティングは地元に根差した産業なので、地域の方々とのコミュニケーションがしっかりしているのです。

今も彼らからいろいろな情報を教えてもらい、実際に現地に行って話を聞いて、何がどこに足りないのかを把握しています。それと同時に様々な状況も聞いて、そういう情報を発信してもいます。

また避難所に入っていない方は私たちのような民間の物資を提供する場所に受け取りに来ます。私たちは人吉市と熊本市に活動拠点を持って物資をストックし、そこで配るのと同時に困っている方々の所に行ってお配りしています。

——物資では必需品を配るのはもちろんのこと、他にどんなものが喜ばれましたか

被災者の方には健康不安があるので、青汁は配っていてとても喜んでいただいていますし、私も自分で熱中症予防の塩飴を作って配って回っています。また、除菌ジェルがほしいという声がありましたので、多くの企業に協力していただいて、数万個集めました。そのジェルは被災した小学校を定期的に巡回しながら全校生徒に1人1個ずつ渡しています。

それから、香川真司がボールを1000個プレゼントしてくれました。小学校を回ったときに、ある校長先生から「サッカーボールを流されてしまった子どもたちが多いので、ボールがほしい」と言われた話を香川にしたところ「送る」と言ってくれました。「10〜20個かな?」と思っていたら1000個も送ってくれたのにはビックリしましたね。そのボールも子どもたちに持っていっています。

香川真司氏 Getty Images

——2016年の地震のときとはどのような点が違いますか

地震と水害では状況が多少違うと感じています。地震のときは広範囲でライフラインなどが寸断され、物流がストップし、物資は一気になくなりました。今回の洪水では、水害の被害を受けた場所から数百メートル上流に上がると何の被害もなく、物資自体はたくさんあります。

ところが被災者の方は車を流されていて買いに行く手段がなかったり、家財が全部流されてお金を持っていなかったりしています。また、販売している場所の情報などをキャッチできるような人たちはまだいいのですが、そういう情報が流通しないご高齢の方は物資を手に入れることが出来ません。

それから、熊本地震の後は避難所に入っていって1人ひとりの話を聞いてニーズを確かめながら物資を配っていました。ですが、今回は感染予防のために避難所に入らないようにして、避難所の責任者の方にニーズをまとめていただき、提供しています。

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