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【読書感想】危機の正体 コロナ時代を生き抜く技法

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 人類の歴史上、大きな戦争や大規模な疫病の流行は、「人々の階級や格差をリセットする」という役割を果たしてきた面があるのです。
 ところが、今回の新型コロナウイルスの流行に際しては、現状、「持てるものは、安全な場所で他者との接触を少なくして生きていける」のに対して、「持たざる者は、リスクを承知で、人との接触が多い仕事を引き受けなければならない」という状況になっています。
 多くの飲食店が閉店に追い込まれ、仕事を失った人が多い一方で、株価は一時急落したものの、政策的な市場への資金投入もあり、2020年8月中旬の時点では、(業種にはよるものの)「コロナ以前」に近い水準まで回復しているのです。

 お金がある人たちの世界と、困っている人たちの世界があって、同じ国で生きていても、お互いに相手のことが見えなくなっている。

 佐藤さんは、「新型コロナ後」の「新たな日常」についても、太平洋戦争時の翼賛体制で政府から出された「週報」を紹介しながら、その「オススメの生活様式」を盲信することの危険性を指摘しています。

 法律や条例によって、新型コロナウイルス対策として、人の移動を規制することも理論的には可能なはずなのです。しかし、国も都道府県もそれをしませんでした。その理由は2つあると考えています。
 第1は、そのような法律や条例が憲法違反であるという訴訟を起こされた場合、裁判所によって違憲という判断がなされる可能性が排除されないからです。裁判所で合憲になる見通しが高いとしても訴訟が起こされれば、それに対応するエネルギーが厖大(ぼうだい)になります。行政官はこの種の仕事を嫌います。
 第2は法律や条例が存在しなくても、国や都道府県が自粛を呼びかければ、法律や条例に相当する効果がこの国では期待できるからです。行政府が国民の同調圧力を利用するというわけです。行政手続きも何も必要ありません。

 これこそが、翼賛の思想なのです。翼賛の本来の意味は、<力を添えて助けること。天子の政治を補佐すること>(『デジタル大辞泉』小学館)とあります。翼賛は強制ではないという建前です。翼賛という力は、人々が自発的に天子(肯定や天皇)を支持し、行動するように作用します。みんなと同じ行動をしない者は「非国民」として社会から排除されることになるのです。

 新型コロナウイルス対策の過程で、無意識のうちに翼賛という手法が強まっていると感じました。たとえば「自粛警察」がそれです。誰からも頼まれていないし、権限もないのに、自分の正義感から、新型コロナの感染を拡大させそうな人や店を攻撃する人々。公園で遊んでいる子どもたちを怒鳴る人々。咳をしただけで激昂する人々。県外ナンバー狩りをする人々。あるいは感染者是との岩手県の達増拓也知事がコロナに感染した「第1号になっても県はその人を責めません」(朝日新聞デジタル、2020年5月15日)と会見で言ったことの裏を返せば、岩手県で最初に感染した人は、プライバシーを晒され、激しく非難される危険性があり得ると考えたからでしょう。

 こうした自粛警察は、大政翼賛会の末端組織である隣組のようなものです。隣組は互助組織であると同時に、お互いを牽制・監視する機能も果たしていました。

 現実的には「自粛警察」の存在が、人々の行動を制限する効果があり、感染予防に役立ったとも思うのです。
 とはいえ、感染者に対する批判やバッシングは筋違いだし、県外ナンバー狩りなんていうのは、やりすぎでしょう。
 「感染を広げない」という「大義」があれば、議論の末に法律や条例が成立したわけではなくても、「自発的に」個人の自由を制限することを厭わない人たちが少なからずいて、行政はそれを利用することで、人々の生活をコントロールすることができました。
 戦争という「非常事態」でも、同じようなことが行われる可能性は否定できません。

 こういうのは取り越し苦労であってもらいたいし、他国のような法的な制限ではなくて「自粛」を選んだのは、日本が手続きを重んじる民主主義の国であるがゆえだと思いたいけれど、「きっかけ」になりうる事例として、この「自粛警察」には注意しておいたほうがよさそうです。

 僕は、世の中には「テレワークのほうが力を発揮できる人」もいるだろうし、このコロナ禍で「社会の効率が悪い慣習が改善されたり、生きやすくなった人が増えたりする」可能性もあると考えています。
 日本人がこのままずっとマスクをしたまま生活するとは思えないけれど、これをいつ外すのか、というのも、難しい問題ですよね。

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