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リツイート最高裁判決への違和感が端的に言語化された評釈に接して~法律時報2020年10月号「判例時評」コーナーより。

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月末ということで届いた法律雑誌のうち、法律時報の最新号(2020年10月号、Vol.92. No.11)に目を通していたら、思わぬところに切れ味鋭い評釈が掲載されていることに気づいた。

元々この号は、今、まさに研究会での議論が進められている動産・債権譲渡担保法制の見直しにかかる特集がかなり充実していて*1、本来ならこちらも取り上げておかねばならないところではあるのだが、まずは真っ先に冒頭で紹介した評釈のインパクトを伝えなくては・・・ということで、今回はこれに絞ってエントリーを上げることとしたい。

田村善之「寛容的利用が違法とされた不幸な経緯に関する一考察-最三小判令和2年7月21日(リツイート事件)」*2

リツイート事件といえば、今年の夏、関係者を騒然とさせたアレ、である。

当ブログでも多少の懐疑とともに、驚きを伝えたところだった。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

たかが発信者情報開示請求、されど出たのはれっきとした「最高裁判決」ということで、未だ判決の位置づけや射程をめぐってざわついているようなところはあるのだが、この田村教授の評釈は、タイトルが如実に示す通り、全体を通じてこの最高裁判決への懐疑的な姿勢に満ちている。

僅か3ページという短いスペースに押し込められた評釈、ということもあって、「紙幅の都合上、最高裁の判旨の網羅的な検討は別の機会に譲り」という前置きの下で書かれているものだが、逆に言えばその割り切り、すなわち、

「そもそも本件訴訟が、この問題を違法と判断するのに相応しい舞台であったのかということに筆者は疑問を覚えている。」(4頁)

という”感想”にフォーカスして筆が運ばれていることで、本評釈にはより強いメッセージ性が込められ、大きなインパクトを読者に与えることとなった。

■最高裁判決へのシンプルな評価

順にみていくと、まず冒頭の3分の1では、そうはいっても、ということで、最高裁の判断内容へのコメントが記されている。

ざっとかいつまんでご紹介すると、

「本判決の法律の下、その種の確認(筆者注:元ツイートに著作者名があり、それがトリミングされるか否かの確認)をなすことを迫られる場合は、リツイートの迅速性、簡便性を減殺することになりかねない。氏名表示権侵害者となるリスクを嫌って、リツイートが過度に控えられるおそれすら全くないともいえないだろう。」
「かりに本件のようなトリミングによる氏名表示が真実忌避すべきものであるならば、リツイートをするかしないかの二択しか有していないリツイート者に責任を課すよりも、システムの設計者であるツイッター社を侵害行為主体として捕捉したほうが、適切な回避措置の導入を促すことになろう。」
(以上4頁)

といったように、最高裁の法廷意見のロジックのおかしなところを的確に指摘し、その上で、「クリックすれば元画像の氏名表示に(容易に)接しうる」という事情に照らし、

「そもそも本件のシステムによる著作者の不利益が氏名表示権侵害を肯定するに足りるほどのものだったのかということ自体、疑問が残る。」
「こうしたユーザーの受け止め方などを斟酌して著作者が受ける不利益がそれほど大きくないと思料される以上、前述したリツイートの利便性に鑑み、19条3項による制限が正当化されるというべきであろう。」(以上4頁、強調筆者、以下同じ。)

とばっさり。

世の中を見回すと、曲がりなりにも知財高裁と最高裁が結論において一致している、という現実に、TwitterというSNSツールに対する微妙な評価(特にリツイート機能への愛憎半ばする思い・・・?)も相まって、今回の結論をストレートに批判することには躊躇するような空気もあったような気がするのだが*3、「リツイートが・・・重要な機能を果たしている」という前提に立つのであれば、最高裁判決に対しては、こういう評価しかなしえないような気がする。

田村教授はさらに続けて、「最高裁が扱わなかった論点について」という項で、今回の判決で判断対象とならなかった「同一性保持権侵害」(知財高裁はこれも肯定)についても、

控訴審の結論は、氏名表示権侵害を肯定した本最高裁判決以上にその弊害が大きい。」(5頁)

と、理由も添えて激しく批判し、

「最高裁が上告を受理しなかった意図は定かではないが、あるいは、氏名表示権侵害を肯定することは質的に異なる影響度を慮ったのかもしれないより深刻な事態が回避されたという意味では喜ばしいことであったのかもしれない。」(5頁)

と、シニカルにまとめておられる。

おそらく、今後、他の媒体等でより詳細な分析に基づく論稿が出される可能性も高いと思われるが、本評釈も、短い記述ながら、今後、本判決を容赦なく批判できるようにするための口火を切られた、という意味で、非常に高い価値を持つものとなるように思われる。

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