記事

気候変動、開発、核軍縮、保健、テロ、紛争、国際経済の専門家12氏が議論したコロナ禍で内向きになる世界にあえて問う国際協調は幻想なのか?

1/2

 新型コロナのパンデミックの経験では、国境を越える感染症という危機に対して国際協調の欠如が見られた。一部の学者の中では「国際協調は幻想」との意見も出ている。感染症のみならず、気候変動、国内外紛争、核不拡散、貿易・経済システム、テロ、貧困など多様なグローバル課題に国際社会は直面する中、若手を含む国内の専門家12氏は、今、世界で問われる国際協調の意味を今、どう考えているのか。

 議論では、研究者全員が自身の専門分野のグローバル課題が、コロナ・パンデミックの裏で国際的関心の低下や資金不足、また大国間の利害対立で取り組みが困難になっていることに強い懸念が示され、また分野によっては人道危機の可能性が高まっていることも報告された。

 一方で、専門家12名は、多国間協力の難しさを認識しながらも、国際協調は幻想との見方は明確に否定。未曽有の危機の今こそ、世界が力を合わせることの重要性で一致し、大国間の地政学的対立に関わらず、同じ目的意識を共有した国・アクターがまず取り組める課題で具体的に協力を進めていく意義を強調した。

 今回の議論は、言論NPOが主宰する地球規模課題を考える日本の34名の専門家チームによるオピニオン発信の一環として実施された。国際秩序の不安定化が進む中、日本としてグローバル課題を分野横断型で考えるために、各分野を研究する専門家が集まり、内外に発信することを目的にしている。この日のバーチャル会議にはその中から、気候変動、開発、核軍縮、保健、テロ、紛争、国際経済の専門家12氏が参加した。

【参加者】河合正弘(東京大学公共政策大学院名誉教授)
     小塚郁也(防衛省防衛研究所政策研究部防衛政策研究室主任研究官)
     小林周 (一般財団法人日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究員)
     小林良樹(明治大学特任教授)
     坂元晴香(慶應義塾大学医学部医療政策・管理学講座特任助教)
     佐藤寛 (ジェトロ・アジア経済研究所研究推進部上席主任調査研究員)
     志賀裕朗(JICA緒方研究所上席研究員)
     戸崎洋史(日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター主任研究員)
     東大作 (上智大学グローバル教育センター教授)
     藤野純一(公益財団法人地球環境戦略研究機関都市タスクフォース プログラムディレクター)
     和田大樹(清和大学法学部講師)
【司会】 工藤泰志(言論NPO代表)

様々なグローバル課題に負の影響を与えている新型コロナ・パンデミック

 新型コロナのパンデミック一色になった2020年の世界。新型コロナは、多様なグローバル課題にどのような影響を与えたのか。

 言論NPOが事前に、このプロジェクトに参加する各分野の専門家20氏に対し実施したアンケート調査では、半数以上が「国際協調体制は崩壊しつつある」と回答。世界の国際協調の現状について強い懸念が示された。


 この日の議論でも、各専門家から相次いだのは、各分野の国際協力がコロナ禍でより厳しくなっている状況である。


 紛争防止・核軍縮問題では、元々厳しい状況にあったがコロナ禍でさらに国際協調は困難な状況になっているとの意見が出た。中東問題や紛争を専門とする防衛研究所主任研究官の小塚郁也氏は、シリアやイエメンの現状を下に、元々国民に医療サービスを提供できる政府の機能が停止しているのに加え、コロナ禍で国連やNGOの人道支援も困難となっていること、さらに先進国も経済が苦境に陥り、援助を継続できる財政的余裕を失っている点を挙げながら、「紛争解決が難しくなっているだけではなく、人道危機も起こりかねない状況だ」と指摘した。


 核軍縮分野では、新型コロナの影響で多国間対話の機会が減少している問題点も挙げられた。核不拡散・軍縮問題を専門とする日本国際問題研究所主任研究員の戸崎洋史氏は、INF失効やアメリカのイラン核合意離脱を受け、この分野はコロナ以前から厳しい状況にあったと説明。その上で、新型コロナの影響からNPT会議が延期になり、協調に必要な議論を行うこと自体、難しくなっている点を伝えた。

 コロナ禍で新しい問題に直面している分野も多い。


 気候変動分野について、地球環境戦略研究機関プログラムディレクターの藤野純一氏は、コロナの対応に消極的な国は、気候変動への対応も消極的で似通っている、という点を指摘しながら、気候変動での資金が回りにくくなっているが、その中でも異常気象など気候変動の影響がより大きくなっていることを挙げ、「ビジネス界も巻き込み実質的に対応を進めないと間に合わなくなる」と警鐘を鳴らした。


 国際開発の分野も同様である。JICA緒方研究所上席研究員の志賀裕朗氏は、パンデミック下でも先進国‐途上国間の二国間の援助はさほど影響を受けず進んでいるとしながらも、援助を行うドナー間の多国間の連携が弱くなっている点を危惧。ドナー国間での協調が弱くなり、各国がバラバラに援助を行うことで、途上国側にマイナスな影響を与えている点を指摘した。

 さらに、新型コロナ禍が与える中長期的な影響を心配する多く聞かれた。


 テロ分野を専門とする明治大学特任教授の小林良樹氏は、先進国の南アジアや中東へのコミットメントや関心も低下し、紛争地でテログループの活動が進み易くなる問題点を指摘した。これに加え、清和大学講師の和田大樹氏も各国で経済低下や失業率の上昇で社会不安が広がり、若者がテロの世界に入ってしまう懸念を伝えた。

あわせて読みたい

「新型コロナウイルス」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    社長辞任 勝者なき大塚家具騒動

    企業法務戦士(id:FJneo1994)

  2. 2

    仏再封鎖 医師「PCR数凄いのに」

    中村ゆきつぐ

  3. 3

    橋下氏「否決なら住民投票無効」

    橋下徹

  4. 4

    安倍待望論も? 菅首相は裏方向き

    早川忠孝

  5. 5

    堀江氏 餃子店1千万円支援に苦言

    女性自身

  6. 6

    年末年始「17連休案」空振りの訳

    BLOGOS しらべる部

  7. 7

    誤報訂正せず 毎日新聞社に疑問

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  8. 8

    伊藤健太郎の不心得を諭した女性

    文春オンライン

  9. 9

    鈴木大地氏止めた森元首相は正解

    早川忠孝

  10. 10

    ソニー好決算 PS4や「鬼滅」も

    片山 修

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。