記事

新生パルコのゲイバーは今…#MeToo時代にドラァグクイーンが求められる理由 「Campy! bar」ブルボンヌさん・家弓社長インタビュー - 太田 尚樹

1/2

 昨年11月に誕生した新生・「渋谷パルコ」の飲食店フロア“カオスキッチン”に、異彩を放つ店がオープンし、話題になったのを覚えているだろうか。

【画像】女装キャストの皆さんの写真を見る

 その店とは、新宿2丁目の有名ミックスバー「Campy! bar」の渋谷店。ミックスバーとは、さまざまなセクシャリティの店員が在籍する老若男女歓迎のバーのことだ。その中でも「Campy! bar」は、多くのドラァグクイーン(派手な女性装をしてパフォーマンスをする人。主には男性)が在籍していることに特徴がある。

 新宿2丁目では一つの顔となっている「Campy! bar」も、渋谷パルコでは“カオス”の一つでしかなくなる。客層も変わり、果たす役割もきっと変わってくるのではないだろうか。

「新店オープン」以上の意味をもつチャレンジになぜ「Campy! bar」は踏み切ったのか。その思いから、近年のドラァグクイーンブームを、ドラァグクイーン自身はどう見ているのか。ドラァグクイーンとしてテレビや雑誌で活躍する、「Campy! bar」グループプロデューサーのブルボンヌさんと、「Campy! bar」を運営する、株式会社Campy代表取締役・家弓さんに聞いた。

※取材は2019年12月に行われましたが、新型コロナ流行で「Campy! bar」が一時休業していたため、このタイミングでの掲載になりました。


ブルボンヌさん(左)と家弓さん(右)

――「渋谷パルコ」に「Campy! bar」さんが出店すると聞いたときは、びっくりしました。決まったときは、どのような気持ちでしたか。

ブルボンヌ 日本で初めて同性パートナーシップが導入された渋谷区のプロジェクトでLGBTQのお店が入ってくるのは、ある意味、納得感がありますよね。そこに、うちのお店を選んでいただいたことはとっても嬉しい。

 しかも、フロアの名前が「カオスキッチン」。

――名前もぴったりですよね。

ブルボンヌ でしょう?「ちょっとインパクトあるキャラクターですけど、よろしくおねがいします」って店長のチカコ・リラックスたちと一緒にフロアを回ったんだけど、昆虫食を提供している「米とサーカス」さんでは、店長の方が虫の姿煮を出してくださって。

 それまでは「私たちは人間の根源欲求、性と食を広げる姉妹店だよお~」なんて言ってたんだけど、「いや、虫は……」って断っちゃいました。全然広げる気ないじゃねえか、っていうね。

――さっそくカオスな状況で最高です(笑)。「Campy! bar」さんは新宿2丁目の「入り口」、まさに「門」みたいなお店だと思っているんです。そんな「Campy! bar」さんの出発点を教えてください。

ブルボンヌ 1990年代後半に定期的に開催していた、「アッパーキャンプカフェ」っていうカフェイベントが前身なんです。

 今の「Campy! bar」の場所で、もともとはストレートの方が喫茶店を営んでいらっしゃったらしいの。でも、新宿2丁目がどんどんゲイの街になっていく中で営業が厳しくなったのか、閉店してしまったんですね。

 その後、『Badi』(注1)の版元である、テラ出版の平井孝社長がその場所を借りたんだけど、特にこれといって何かに使っているわけでもなく、中通りにあるのにいつも閉まっていた。当時『Badi』の編集部員だったので、せっかくだから月に1回だけ貸してくれないかって社長にお願いしたんです。それが始まり。

注1 『Badi』とは……1993年12月に創刊した男性同性愛者のための総合誌。2019年3月号で休刊。

街そのものがクローゼットを体現していた

――歴史を感じます。当時は、2丁目の様子も今とは大きく違ったでしょうね。

ブルボンヌ もう、まったく違いました。外の通りは閑散としているんだけど、雑居ビルの中のお店の扉を開けるとゲイたちがギュウギュウって感じ。まるで街そのものが、クローゼットを体現しているかのようだった。

――その一方で、「Campy! bar」は「アッパーキャンプカフェ」時代から、ガラス張りの店構えだったんですか?

ブルボンヌ そうなんです。余興も外にも漏れ聞こえるし、割とオープンな雰囲気で月1回ワイワイ営業してたんだけど、当時はそういったお店がまったくなかったのね。『クィア・スタディーズ』(七つ森書館)という本で、「2丁目初のオープンカフェ」として取り上げていただいたくらい。

「もっとオープンな店を」きっかけとなった出会い

――へえ〜。当時は、ノンケのお客さんが大半の「観光バー」のようなものもなかったんでしょうか。

ブルボンヌ あの時代にも存在したんだけど、もっとショーパブ的なものだったんですよ。「ゲイがノンケにショーを見せます」という感じで、客層もまったく別でした。

 今の「Campy! bar」は「ゲイコミュニティーがベースだけど、ノンケもおいで」っていうミックスバーだけど、そういう雰囲気になったのは、その後、同じ場所で毎週金曜日にイベントをやるようになってからかな。この人によるところも大きいんですよ(家弓さんを指差す)。

家弓 ははは。

――お2人はいつから一緒にお仕事をされてるんですか?

ブルボンヌ もともとはプライベートの付き合いだったんだけれども、彼が仕事をサポートしてくれることも増えていって。7年前、「Campy! bar」として営業を始めたときに、一緒に会社を作りました。彼は、ほんといい意味で天然なの。

家弓 僕はゲイであることに割と悩んだことがなくて、周囲もそういう人が多かったから、てっきりみんなハッピーなもんだと思いこんでたんですよ。でも、まだこの人とラブラブだったときに……

ブルボンヌ いまもラブラブです!

――見解の相違が……。

家弓 とにかく、ラブラブだったときに(笑)、町中で手を繋ごうとした瞬間、払いのけられたんです。びっくりして理由を聞いてみたら、「やっぱり人目が気になる」と。『Badi』の編集者で、テレビで顔を出してLGBTQの発信をしているような人でも人目が気になるんだ、日本ってまだまだそんな場所なんだって、大人になってから初めて知ったんです。

 それに、この人と仕事するようになって「ゲイの人に会ったことありません」ってノンケの人もいっぱいいることに気づいたんですよ。「ゲイって結構いるから、そんなはずはないんだけど」と思いながらも、じゃあお店で生で触れ合うのが一番なんじゃないかって。

――こうした家弓さんのオープンな考え方も、「Campy! bar」の雰囲気に反映されていった。

ブルボンヌ そうだと思います。今思えば、上京してから『Badi』編集部時代までのフェーズが、ゲイの世界で、自分に自信を持てるようになるための期間だったとしたら、その後、ゲイの世界で教えてもらったことをストレートの世界に発信するフェーズが始まったのかなって。

 彼との出会いや、そのあたりの気持ちの変化が、「Campy! bar」をゲイがゲイだけで集まる過去のゲイバーではないものにしていこう、というところに繋がっていったのかも。

あわせて読みたい

「LGBT」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    ベガルタ選手 交際相手DVで逮捕

    SmartFLASH

  2. 2

    岸防衛相の長男 フジ退社で衝撃

    文春オンライン

  3. 3

    米山元知事が橋下氏の煽動に苦言

    SmartFLASH

  4. 4

    淡々とデマ正した毎日新聞は貴重

    文春オンライン

  5. 5

    任命拒否 背景に大学への不信感

    PRESIDENT Online

  6. 6

    マスク拒否で降機「申し訳ない」

    ABEMA TIMES

  7. 7

    ウイグル弾圧をルポ 朝日に評価

    BLOGOS しらべる部

  8. 8

    TV設置届出? 感覚がズレてるNHK

    NEWSポストセブン

  9. 9

    コロナで潰れる「強みのない店」

    中川寛子

  10. 10

    初鹿明博氏が議員辞職する意向

    ABEMA TIMES

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。