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なぜ野党議員のドキュメンタリー映画で「泣ける」という感想が多いのか 「政治ドキュメンタリー」から語る、日本の現在地 #2 - 石井 妙子/大島 新

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日本のメディアは政治権力に対して「どうして?」を問わなくなった から続く

 いま政治ドキュメンタリーがひそかなブームになっている。

 無名の野党議員・小川淳也衆院議員の初出馬から現在までの政治活動を追った映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』(大島新監督)が異例のロングラン。上映館は全国に広がり、観客動員数は3万を超えたという。富山市議会の政務活動費不正をめぐるドキュメンタリー『はりぼて』も話題だ。

 ノンフィクションの書籍では、小池百合子都知事の半生を描いた『女帝』(石井妙子)がベストセラーとなった。

 一方、国政では菅義偉総理が誕生。そのかげで野党の合流新党「立憲民主党」が発足した。

 政治とメディアの関係、そして与野党のあり方について、ともに永田町の外から政治を描いた石井妙子、大島新両氏に聞いた。(全2回の2回目。前編を読む)


石井妙子さん

◆ ◆ ◆

小池百合子という人はメディアを恐ろしいほどに使いこなしている

石井 素朴な疑問ですが、大島さんは「情熱大陸」といったテレビドキュメンタリーも手がければ、今作品のようなドキュメンタリー映画も手がけていますよね。テレビと映画、作り方はどう違ってきますか?

大島 取材はあんまり変わらないんですが、編集の仕方が大きく変わりますね。テレビの場合は、常にザッピングの恐怖というのがあって、テレビマンはいかにチャンネルを変えられないようにするかに腐心します。そうすると、とにかく絶え間なく情報を入れていかなければならない。音楽からナレーションから、あらゆる情報で飾り付けなければならない。ドラマやバラエティーほど視聴率を求められていないドキュメンタリーですら、そういった恐怖に支配されているところがあるんです。

石井 映画だとその恐怖から少しは解放されるんですか?

大島 解放感はありますね。映画だと観に来てくれた方はお金を払ってくれているし、よっぽどのことがない限り、最後まで観てもらえるだろうとは思っているので。ただし、最後まで観てもらって何らかのカタルシスを持ち帰ってもらいたいので、じっくり見せる編集ができる半面、違った緊張感はあります。

石井 ネット時代と言われていますけれど、テレビが政界に与える影響はまだまだ大きいですよね。テレビの政治番組を見ていると、二つのことが気になります。一つはメディアが視聴率を求めて政治家や政局を過剰に物語化すること。もう一つは政治家がテレビ映えを過剰に意識しているということ。

大島 どちらも『なぜ君は総理大臣になれないのか』の小川さんに足りない資質ですね。彼は地道に政策を訴え続けているので物語化されにくいだろうし、丁寧に説明しようとするあまり話が長くなる傾向があるので、チャンネルを変えられるかもしれない。

石井 『女帝』を書きながらつくづく思ったのですが、小池百合子という人はメディアを恐ろしいほどに使いこなしている。もともとテレビキャスターとして表に出てきた方ですから、とにかくどれだけ露出するか、どれだけ注目されるフレーズを発言するかに政治家として賭けている。コロナ下の東京都のCMもそうですし、記者会見で発した「密です!」も相当戦略的な発言だと思います。

キャラが立つ魅力的な物語が世論に効果を持ってしまう

大島 選挙の際にそれは顕著になるわけですよね。

石井 同僚の議員が、「政策を説明しても、なかなか有権者に理解してもらえない」とこぼしたら、小池さんに「政策なんて語ったって意味がない。そんなの受けないし、票にもつながらない。選挙はテレビよ。テレビにどれだけ出るかよ」と言われたそうです。でも、それはたぶん、日本の政治においては正解なんですよね。

大島 小池さんは意識的に自分からテレビ露出する人ですが、最近は視聴者を飽きさせないためにか、テレビ局の方から率先して政治家を物語化してしまう。この自民党総裁選をめぐるワイドショーなんか本当にひどかったですよね。特に菅さんの「苦労物語」。ホームページに掲載されている「すが義偉物語」に沿って「菅官房長官は実はこんな苦労人」みたいなことを各局が丁寧にやっているわけです。

石井 どこの局も、まったく一緒でしたね。

大島 朝日新聞の「次期総裁にふさわしい人」世論調査では、6月の段階では石破さんがトップで31%、菅さんが3%だったんですって。それが9月の調査では菅さんがトップで38%、石破さんが25%。これも物語効果なのかもしれません。

石井 これまでの安倍さんは世襲議員で、しかも父方の安倍家、母方の岸家という家系を背負った「貴種伝説」的な物語が背景にあった。そこに真逆の、叩き上げ総裁候補が出現した。 何にしてもキャラが立つ魅力的な物語が世論に効果を持ってしまうのは避けられないことで、それをわかっているからこそ、小池さんの場合は「カイロ大学首席卒業」といった虚飾の物語を自ら作りあげていったのだと思います。

女性議員がメディアに取り上げられやすい理由

大島 メディアが物語を欲しているんですよね。でも思うんですが、これって菅さんの「苦労人」だけじゃなくて、女性議員全般にも言えることじゃないですか。つまり先進7カ国中、女性議員の比率は最低水準という日本の政治においては「女性」であることが物語化されやすいというか、別枠として存在価値を持たされている。

石井 女性議員のほうがメディアに取り上げられやすい、これも日本の後進性ゆえではないでしょうか。政界において女性は、まだまだ男性社会の添え物、飾り物のような立場に置かれていると思います。世界の眼もありますし、閣僚に女性を一人も入れないというのは許されない時代になって、男性のトップは数少ない女性議員の中から女性閣僚を選ぶ。女の人たちも変なところで競ってしまうというか、中には女性性を前面に押し出すような人も出てくる。永田町の女性に会うと、何というか、過剰な感じがあって。周りの空気がそうさせてしまっているんだと思います。

大島 そして、ボスの考えていることを、さらに過激化するところも見られませんか。安倍時代で言うと杉田水脈さん、稲田朋美さん……。

石井 安倍政権下では、みんな安倍さん以上に安倍さん化していましたよね。気に入られたりという一心で、そうなってしまうのか。発言がひどく過激になったり。

大島 そこには、いかにテレビ映えするかという力学も働いているんでしょう。

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