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【Amazon Fresh】、本当は怖いアマゾン新スーパー価格戦略!価格変動をスーパーに導入?

■米国の大手スーパーマーケットチェーンは「ハイ&ロー価格戦略(High–low pricing strategy)」を採用している。

ハイ&ロー価格戦略はロスリーダー(原価割れ商品)などで客を店内に呼び込みながら、定番商品や粗利の高い商品を買ってもらう戦略だ。

一方、ウォルマートが行っているエブリデ―・ロ―・プライス(EDLP:Everyday Low Price)は徹底した低コスト運営に生産段階まで関与することによる製造原価の低減に加え流通コストまで引き下げることで、ほぼすべての商品を毎日低価格で販売する戦略だ。

ネット通販最大手アマゾンが17日、ロサンゼルス郊外ウッドランドヒルズに一般にもオープンしたスーパーマーケット「アマゾン・フレッシュ(Amazon Fresh)」はどちらの価格戦略をとっているのだろうか?

アマゾン・フレッシュでは広告チラシを出しており、グランドオープニングとなった17日〜22日までロテサリーチキンが4.97ドル、ピザスライスを1.79ドル、ホールピザを8.99ドル、サーモンフィレ(皮付き)を1ポンド当たり5.99ドルをセールにしていた。

アマゾン・フレッシュから近距離(車で1分程度)にあるコストコでロテサリーチキンは4.99ドル、コストコ・フードコートではピザスライスは1.99ドル、ホールピザは9.95ドルだ。

アマゾン・フレッシュはコストコを意識した値付けを行っていたのだ。

アマゾン・フレッシュでは粗利ミックスという考えはなく、他の商品の値段を高くしているとは言えない。アマゾン・フレッシュは准エブリデー・ロー・プライスとも言えない。

そもそもアマゾンは、他の小売事業者のように仕入れ価格に利益を上乗せする販売価格とは異なるのだ。

アマゾンの価格決定ではオンラインの場合、他のEC事業者で同じ商品の価格を調べた上で、最低価格のレベルを維持するようになっている。原価に関係なく販売価格が決定されるシステムになっているのだ。

それは創業者でありCEOのジェフ・ベゾス氏が描いた「成長のフライホイール効果(Flywheel:弾み車)」を基本にしている価格設定となっている。

成長のフライホイール効果とは、オンライン販売による「低コスト構造」で生み出した「低価格」とサービスを含めた「品揃え」を実現することで、より良い「顧客体験」を生み、顧客体験が客数を含めた「取引量」を増加させ、取引量に惹かれて「売り手」が増え、さらに「品揃え」が拡大する、そしてさらに「顧客体験」が上昇する、という循環し続ける弾み車だ。

アマゾンの真の狙いは成長のフライホイール効果を大きくすることであり、一般的な食品スーパーのようにお店で儲けることではないのだ。

つまりアマゾン・フレッシュは成長のフライホイール効果で顧客体験を向上するために存在しているといえる。

リアル販売やネットスーパーを通じてアマゾン・プライム会員の増加・維持がアマゾン・フレッシュの目的なのだ。極端なことを言えばアマゾン・フレッシュでは全商品をロスリーダーにもでできるだろう。

少なくともECのようなダイナミック・プライシング(消費者の需要と供給に応じて価格を変動させること)で顧客満足度を上げることになる。その証拠にアマゾン・フレッシュではエンド陳列の特価商品を除いて、ほぼすべてのプライスタグがデジタルタグになっている。

 アマゾン・フレッシュは必ずしも売り場で儲ける必要がないため、ハイ&ローでもエブリデ―・ロ―・プライスでもない第三の価格戦略を持つことになる。価格戦略も業界の常識に囚われない破壊的イノベーションを生むことになる。

トップ画像:アマゾン・フレッシュではエンド陳列の特価商品を除いて、ほぼすべてのプライスタグがデジタルタグになっている。ジェフ・ベゾス氏が描いた「成長のフライホイール効果(Flywheel:弾み車)」により、必ずしも売り場で利益をだす必要はない。極端なことを言えばアマゾン・フレッシュでは全商品をロスリーダーにもでできるのだ。なおアマゾン・フレッシュではいまのところ、ホールフーズ・マーケットが行っているようなプライム会員限定のセールは行っていない。

アマゾンCEOジェフ・ベゾス氏が描いた「成長のフライホイール(Flywheel:弾み車)効果」。成長のフライホイール効果とは、オンライン販売による「低コスト構造」で生み出した「低価格」とサービスを含めた「品揃え」を実現することで、より良い「顧客体験」を生み、顧客体験が「客数」を増加させ、サイト訪問者数に惹かれて「売り手」が増え、さらに「品揃え」が拡大する、そしてさらに「顧客体験」が上昇する、という循環し続ける弾み車だ。アマゾン・フレッシュはフライホイールの一つのパーツに過ぎないとも言える。

アマゾン・フレッシュのチラシ1ページ目と4ページ目。アマゾン・フレッシュでは4ページのチラシも配布している。1ページ(左側)にはトップでバナナが「ロー・エブリデー・プライス(Low Everyday Price)」とあり1本15セントと安い。サーモン・フィレも1ポンド当たり5.99ドル、下にあるロテサリーチキンが4.97ドル、スライスピザが1.79ドル、ホールピザも8.99ドルとコストコより安い価格設定で明らかにロスリーダーだ。

アマゾン・フレッシュのチラシ2ページ目と3ページ目。業界の慣例や常識に縛られないアマゾンは今後もこういったチラシをいつまでも続けるかどうかはわからない。破壊的イノベーターはスーパーマーケットにダイナミック・プライシングを導入することもやりかねないのだ。

アマゾン・フレッシュのチラシはアマゾン・アプリでも閲覧可能だ。アマゾン・アプリを起動し画面下にあるメニュー「カート」を選択する。タグに並んでいる「ホールフーズ・コード(Whole Foods Code)」「ブック&4スター(Books & 4-star)」「アマゾンゴー(Amazon Go)」から「フレッシュ・インストア(Fresh In-Store)」をタップしQRコード表示の上にある「セール品(Deals)」ボタンをタップする。

エンド陳列をみると奥に見えるコカ・コーラは各2.69ドル(12缶)と訴求しているが、フリトレーのポテトチップスは「一つ買えば2つ目が無料」となる「ボゴフ(BOGOF:Buy One Get One FREE)」、手前のパンパースは「セール(Sale)」と表示しているだけだ。チラシにはパンパースが19.39ドルとなっているがフリトレーは価格表示されていない。さらに競合店の状況により価格をさらに引き下げることを意味している。

アマゾン・フレッシュには確実にダイナミック・プライシングを取り入れているコーナーがある。カスタマーサービスの左にある「ベスト・オブ・アマゾン(Best of Amazon)」だ。キンドル・ペーパーホワイトやファイアーTVに周辺器具から、ノンフライヤーや電動圧力鍋インスタントポットやミキサー・ニンジャなどの人気の調理家電に便利な調理器具、それにレシピ本まで食にまつわる4スター商品を集めたコーナーだ。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。小売店の多くはお客を売り場に縛り付けます。買い物したいなら売り場に来いと。これを喩えれば、その昔、日本の家電メーカーが音楽をデバイスに縛り付けたのと同じです。音楽をステレオやウォークマンなどのポータブル・オーディオなどの一つの装置に縛りました。が、結局、アップルが音楽をパソコンからノートブック、スマホなどで音楽を一つのデバイスから開放しました。

音楽の聞き方を利用者の都合に合わせたように、アマゾンも買い物の仕方をエコシステムによりお店や売り場、業態に縛られないようにするのです。その理由が「成長のフライホイール」。アマゾンがなかなか黒字化しなかった原因でもあります。アマゾンはお店や売り場で利益を出す必要がないのです。儲けるためにアマゾン・フレッシュを作ったのではありません。成長のフライホイールのパーツに組み込むためにアマゾン・フレッシュはあるのです。価格戦略はハイ&ローでもEDLPでもないということです。

 ウォルマートはいぜん、セービング・キャッチャーでウォルマート価格より下回った競合店のセール価格に合わせ、差額分を次回の買い物時に差し引くことをやっていました。アマゾン・フレッシュはデジタルタグにダイナミック・プライシングで競合店の激安価格にいきなり価格をあわせることが可能なのです。

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