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【読書感想】恥ずかしい人たち



恥ずかしい人たち(新潮新書)

  • 作者:中川淳一郎
  • 発売日: 2020/08/19
  • メディア: Kindle版

Kindle版もあります。



恥ずかしい人たち(新潮新書)

  • 作者:中川淳一郎
  • 発売日: 2020/08/19
  • メディア: Kindle版

今日もまた「恥ずかしい人」が増殖中。態度がエラそう過ぎるオッサン、成功者なのに不満ばかりのコメンテーター、言い訳する能力も欠けた政治家、勝手な"義憤"に駆られた「リベラル」と「保守」。その醜態はネットで拡散され、一般市民は日々呆れ、タメ息をつく。それでも反省しない、恥ずかしさに気づけない者どもをどう考えればいいか。時に実名を挙げ、時に自らを省みながら綴った「壮絶にダメな大人」図鑑。

 僕は『ウェブはバカと暇人のもの』以来、中川淳一郎さんが書いたものをずっと読み続けているのです。

fujipon.hatenadiary.com

 この本が上梓されたのが2009年(今これを書きながら、まだ10年ちょっとくらいしか経っていないんだ、と思いました)ですから、当時はセンセーショナルだったこのタイトルも、この10年ですっかり「世の中の共通認識」になったことを痛感します。

 思えば、「ネットにはマスメディアが伝えない『本当のこと』が書いてある」と信じていた人たちが大勢いた時代は、そんなに昔ではないんですよね。

 中川さんは、2020年8月31日での「セミリタイア」を宣言されています。

 ネットニュースを含めたウェブメディアの世界は、「修羅の国」である。毎日のようにPV(ページビュー=アクセス数)を強力なライバルと競い合う。しかも、ウェブサイトを開設するのは誰でもできるため、日々ライバルが増え続ける。免許も巨大な設備投資も必要なく、いくらでも参入できるのである。

 次々とスターと呼ばれるようなライターや編集者が登場する。さらには、アクセス数の生殺与奪を握る世界最大の検査エンジン・グーグルによるアルゴリズム変更により、昨日まではアクセスの多かったサイトが突然没落することもある。このアルゴリズム変更にすいては「ちょっとちょっと! グーグルさん、突然変えないでよぉぉ~! オレら、あなたの基準に合わせて色々頑張ってきたのに~」と言いたくなる。

 だが、グーグルはあくまでも検索エンジンなわけで、我々のような個々のメディアの都合など知ったことではない。彼らは「我々のアルゴリズム変更は世界をより良くする」といった理念を持っていると理解している。

 結局新しくなったアルゴリズムに従う形でコンテンツの内容や、デザインなども買える必要がある。最適解は一切存在せず、「成功するかも」を試し続ける日々を私はこの15年間続けてきた。これがキツくてたまらないのだ。

 つまり、あまりにも「ライバルが強すぎる」「環境が変わり過ぎる」に加え、「『これをやり続ければ成功する』という成功法則」がまったく通用しない世界なのである。正直、自分としても49歳か50歳まではなんとかなるとは思う。だが、その頃となると「中川さん、ちょっと衰えたね……」なんて言われることもあるだろうと思う。そのため、そうした時が来る2~3年前に自らセミリタイア宣言をした方が「恥」ではないのだ。

 中川さんのこれまでの仕事ぶりや、ウェブメディアの世界の厳しさを考えると、むしろ、今までよく第一線で続けてこられたなあ、と思うくらいなんですよ。

 ネットで発信するには、資格はいらず、初期投資もきわめて安価です。それはとても素晴らしいことなのだけれど、だからこそ、次から次へと新しい人が出てくるし、観客は常に移り気です。あなたは、10年前と同じサイトを見ていますか?と問われたら、ヤフーのトップページとか、大手新聞社のサイトを除けば、いつのまにか見なくなってしまったサイトばかりではないでしょうか。

 そもそも、直接自分の会社や創作物を売るサイトならともかく、広告収入がメインの場合、Googleのアルゴリズムや仕組みが変われば、一気にアクセス数と収入が減る、ということも珍しくありません。

 ネットでは「いつでも更新できる」のが強みであり、そこで働く人にとっては「問題にすぐに対応しなければならない」というキツさもあるのです。

 中川さんは、ウェブメディアという「時代の先端っぽい仕事」にも、人間関係が及ぼす影響は大きいことも語っておられます。

 加計学園をめぐる問題で、安倍晋三首相と「腹心の友」加計孝太郎理事長の関係がしきりと問題視されました。私がモヤモヤしたのは、今回の問題はさておき「友人」や「普段からの仲の良さ」をビジネスに持ち込むことがここまで叩かれる点についてです。加計学園のことは一旦切り分けてください。

 というのも、私が広告代理店の会社員だった時も、「〇〇部長はクライアントの宣伝部長としょっちゅうゴルフに行ったりして食い込んでいるから今回の競合プレゼンは出来レースだぜ」なんて話を時々聞いていました。結局、アイディアや成果にそれ程の差がない場合はその後の仕事がやりやすい方を選ぶものです。

 私も、自分が関わっているネットニュースのサイトで某芸能人の悪口を掲載したところ、ライターが血相変えて「ヤバいっす! 事務所が激怒してます!」なんてことを言ってきた、担当者名を聞いたらたまたま知人だったので、すぐさま彼に電話をし「ごめんなさい! やり過ぎました! もうこんなネタは書きません!」と言います。すると「なんだよ、中川さんだったのかよ、最初から言ってくれれば良かったのにさ。まぁ、今回は貸し作ったから、次、なんかあったら頼むよ」ということになりました。

 この会話の本質は「ウチが宣伝したい案件を今度、1回無料で掲載しろよな。オレとお前の仲だろ、分かってるよな」ということでしかありません。逆に、自分が発注するライターも「お仲間」のライターばかりで、それなりに満足いく結果がもたらされるので、特設新しい人を探す必要がないと考えています。

 ビジネス上の「お友達」(≒やりやすい相手)というのは、あらゆる業界で存在するのではないでしょうか。

 さすがに、政治の世界で露骨にやられると、「不公平だろ!」とみんな思うはずですが、日常生活や仕事では「仲が良い人と一緒にやりたい」というのは、たしかに「普通の感覚」なんですよね。職場の環境がギスギスしているより、みんなが仲良く助け合っているほうが、仕事の効率や成果が上がる、というデータもあるようです。

fujipon.hatenadiary.com

 もちろん「馴れ合い」が過ぎると、隠ぺい体質の土壌になりやすい、というリスクもあるのですが、僕の身の回りでは、「公正な人」よりも「自分の身内や友達は優先的にきちんと守る人」のほうが、現実の生活や仕事では、多くの人に支持されているような気がします。

 その仕事をやっているのが同じ人間であるかぎり、ウェブメディアであっても、「人脈」とか「日頃の付き合い」みたいなものがものを言う状況って、多いのではないでしょうか。

 みんな、ネット時代になっても、誰かからの「口コミ」に頼り続けているわけだし。

 これを読んでいると、僕が20代の頃「新しい文化」として心をときめかせていた「インターネット」というのは、この20年間で、「歴史」を積み重ね、存在するのが前提になってきたということも感じずにはいられません。

 「ブログ」15年史を振り返る、という項より。

 私のようにブログ運営の仕事を手伝っていると、担当者が20代中盤~30代前半ということが少なくありません。すると、こちらが言うことがチンプンカンプンだという事態になることがままある。「えっ! そんなことあったんですか!」みたいな話ばかりです。

 2000年代中盤、書籍のPRにおいて大事だったのは「書評ブロガーに書いてもらう」ということでした。当時のブログの世界では「グルメブロガー」「テック系ブロガー」などと並び「書評ブロガー」がいて、書籍編集者はいかにして彼らに取り上げてもらうかを考えていたのです。

 その頃、アマゾンのユーザー数は少なかったのですが、私の人生初の書『OJTでいこう!』(2004年、翔泳社)は某有名ブロガーに取り上げられ、最高順位19位までいったことがあります。それほど影響力が強かった。ところが今のIT系の若者は書評ブロガーの存在をまったく認識していない。

 他にも、ごく当たり前の歴史認識(笑)なのに、若者から驚かれた話題をいくつか紹介します。

・辻希美はかつてネット住民に叩かれまくり、ブログを書くのを嫌がっていた

・企業はブロガーを招きイベントを開催しまくっていた

・ルー大柴の復活ブレイクのきっかけはブログだった

・コメント欄では「たてよみ」(冒頭の1文字から縦に読む)で悪口を書くのが流行

・「トラックバック」機能は夢の新機能だと思われていた

 読者の皆様にとってもチンプンカンプンかもしれませんが、かつては、ブログが「一般人の夢をかなえるツール!」「もうテレビCMは古い! これからはブログを企業のマーケティングに使う時代!」といった言われ方をしていたのです。

 こうした熱狂は去りましたが、がんで亡くなった小林麻央さんが自身の生きざまをブログに綴り、多くの人に影響を与えたような例もありますし、副業で始めたブログのアフィリエイト(広告)収入が本業である会社員としての給料を超えた、なんて人もいます。

 僕はこれらの「歴史」をすべてリアルタイムで経験してきたのですが、眞鍋かをりさんのブログとか、いつのまにか誰も話題にしなくなったものなあ……

 「ブログで夢を叶えよう!」なんていう人たちも、絶滅したわけではないけれど、いつのまにかあまり見かけなくなりました。

 某有名ブロガーも、「少ないお金で自由に暮らす」はずだったのが、いつのまにか仮想通貨を売りさばくようになり、最近はほとんど話題にもならないですし。

 正直、中川さんの「ツッコミ芸」みたいなのも、「ちょっと懐かしい」感じになってきてはいるんですよね。

 ネットの時間の流れは、本当に速い。



ウェブはバカと暇人のもの~現場からのネット敗北宣言~ (光文社新書)

  • 作者:中川 淳一郎
  • 発売日: 2013/12/13
  • メディア: Kindle版


縁の切り方 絆と孤独を考える(小学館新書)

  • 作者:中川淳一郎
  • 発売日: 2014/12/19
  • メディア: Kindle版


ネットは基本、クソメディア (角川新書)

  • 作者:中川 淳一郎
  • 発売日: 2017/07/10
  • メディア: Kindle版

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