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  • 2020年09月23日 08:35 (配信日時 09月23日 06:00)

本当は12球団一怖い〝名将〟原監督 - 赤坂英一 (スポーツライター)

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巨人・原辰徳監督(62)が9月11日のヤクルト戦(東京ドーム)で通算1067勝を挙げ、川上哲治元監督が保持していた球団記録1066勝を抜いた。少なくともレギュラーシーズン数字の上では、「ドン」と呼ばれた偉大な先輩を超え、巨人史上最多の勝利数を誇る一番の〝名将〟となったわけである。

(VectorPocket/gettyimages)

それにもかかわらず、原監督は記録更新後、いやに怒りを露わにする場面が目立つ。最初は1067勝目をマークした明くる日の12日、やはりヤクルト戦(東京ドーム)の試合中のことだった。

4-4の同点で迎えた七回、この回から3番手で登板した大江竜聖(21)が先頭打者・青木宣親(38)を四球で歩かせた。その途端、ニッポン放送で解説していた巨人OB・川相昌弘氏(55)がこう指摘したのだ。

「いま原監督がパーン! と(自分の)太腿を右手でたたきましたね」

すかさず「その原監督の心境は?」と実況の松本秀夫アナ(59)が突っ込むと、やはり巨人OBのゲスト解説者・桑田真澄氏(52)がこう言った。

「ううむ! 先頭打者にフォアボールか! というところでしょうね」

大変実感のこもった演技交じりの説明に、東京ドームの記者席で聞いていた私は思わず吹き出してしまった。たぶん、実際の原監督はベンチの中でもっと感情を剥き出しにしているんだろうなあ、と察しながら。

桑田氏も川相氏も、原監督はかつて巨人でともに戦い、同じ釜のメシを食った元チームメートだ。川相氏は第2次原監督時代の2013~15年の3年間、ヘッドコーチとして原監督を間近で支えていた経験もある。それだけに、両氏の語る〝原像〟はリアルで生々しく、実に興味深かった。

その5日後、17日の阪神戦(東京ドーム)で、原監督の怒りはますますヒートアップ。大差のついた試合の終盤、田中俊太(27)に〝懲罰交代〟を命じた。

主力の坂本勇人(31)、岡本和真(24)が2試合連続で欠場となったこの日、原監督は田中俊を2試合連続で「7番サード」でスタメンに抜擢している。それだけ原監督の期待も大きかったのだが、田中俊が九回、2連続エラーをして失点のきっかけを作ると、即座に吉川大幾(28)に交代させたのだ。

0-11と大敗した結果への怒りもあったのだろう。試合後に交代の意図を聞かれた原監督は、こういう独特の言い回しで田中俊を斬って捨てた。

「ピッチャーというのは、3アウトを取ればいいんだけどね。(田中俊のエラーのためにアウトを取れず)4アウトも5アウトも取れというのは、(ピッチャーには)酷な話でね。(田中俊の交代は)最善の手でしょうね」

これで思い出したのが、第2次原監督時代、〝秘蔵っ子〟亀井義行(38)に対する叱責の数々である。

10年シーズン終了後の秋季練習中、原監督は突然、亀井を外野からサードにコンバートすると発表した。前年の09年に外野手部門でゴールデングラブ賞を獲得した亀井をサードに回すことには、ファンからも評論家からも賛否両論が巻き起こった。

翌11年7月5日のヤクルト戦(静岡)で、亀井のコンバート失敗を印象づける象徴的なシーンがあった。「2番サード」で出場した亀井が初回、最初の守備機会で正面のゴロをエラー。不慣れな地方の球場で、打球が土のグラウンドでイレギュラーバウンドしたようにも見えた。

しかし、まだ初回にもかかわらず、原監督はすぐ亀井をベンチに下げた。これも事実上のペナルティーであり、試合後も「戦う意味で準備不足」と亀井を厳しく批判している。ひょっとしたら、4-5でサヨナラ負けした結果に憤慨していたのかもしれないが。

11年の亀井は結局、サード、外野に加えて、ファーストでも使われるなど、原監督の起用法は終始一定せず。12年には横浜(現DeNA)から三塁手の村田修一(40・現巨人野手総合コーチ)がFA移籍したこともあり、亀井はふたたび外野に戻されている。

そうしたら、12年5月2日の広島戦(東京ドーム)で、レフトに入っていた亀井の守備に、またも原監督が激怒。このときはエラーこそ記録されていないが、「捕球と本塁送球のまずさが痛い失点につながった」と、亀井の守備をこう糾弾した。

「あえて名前を出すが、きょうはレフト亀井の守備です。どういう言葉で形容していいかわからないぐらい見苦しい守備だった。ああも簡単に2点目を献上するようでは、攻撃的(な守備)ではない。今夜は一晩中寝ないで反省してほしい」

ちなみに、試合は0-3で負け。私も同席したこの会見で、報道陣が亀井以外のことについて質問しても、原監督は終始執拗に亀井の拙守にこだわった。

亀井を激しく非難した12年、ペナント奪回の切り札として獲得したはずの村田にも、原監督は厳しい批判の矛先を向けた。9月7日のヤクルト戦(神宮)で、村田が一、二回と2打席連続でチャンスに凡退すると、ベンチに下げるだけでなく、「きょうはもう帰っていい」と強制的に帰宅させた。

この試合、8-2と巨人が大勝して、優勝マジックナンバーを15に減らした。その場にいることのできなかった村田の胸中は察するに余りある。

村田が帰宅後、自らバリカンで頭を丸めると、原監督も翌日からスタメンに復帰させた。それでもなかなか打撃の調子が上がらず、9月9日のヤクルト戦(新潟)で、1死満塁のチャンスで村田が打席に向かっていたときである。原監督が村田を呼び止め、代打に高橋由伸(45・のちに巨人監督)を送ったのだ。

高橋はこのとき、走者一掃のタイムリー二塁打を打ち、リードされていた試合は4-4で引き分けた。〝非常の原采配〟は、結果として的中したわけだ。

原監督の村田に対する〝仕打ち〟はなおも続く。13年5月26日のオリックス戦(東京ドーム)では、初回で村田をベンチに下げた。初回2死走者無しから先制点を許すきっかけとなったエラー。直後のその裏に巨人が逆転し、追加点がほしい2死一・二塁のチャンスで三球三振と、攻守に精彩を欠いたことが原監督の逆鱗に触れたのだ。

試合後は、決まり文句のようにこう言って村田を突き放した。

「心技体とも準備ができていなかったということです」

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