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菅首相は早く国会を開いてコロナ対策を審議させるべき

菅(すが)内閣が発足した。新内閣の顔ぶれを見ると、平均年齢が高く、横滑りが多い、閣僚に女性は2人しかいないという新鮮味に欠けるものであった。私は基本的には有権者を批判する気はないのだが、国民の半分が女性であるのに今時これだけしか女性が参加していない内閣に対して有権者の70%近い支持があることに呆れてしまった。日本人はジェンダー間の平等と世界の趨勢をもっと意識すべきで、現状に満足すべきではないと思う。

言っていることとやっていることが違う

さて、菅首相は自民党の総裁選に出馬した際に、新型コロナウイルス対策を最優先にすべきだという考えを重ねて示していた。しかしながら、先日閉会した臨時国会は単に安倍前首相の後任選出しか行わず、わずか3日間で閉会してしまった、所信表明演説や代表質問、法案審議を行う与野党の本格論戦は次期国会に持ち越されたのだが、菅首相は臨時国会を10月下旬にも召集することを考えているらしく、開会は今から1カ月以上先となるようである。さらにこの臨時国会に関しても、日本とイギリスの新貿易協定案の承認や来年の東京五輪に合わせて祝日を移す特別措置法改正案を成立させただけで、すぐに閉会するか衆議院解散が行われるのではないかという憶測が出回っている。

いずれにしても、菅首相の言っていることと実際にやっていることは全く違っていると言いたい。コロナ対策には一刻の猶予もないと言っていたのに、一か月以上国会を開く意思がないのならば、首相は国民を欺いているとしか言いようがない。

召集時期を遅らせ開会日数を短くするのは、安倍前首相主催の「桜を見る会」に出席したジャパンライフ元会長が逮捕された件について野党は政府への追及を続ける構えなので、桜問題の追及から逃げたいからだとも指摘されている。野党が桜問題への追及を続けるのは、菅首相が官房長官を務めていた安倍前政権がこの問題に対して国民が納得いく説明を行わずに資料を破棄するなど隠ぺいを続けていたからである。国会を開くたびに野党から追及されるのは明らかに安倍・菅政権の責任だ。追及が嫌だからと言って国会を開かないことは言語道断であり、正当化の余地はない。ほとんど与党のゆ党の維新の議員など、野党を批判する連中がいるが、自民党が野党だったら間違えなく同じことをするはずである(実際にかつて自民党は「外国人献金問題」で旧民主党の菅(かん)政権を執拗に追及していた)。

首相のコロナ対策は「経済対策」だけ?

さらに、私がもう一点、菅首相の政治姿勢に疑問を感じるのは、首相のコロナ対策は「経済対策」だけであり「感染抑止策」が抜けているということである。はっきり言おう。彼は感染抑止に熱意がない。さらに言えば、首相の最大の関心事はコロナではないという疑念を持たざるを得ない。

菅首相の自民党総裁選立候補時のパンフレットには、コロナ対策について以下のように書かれている。「いまこそ政治がしっかりと責任を持って、まず、爆発的な感染は絶対に防ぎ、国民の命と健康を守ります。その上で、感染対策と経済活動との両立を図ります。年初以来の新型コロナ対策の経験をいかし、メリハリの利いた感染対策を行いつつ、検査体制を拡充し、必要な医療体制を確保し、来年前半までに全国民分のワクチンの確保を目指します。」

ワクチン確保以外は何も具体的なことは言っていない。また、「爆発的な感染(拡大)を防ぐ」と言っているだけで、感染者数や重病者数をどの程度まで抑えるのか、爆発的な感染拡大を起こさないために(または起きてしまった場合に)政府として何をやるのかなど言及がなく、調べた限りでは菅首相は総裁選でこれらに関して具体的に言及したという報道を見つけることはできなかった。一方で、GoToキャンペーンを東京に適用したり、GoToイートキャンペーンをやったりするのだから、感染症予防対策は国民一人一人に「自助」努力という形で押し付けているだけで、政府の無策に対して開き直っているようにしか見えない。国民から強い非難を浴びた西村康稔氏をコロナ対策担当大臣兼経済再生担当大臣として留任させていることからも、菅首相は官房長官時代に安倍前首相からコロナ対策の中心から遠ざけられていたにもかかわらず、安倍前首相の対応を抜本的に見直す気が無いのがよく分かる。

4連休で街や観光地にはかなり人出が戻っているようだ。それ自体は悪いこととは断言できないが、新規感染者数の減少が鈍化している中、飲食店などを通じて感染が再び拡大するのではないかと懸念せざるを得ない。さらに、これから冬場にかけて爆発的な感染拡大が起こったら彼はどう責任を取るのだろうか?

私は、感染抑止策として政府は
① 特措法を再改正し、罰則を伴った休業命令と休業補償をセットで導入する
② 飲食店での感染拡大を防ぐために、風営法または食品安全基本法などの時限付き改正を行い、店内のソーシャルディスタンスに関する規制の具体化、店内の全面的禁煙、アクリル板などの設置基準の具体化などを定め、飲食店に規則遵守を命令するとともに基準をクリアするために必要な出費に対して経済的支援を行う
③ 一定年齢以上の全国民に時限付きでマスク着用の義務化を行うとともに、アルコールハンドスプレーの携帯を推奨する

ことを行うべきだと考えている。

しかし、上記のような「命令」を実際に行えば「補償」を行わなければならない可能性があることから、近視眼的に目先の財政収支の健全化にこだわる財務省は、これらの「命令」の導入には難色を示すだろう。そして、菅首相には、「補償」問題に関して財務省を説得しようとする意志も代替案もあるようには見えない。しかしながら、菅首相(もちろん安倍前首相も)がこの「命令」と「補償」の問題に真剣に向かい合わないのは怠惰である。財務省が「補償」の導入を渋ることで「命令」の導入を含む強力な感染抑止策が行えないことにより今冬に感染爆発が起きたら、それによってもたらされる経済損失および税収減は、強力な感染抑止策を行って感染爆発を防げた場合よりもはるかに大きくなるかもしれない。そもそも、緊急時に政府が国民に「命令」を行うことが出来ない状態を放置することは危機管理上望ましくない。

早急に国会を開いて感染抑止対策を講じるべき

菅首相が新型コロナ対応について熱意を見せない中、代わりに政権の目玉政策としてマスコミに取り上げられているのは、携帯料金の値下げや、デジタル化の推進、縦割り行政の打破など総務省マターや行政改革である。これらは結構なことであるが、国民が今一番望んでいるのはコロナ禍の収束である。ワクチンの接種開始予想時期を考えれば、コロナ禍を収束させるために今から国民に多大な犠牲を強いる集団免疫を実行することは考えられないわけで、日本政府が行うべきコロナ対策は感染拡大防止の徹底し感染者数を抑えることで経済を活性化することである。デジタル化や省庁縦割り打破も今は感染防止対策を最適化するために行われるべきだ。

菅首相が自身でコロナ対策が最優先と言っていたにもかかわらず、国会を開いて特措法改正など必要な感染抑止対策を講じることなく、小手先の「コロナ経済対策」しかやらないとなれば、国民の支持を失うのは時間の問題だろう。

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