- 2020年09月22日 09:12
「チーム地球」の一員としての日本の5つの優先課題――SDGs週間に考える
1/2・2030年までの中期目標であるSDGsは、世界全体で取り組むべき17の目標からなり、いわば「チーム地球」にとっての課題でもある
・国連のランキング評価によると、日本の取り組みは世界全体で第17位に位置しており、これは決して悪い成績ではない
・ただし、何年にもわたって「重要な課題」と評価される項目もあり、これらは日本にとって優先的に底上げを図るテーマといえる
世界全体で取り組むべき課題のうち、日本がとりわけ手薄と指摘されるのは、貧困と格差、ジェンダー平等、化石燃料の大量消費、生物多様性、そして公正な資金の流れである。
「チーム地球」としての課題
9月18日から26日は、国連のSDGs週間にあたる。最近では鉄道車両などにもSDGsのカラフルなロゴでラッピングが施されたものが各地で登場しており、認知度は徐々に上がっている。

日本語で「持続可能な開発目標」と呼ばれるSDGsは、2015年に国連総会で採択された、2030年までに世界全体で取り組むべき中期目標を指す。そこには極度の貧困をなくす、飢餓の撲滅、ジェンダー平等の実現、イノベーションの促進、地球温暖化対策など17の大きなゴールが掲げられ、そのもとに169のターゲットが設定されている。
これらはいずれも世界全体に共通する課題であり、いわば「チーム地球」としての取り組みが求められているものばかりだ。
各国での進捗を測るため、国連は毎年各国のSDGsへの取り組みを評価し、その結果をランキング形式で発表している。7月に発表された今年の順位で日本は世界17位。2016年以来、日本は20 位以内に入っており、世界全体でみれば決して悪い成績ではない。
その一方で、例年のように改善が求められ続けている課題もある。下記の表は、この3年間の日本の取り組みに関して「重要な課題(Major challenge)」と評価された項目だ。
これらはいわば日本で取り組みが遅れており、優先的に「底上げ」を図るべき領域といえる。以下で、これらを5つのグループに分けてみていこう。
貧困と格差の悪化
まず、貧困である。日本ではアフリカなどで広くみられる、1日1.9ドル未満の「絶対的貧困層」は稀だが、貧困や格差は相対的なものであり、物価水準などが異なれば、貧困の基準も異なる。
SDGsレポートの日本に関する評価では、「税金徴収や再配分の後の貧困率(所得の中央値を下回る割合)」が3年連続で「重要な課題」となった。日本の約15%という水準は、先進国ではアメリカ(17.8%)に迫るもので、むしろチリやメキシコなど新興国に近い。
これに加えて気になるのは、格差の大きさを表すパルマ比率(上位10%が得ている所得の下位40%の所得に対する比率)がこの2年連続で「重要な課題」と評価されたことだ。日本の数値は1.3だが、この水準はアメリカ(1.76)やイギリス(1.52)を下回るものの、先進国のなかでは格差が大きい部類に入る。
コロナのダメージは立場の弱い非正規雇用などでとりわけ大きいため、日本で今後、貧困と格差がさらに悪化する可能性は大きい。
先進国最低レベルのジェンダー平等
次に、ジェンダー平等だ。SDGsレポートでは、3年連続で「議会における女性議員の割合」や「性別賃金格差」が「重要な課題」と評価されている。
このうち、女性議員の割合は10%前後にとどまっており、これは先進国中最下位レベルであるばかりか、ほとんどの途上国と比べても低い水準にある。
これに対して、フルタイム労働者および自営業者のなかでの男女間の賃金格差は24.5%(2020)。これは先進国のなかでも屈指の高水準で、SDGsランキングの首位常連であるスウェーデンと比べると約3倍も大きい。

政府や企業は女性の参画をことあるごとに強調するが、その道のりは遠い。
化石燃料の大量消費
第3に、エネルギーを大量に消費するライフスタイルだ。
SDGsレポートによると、日本に関する評価では、「エネルギー浪費」や「一人当たりCO2排出量」が3年連続で「重要な課題」としてあげられている。とりわけ、日本の一人当たりCO2排出量8.8トンに関していうと、これより上位にくるのは中東などの産油国がほとんどというほど多い。
日本の自動車や家電はエネルギー効率の良さで知られるが、消費の総量が多ければ、いくら効率が良くても追いつかない。
しかも、その多くは石油や天然ガスといった化石燃料で、再生は不可能だ。日本の「再生可能エネルギーの占める割合」もまた3年連続で「重要な課題」と評価されている。
日本ではCO2排出などにかかる税金などが安く、これが欧米と比べて風力や地熱など再生可能エネルギーの利用や、ガソリン車に比べて温暖化に負荷の小さい電気自動車への転換が進んでいないことの一因といえるだろう。
- 六辻彰二/MUTSUJI Shoji
- 国際政治学者