- 2012年10月18日 13:03
大アービトラージ時代の終焉
1/2世の中は、アービトラージ(裁定取引)であふれている。
人類の歴史は、アービトラージの歴史であった、といっても過言では無いかもしれない。
本来アービトラージとは金融の世界における裁定取引(さや抜き)のこと、
ある財が東京で80、シンガポールで90で取引されているなら、東京で買ってシンガポールで売る。
現在100で取引されていて、先物に90の値段が付いているなら、先物を買って現物を売る。
それが典型的なアービトラージだ。
もっとも現在はそんな「ウマイ話」はそれほど転がっているわけではない。
それどころか、アービトラージは急速な勢いで、この世から無くなろうとしている。
なぜ昔にくらべ、裁定取引の機会が減ったのか?
答えは簡単、世界中で起こっている情報の非対象の解消(均一化)である。
裁定取引は情報の非対称、つまりある人は知っていて他方は知らない、という状態により生まれる。
そしてこの20年弱、驚異的なスピードで情報の非対象の解消が進んでいる。
交通網の発展や世界貿易の拡大など様々な要因があろうが、大きな要因はインターネットだろう。
一方向であり、検索性も無いテレビは、最大公約数に向けた情報にならざるを得ない。
有料の衛星放送等である程度の専門性は出せるが限界はある。せいぜい数百チャンネルだ。
しかしインターネットは違う。無限大である。極論すれば人間の数だけ、情報の量も、分野も、レベルも存在する。
1994年のインターネットの実質的誕生から、00年代前半のソーシャルメディアの勃興によるパーソナルパブリッシングの一般化を経て、たかだかこの20年弱で世の中は一変した。
だれでも米国の全上場企業の詳細なディスクロージャーを無料で、家のパソコンや携帯電話で閲覧できる。
第一線の医学者が、とある難病について詳細にブログで公開している。
アフリカの学生が、息を飲む素晴らしいダンスパフォーマンスを動画サイトに掲載し、世界が注目する。
それが我々が住む2012年だ。
その結果何が生まれたか?
アイデアや知識の相対的な価値低下、そして人類の富の再編成だ。
タイムマシンはもう、無くなった。
シリコンバレーのビジネスモデルは、一夜にして世界中の若者に模倣される。
もはや「それは素晴らしいアイデアだね!」ではなく、「そのアイデアは、XYZとABCの組み合わせだね」となる。
あなたのそのアイデアは、必ず世界のどこかの誰かによって、既に試されている。
逆に言えば、誰かがそのモデルで既に成功/失敗しているという意味において、「Proven」な状態にあるのだ。
せっかくProven なのに、知らないというだけで機会を逸している例もまた散見するのだが…
過去、ソフトバンクの孫正義氏は「タイムマシン経営」と言った。
米国で成功したビジネスモデルを日本に輸入し成功させた。
それはすなわち、産業の進展スピードの差を利用した「情報のアービトラージ」だ。
日本と米国における情報の非対称性があったから実現した。
それがなくなった今、その裁定取引は成り立たない。



