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特集:菅新内閣とスガノミクスの品定め

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今週は7年8か月に及んだ安倍晋三内閣が幕を閉じ、自民党総裁選挙で圧勝した菅義偉内閣が発足しました。自民党役員人事、首班指名から組閣まではまことに手際が良く、早くも各社の世論調査も出始めていますが、出だしから「ご祝儀相場」の高支持率の模様。一部には早期解散説も飛び交っています。

それ以上に気になるのは、新政権がこれから何を目指すのか。「デジタル庁の新設」などの目標が掲げられていますが、菅氏の特色は政策が「点」であって、方向性が明確でないこと。

改革マインドは強いけれども、どっちを目指しているかがよく分からない。新内閣と「スガノミクス」について考えてみました。

●菅義偉新内閣は7割程度の高支持率

あっという間の1週間だった。月曜日に自民党総裁選、火曜日に党役員人事、水曜日に臨時国会が召集されて首班指名が行われ、木曜日の新聞にはもう閣僚人事が掲載されていた。官房長官を長らく勤めていただけに、新首相の手際の良さは相当なものである。

マスコミ側もややフライング気味に対応している。金曜日の朝時点で、早くも世論調査の結果が出始めている。本来であれば、今週末にじっくり民意を尋ねるべきところだが、4連休が控えていることもあって、既に3~4社が結果を出している。

意外にもというか案の定というか、だいたい7割前後の高支持率になっている。それ以前の安倍内閣は、コロナ対応への不手際を批判され、5月以降は2割から3割台という低空飛行を余儀なくされていた。ところが8月28日に安倍首相が辞意表明すると、途端に支持率は跳ね上がった。

政権末期の指導者が病気で去るときは、普通は石もて追われるものだが、民意は「安倍さん、お疲れさま」モードになっていた。その後を円満な形に引き継いだ菅新内閣には、さらなる「ご祝儀相場」が加わったようである。

〇ややフライング気味の各社世論調査


上記の通り、支持率がやや高めに出る日経新聞で74%、低めに出る毎日新聞で64%となっている。自民党への支持も回復していて、この間に2党合流が行われた立憲民主党――と言っても、どこがどう変わったのかはよくわからない――は霞んでしまっている。

しかるに菅首相を支える陣容は、とてもではないが清新な感じではない。特に自民党役員人事は、ものの見事に派閥均衡型であり、論功行賞人事であり、しかも全員が男性で平均年齢が高い「5G(爺)」状態である。

幹事長:二階俊博(81)二階派→菅氏擁立の流れを作った功労者、盟友
総務会長:佐藤勉(68)麻生派→菅氏と当選同期
政調会長:下村博文(65)細田派→安倍氏の腹心
選対委員長:山口泰明(71)竹下派→菅氏と当選同期、同世代
国対委員長:森山裕(75)石原派→長らく国会対策で一致

たぶんご自身が信用できる人で固めた人事であり、女性を入れねばとか、若手を増やそうといった「人気取り」や「マスコミ受け」の発想がほとんどない。ここまで徹底していると、いっそスガスガしいくらいである。組閣もきわめて地味であった。

留任、再任が多く、実務家タイプで固めていて、サプライズもなければ「華」もない。逆に言えば、過去の小泉内閣や安倍内閣はそういうことを強く意識していて、われわれがその流儀に慣れ過ぎているのかもしれない。さて、堅実なプロ好みの人事というのは良いとして、問題はこの内閣がなぜ高支持率になるのかである。

●「菅人気」の賞味期限はどれくらいか

菅内閣の人気には、以下のような理由が考えられる。

1.長期政権の後だから

✓筆者は佐藤栄作政権の終わり(1972年)をかろうじて記憶する世代だが、7年7カ月の長期政権が終了したときの解放感は、当時の小学生にも感じられた。その次に誕生した田中角栄首相は、「今太閤」と呼ばれて人気者となった。

2.「令和おじさん」への好感度

✓「平成おじさん」だった小渕官房長官と同様、「令和おじさん」も首相の座を射止めることになった。「叩き上げ」「非世襲」「秋田出身」などの特性も好感されている。また、久々に誕生した「団塊世代」首相(1948年生)でもある1

3.「改革マインド」の高さ

✓コロナ禍で確認されたのが、「PCR検査」や「10万円配布」など、わが国政府機構の非効率さである。この点で、「デジタル庁」「携帯料金」などと焦点を絞って改革に意欲を見せていることが評価されている。自民党では小泉首相以来、久々に都市部で人気が出るタイプとなるのではないだろうか。

こうしてみると、上記(1)と(2)の賞味期限は長くないと考えるべきだろう。まず、田中角栄内閣は日中国交正常化を果たした後に、「金脈スキャンダル」で倒れている。「長期政権の後は短命政権」というのが、過去の永田町の歴史が教えるところであり、出だしの支持率が高いことはけっして歓迎すべきことではない。

次に、小渕恵三内閣は序盤の低空飛行から尻上がりに支持を獲得したが、これは事前の期待値が低かったことに助けられている。「ご祝儀相場」で始まった菅内閣は、むしろその逆パターンに陥ることを用心しなければなるまい。

となると、(3)の改革で成果を挙げることが長期安定政権への道となるのではないか。今回の組閣を見ても、足下のコロナ対策から中長期の規制改革まで、とにかく早く仕事をして成果を出したい!という意欲が強く示されているようである。

菅氏本人の立場になってみると、「この夏は危ない橋を渡った」ことを自覚しているはずだ。なにしろ官房長官として、「GoTo キャンペーン」に政治生命を賭けていた。仮にこの夏、コロナ感染者が激増していたら、その責任を問われることになり、その場合は総裁選出馬どころではなかっただろう。

幸いにも感染状況は安定しているが、首相になった菅氏には常にその責任がつきまとう。「とてつもないピンチを凌いだ後にチャンスが回ってきた」という認識であって、状況を楽観しているとはとても思えない。


1過去には鳩山由紀夫(1947年生)と菅直人(1946年生)がいる。さすがにこの2人の政権を下回ることはないものと信じたい。

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