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都道府県別平均通勤時間 - 岩﨑 敬子

1――都道府県別の平均片道通勤時間

2020年被用者の働き方と健康に関する調査結果(ニッセイ基礎研究所)、平成30年度住宅・土地統計調査結果(総務省統計局)、平成28年社会生活基本調査結果(総務省統計局)を元に、都道府県別の平均通勤時間をまとめたものが本稿最後に掲載されている図1である。また、都道府県別の通勤時間を長い順にランキング化してまとめたものが表1である。本節ではこれらの3つの調査の概要を簡単に説明する。

1| 2020年被用者の働き方と健康に関する調査(ニッセイ基礎研究所)

本調査は、全国の 18~64 歳の男女被用者を対象1にした WEB アンケート調査である。回答期間は、2020 年 2 月 28 日~3 月 25 日。回答数は 5,594 件。回答は全国 11 地区の性・年齢別の分布を 2015 年の国勢調査の分布に合わせて収集された。

通勤時間に関する質問は選択式(10分以内、11~30分未満、30~60分未満、60~90分未満、90分以上)で聞かれたため、平均値の算出の際には各選択肢の時間幅の中央値を回答者の通勤時間として算出した2

その結果、本調査での男女被用者の全国平均片道通勤時間は36.5分であった。最も長かったのは神奈川県で53.4分、最も短かったのは島根県で15.9分であった。

1 株式会社クロス・マーケティングのモニター会員
2 10分以内では5分、11~30分未満では20.5分、30~60分未満では45分、60~90分未満では75分、90分以上は90分として算出。また、別途質問で普段から在宅勤務をしていると回答したは0分とした。

2|平成30年住宅・土地統計調査(総務省統計局)3

全国から抽出された世帯(計約370万住戸・世帯)を対象として2018年10月に行われた調査。各都道府県の平均通勤時間は、「住宅・土地統計調査 平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計、57-1表」より算出した。

サンプルサイズは約6百70万で、「家計を主に支える者の通勤時間(8区分)別2014年以降現住居に入居した家計を主に支える者が雇用者である主世帯数」が示されている。

つまり、2014年以降現住居に入居した者について、家計を主に支える者が雇用者である場合の通勤時間の分布を把握することができるデータである。

通勤時間の8区分は、自宅・住み込み、15分未満、15~30分未満、30~45分未満、45分~1時間未満、1時間~1時間30分未満、1時間30分~2時間未満、2時間以上で示されているため、平均値の算出の際には各選択肢の時間幅の中央値を回答者の通勤時間として算出した4

その結果、本調査での男女被用者の全国平均片道通勤時間は32.9分であった。最も長かったのは神奈川県で46.8分、最も短かったのは島根県で19.5分であった。

3 調査の概要は総務省統計局ウェブサイト参照:
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/tyougai.html (2020/9/14アクセス)
4 自宅・住み込みは0分、15分未満は7.5分、15~30分未満は22.5分、30~45分未満は37.5分、45分~1時間未満は52.5分、1時間~1時間30分未満は75分、1時間30分~2時間未満は105分、2時間以上は120分として算出。

3|平成28年社会生活基本調査(総務省統計局)5

全国の指定された調査区内にある世帯のうち、無作為に選定された約8万8千世帯の10歳以上の世帯員約20万人を対象として2016年10月に行われた調査。

図1及び、表1の各都道府県の片道通勤時間は「社会生活基本調査から分かる47都道府県ランキング」の『通勤・通学時間が長い!?ランキング』6の数値より記載7

このランキングは「10歳以上の「通勤・通学」をしている人の平日の平均」を示しているため、通勤者だけではなく、通学者の値が含まれていることに注意が必要である。本調査での全国平均片道通勤時間は39.5分であった。最も長かったのは神奈川県で52.5分、最も短かったのは大分県で28.5分であった。

5 調査の概要は総務省統計局ウェブサイト参照:
https://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/gaiyou.html(2020/9/14アクセス)
6 https://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/rank/index.html(2020/9/14アクセス)
7 『通勤・通学時間が長い!?ランキング』では1日当たりの通勤・通学時間が掲載されているため、これを1/2にした数値を片道通勤時間として本稿では記載している。

2――通勤時間の長い都市圏とリモートワーク

3つの調査ではそれぞれの調査対象者の違いによって、算出された各都道府県の平均通勤時間に違いがあるものの、通勤時間は東京圏(神奈川、千葉、埼玉、東京)が最も長く、その後大阪圏(奈良、兵庫、大阪、京都)が続き、さらにそれに名古屋圏である愛知県が続くという傾向がみられることは、どの調査結果にも共通している。

このことは東京や大阪、名古屋といった都市にある企業にその郊外から出勤している人の通勤時間が長い傾向を示唆する。

新型コロナウイルス感染症は、人口の多い都市圏で感染者も多い傾向があり、都市リスクと考えられる。こうした都市リスクを受けて都市圏の企業でリモートワークが拡大することは、都市リスク対策としてのみでなく、長い通勤時間の減少を通して人々の生活に与える影響も大きいと考えられる。

通勤勤時間の減少は幸福度の向上につながる可能性があること8や、幸福度の向上は生産性の向上につながる可能性があること9が示唆されてきている。さらに通勤時間の減少は女性の社会進出や出生率の向上にも貢献する可能性があることが議論されている10

本稿で紹介した都市圏で通勤時間の長い傾向は、こうしたリモートワーク拡大による通勤時間の減少による効果が、都市圏で特に大きい可能性があることを示唆すると考えられるだろう。

8 岩﨑敬子(2020年7月29日)「通勤時間と幸福度の関係―在宅勤務拡大で幸福度は高まるか?―」基礎研レポート(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=65027?site=nli)
9 岩﨑敬子(2020年1月15日)「幸福度が高まると労働者の生産性は上がるのか?-大規模実験を用いた因果関係の検証:プログレスレポート-」基礎研レポート(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=63388?site=nli)
10 岩﨑敬子(2020年9月14日)「女性の通勤時間に見るリモートワークの少子化対策への貢献可能性」基礎研レター(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=65451?site=nli)

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