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安倍前首相、「多い会食機会」の不自然 仮病説も流れる

安倍前首相が訪れた病院の前にはマスコミが殺到した(写真/共同通信社)

 菅政権誕生を決定づけたのは、間違いなく安倍首相の病状説明だった。その無念を引き継ぐのは官房長官として支えてきた菅氏しかいない……世間の同情を引いた安倍氏の病状だが、その後官邸や医師団からの客観的な説明は一切ない。ノンフィクション作家の森功氏が、安倍前首相の病状に関する不自然な点に迫る。

【写真】濃い紺のスーツの安倍首相が左手を巻いて花束を持ち、紺のスーツに光沢ある黄色ネクタイの菅氏が下から指3本で支える。9月14日の総裁選直後

 * * *

コース料理にワインまで

 今年4月にレクサスLS600hLからセンチュリーにモデルチェンジしたばかりの内閣総理大臣専用車が、駐車場に滑り込む。続いて新聞記者だけでなく、テレビクルーまで現われ、病院に消える総理の姿を見送る。菅後継が決定的となっていた9月12日、そんな光景が19日ぶりに見られた。

 前首相の安倍晋三が渋谷区富ヶ谷の私邸を出て、SPや首相補佐官兼政務秘書官の側近、今井尚哉を伴い、東京・信濃町の慶応大学病院に向かう。そこには、報道陣も付いて来る。8月17日と24日に続き今度で3度目。安倍のマスコミを引き連れた病院通いが、なかば恒例のようになっている。

「本年6月の定期検診で、(潰瘍性大腸炎)再発の兆候がみられると指摘を受けました。先月なかごろから体調に異変が生じ、8月上旬には再発が確認されました」

 ときに目に涙をためながら話した首相の辞任会見(8月28日)により、同情の声が上がり、内閣支持率は持ち直した。一方、当の安倍は以前と変わらないように忙しく働いている。新聞の首相動静を見る限り、政府関係者だけでなく、外部の有識者との面談もこなしているようだ。

「辞任を決めて吹っ切れたのでしょうか。すっかり元気を取り戻していますよ。9月11日には、谷口(智彦内閣官房参与)さんや鈴木(浩外務審議官)さんたち外務省関係者を呼んで慰労会を開き、コース料理を食べてワインまで飲んでいた」

 政府の関係者は異口同音にそう話す。ある関係者はこうも言った。

「実はまだまだやれるんじゃないか、政権を投げ出さなければならないほどの病状ではないように感じます。少なくとも1次政権のときのように10分おきにトイレに駆け込むような状態ではない。コロナ対策の失敗でやる気を失い、菅さんに任せてもう辞めたかっただけなんじゃないか」

 いまや“仮病説”まで流れる始末だが、それを打ち消すかのように、マスコミ同伴で通院をしている。病を隠そうとした政治家は数多くいたが、その逆は前代未聞である。

 慶応病院の検査で潰瘍性大腸炎再発の兆候が発見されたのは、6月13日だとされる。持病の再発となれば、医師からも注意するよう指導されるはずだが、コロナによる非常事態宣言の解除の解放感からだろうか、けっこう会食の機会が多い。6月13日から7月までの新聞各紙で報じられた会食状況を抜き取ってみた。

 まずは6月19日の動静では、〈東京・虎ノ門のホテル「アンダーズ東京」。レストラン「ザ タヴァン グリル&ラウンジ」で麻生太郎副総理兼財務相、菅氏、甘利明自民党税制調査会長と会食〉とある。続いて20日〈東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急。レストラン「ORIGAMI」で秘書官〉、22日〈東京・丸の内のパレスホテル東京。日本料理店「和田倉」で細田博之自民党元幹事長〉、24日〈東京・赤坂の日本料理店「たい家」。自民党の二階俊博幹事長、林幹雄幹事長代理〉、29日〈東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急。日本料理店「水簾」で甘利明自民党税制調査会長ら〉──。

 7月に入ると、1日〈公邸。松尾新吾九州電力特別顧問、石原進JR九州特別顧問、仏壇仏具販売「はせがわ」の長谷川裕一相談役〉、3日〈東京・赤坂の日本料理「もりかわ」。葛西敬之JR東海名誉会長、北村(滋)国家安全保障局長〉、13日〈公邸。宮家邦彦キヤノングローバル戦略研究所主幹、吉崎達彦双日総合研究所チーフエコノミスト〉、以下、21日〈東京・松濤のフランス料理店「シェ松尾 松濤レストラン」〉、22日〈東京・銀座のステーキ店「銀座ひらやま」〉、30日〈東京・丸の内のパレスホテル東京〉といったアンバイだ。

なぜ病状がマスコミに?

 なかでも6月19日の安倍、麻生、甘利、菅の会食は「3A1S」会談と呼ばれ、安倍が珍しく官房長官の菅を誘った「手打ち式」だと注目された。昨年来2人の「すきま風」が取り沙汰され、事実、菅はコロナ対策で蚊帳の外に置かれてきた。だが、菅はこれ以降Go Toキャンペーンなどの必要性を訴えるようになり、政策の主導権を握っていく。そしてこの頃から政権禅譲の動きが加速していったようにも思える。

 一方、首相自身、会見で具合が悪くなったと言っている割に、頻繁に会食を重ねている。実際に食事をともにした何人かに様子を聞いてみた。

「普段どおりというか、食欲はかなりあったよ。料理がひと通り出てきたあと、総理がシメに注文したのが天丼。そんなに大きなどんぶりではないけど、残さずペロリと平らげていたものね」

 和食をともにした会食相手がそう言えば、洋食のケースでは次のような具合なのだ。

「総理はステーキが好きなんだね。前の週に銀座の『かわむら』を予約していたけど、キャンセルして食べ損ねたそうなんだよ。で、次の週、メインディッシュのステーキはどうされますか、と聞かれると、頼んだのがあっさりしたヒレではなくて、サシの入ったサーロイン。ふつうに150グラムを完食していた」

 もとより新聞の首相動静はすべての動きをとらえているわけではない。確認できただけでもこの間、首相はさまざまな人たちと会食してきた。難病の再発という辞任会見を受け、会食ではほとんど料理に手をつけなかったという報道も少なくない。だが、アルコールまで口にしてきたらしい。

 むろん調子のいいときも悪いときもあるだろう。半面、普通に会食できるなら、職務は続けられるのではないか。また国の首脳が職務を投げ出さざるを得ない重病が、なぜこうも簡単にマスコミに漏れてきたのか。それ自体、異常というほかない。

【PROFILE】森功(もり・いさお)/ノンフィクション作家。1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2016年に『総理の影 菅義偉の正体』を上梓。他の著書に『官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪』『ならずもの 井上雅博伝 ヤフーを作った男』など。

※週刊ポスト2020年10月2日号

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