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菅首相を待つ外交課題

 9月16日、首相就任後の記者会見で、菅首相は安倍路線を継承し、日米同盟を基軸とする政策を展開すると述べた。また、「自由で開かれたインド太平洋」を戦略的に推進すること、そして、中国やロシアを含む近隣諸国と安定的な関係を築くとした。

 日米関係については、貿易関係や防衛負担をめぐって日米間には利害の対立がある。コロナが収束したとき、アメリカからのさらなる貿易自由化要求に応えられるのか。また、駐留米軍経費の負担増なども焦点になりうるであろう。

 これらの問題は、国内での調整も必要な課題であるが、調整型の菅首相は、アメリカ大統領とどう交渉に臨むのだろうか。

 アメリカは世界中で中国と覇権争いを展開している。米中関係は悪化の一途辿っており、5GやAIなどの分野での対立が激化している。中国政府としては、安倍政権にアメリカとの仲介役を依頼したいところであったが、菅政権になって同じような役割を果たせるのかどうか。

 アメリカも秋の大統領選で政権が代わる可能性がある。トランプのままでも、バイデンに代わっても、菅首相はアメリカ大統領との信頼関係を構築する必要がある。

 中国との関係について言えば、尖閣諸島をめぐる領土問題の他に、香港などにおける人権と民主主義の問題への日本の対応が国際社会に問われている。日本のみが、人権問題で中国に対して微温的な対応をとり続ければ、国際社会からの反発が強まるであろう。

 北朝鮮については、拉致問題、非核化など我が国の要求を貫かねばならないとくに、拉致問題の解決は国民の念願である。

 難問は韓国である。文在寅政権が続くかぎり、打開の道を開くことは絶望的であろうが、民間交流、自治体間の交流などを地道に進めていくしかあるまい。音楽など、芸術分野で若者はこだわりなく交流を続けているが、そのような動きを支援することが望ましい。

 北方領土問題も未解決のままである。安倍政権下では、プーチン大統領との度重なる首脳会談で、打開の糸口が見えたかのようなときもあったが、ロシア憲法の改正で、領土不割譲が規定されてしまった。北方領土のロシア化、軍事化も進んでいる。今後の対露交渉については、あまり期待できないだろう。

 中東では、イスラエルとUAEやバーレーンとの国交樹立など、新しい動きも見えているが、アメリカの対イラン強硬策が続けば、日本としてはイランとの友好関係を世界のために活用する機会が失われる。

 日本も、アメリカ一辺倒ではなく、中東諸国の旧宗主国であったヨーロッパともっと協力する方法を模索すべきである。そして、それはイランとの核合意など中東政策のみではなく、パリ協定など様々な分野についても同様である。

 日本はアメリカの同盟国ではあるが、アメリカの国益と日本の国益は異なる。アメリカへの牽制球としてヨーロッパをもっと使う発想を持つべきである。

 このような多くの外交課題について、菅首相の外交手腕は未知数である。

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