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DV被害者を萎縮させる「連れ去り」禁止 DV被害から母子を守ならければならない

 離婚を決意したとき、普通に話し合える関係でなければ別居を選択します。離婚を切り出したらどのような態度をとられるか予想もつかないような場合も同じです。
 円満に話し合えると思って離婚を切り出したのにとんでもないことになったという場合もありますから、実際には明確な予測などつけづらいという性質があります。

 この事件は、衝撃的でした。
女性を車で40メートルひきずる 男逮捕 別れ話のもつれで妻と娘が被害者宅へ 娘を連れ帰ろうと…福岡市」(テレビ西日本2020年9月14日)

 妻子は夫(父)から避難していたわけですが、子を実力をもって奪い返し、車のドアに手を掛けていた人がいることを知った上で振り切るために車を発進させるという非常に危険な行為をしています。

 自分の目的を達するためであればこのような暴力行為を行う、妻子が事前にこの夫から避難していたことは正解でした。身の安全を守るとはこういうことです。

 この場合、夫から暴力を振るわれていたかどうかは全く関係がありません。暴力を振るわれていれば当然、そうでなかったとしても避難するという行動に出ることは正しい行為です。

 これに対して、離婚後の共同親権の導入を主張する人たちは、これを「連れ去り」といって非難します。違法だといい、法律で禁止して刑罰を与えよと主張しています。
 ここでの特徴は、DVを客観証拠があって有罪になる見込みがあるもの、というように限定してしまいます。有罪判決になるための証拠がなければ「連れ去り」として禁止してしまうというのだから驚きです。

「連れ去り」を禁止しない日本は違憲・違法という主張の問題点 モラハラ被害を潜在化させてしまう

 これで妻子の生命・身体の安全を守れるのでしょうか。

 違法だ、刑罰だなどといわれてしまえば、避難という行動をとるにあたって萎縮しまうのは登当然のことで、避難そのものを阻止する効果が発生します。そういう立場に立ったとした場合、自分でこれは刑罰には当たらない「連れ去り」などというものが的確に判断するなど困難です。有罪証拠の有無などと言ったらなおさら的確な判断なんぞできるはずもありません。

 これではDV被害を潜在化させてしまったり、被害を拡大させることにしかなりません。
 離婚後の共同親権導入を推進する人たちは、本当に人としての優しさはありません。
 連れ去り禁止にはこうした効果が発生することを百も承知で主張しているからです。それは何よりも妻子が逃げ出すことを防止したいからです。卑劣としかいいようがありません。

 離婚後の共同親権を主張する人たちは、さらに大きなすり替えの議論を行います。DV案件など全体の離婚からみれば大した数ではない、そのために多くの離婚夫婦の共同親権という選択肢を奪うのかと。

 本当に悪質なんだと感じます。
 DV問題がある中で、それが少数しかないなどとよくも言えたものです。その被害の発生を防ぐための手段すら示せないでいながら、「対策」すればいいなどと言うのですから無責任にもほどがあります。

 それ以上に執着するのは、DV加害者にその傾向があるということの方が納得がいきます。

 ところで、DV案件なんて少数だと言ってしまってDV被害者を切り捨てることの発想よりも、一番悪質だと思うのは、「健全」な離婚夫婦の例を持ち出して、こうした離婚夫婦には共同親権があってもいいだろうというように制度導入の口実に全く問題のない例を持ち出す手法です。

 問題ない離婚夫婦は、離婚後の共同親権がなくても何の弊害も生じようがありません。
 滝本太郎弁護士などは、弊害事例などといって教室説例のようなものを持ち出してきます。
離婚後共同親権制度がないことの弊害

 この程度のものが制度をいじらなければならないほどの立法事実になるはずがありません。法曹としてのセンスも疑います。

 例えば、最初の問題。

「親権者でないと保育園・学校その他で親扱いされない。」

 当たり前でしょう。親権者の意に反してでも親としての乗り込んでいくということであれば対立を激化させるためのものにしかなっていません。
 親権者が認めていれば、保育園・学校に同意する旨の連絡をしておけば足ります。
 前者であれば有害、後者であれば必要性なし、という程度のものです。
 一番の問題は、この制度は、離婚後の対立もあるという離婚元夫婦の問題解決のために導入を企んでいるということが重要な点です。

 しかも重要なことは、その「健全」な例が制度導入の口実だという点です。
 改めてこのツイートをみてみましょう。

 問題のない元夫婦では離婚後の共同親権がなくても全く問題はありません。

 DV被害に逢っている人の立場に立って考えたとき、「連れ去り」禁止がどのような意味を持つのかを考えれば誰もでわかること。わからないのは、DV、モラハラ夫ばかりです。

 離婚後の共同親権と「連れ去り」禁止は一体のものとして主張されています。

 このような人たちの主張を真に受けて離婚後の共同親権制度などを導入したら、被害者が数多く出てしまいます。その中でも一番の被害者は子どもです。

 離婚後の共同親権制度に反対しましょう。

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