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スターバックス英国法人の課税逃れ疑惑は世界に波及するか 英国より法人税が高い日本は果たして大丈夫?

ロイター通信が16日、世界的コーヒー店チェーン、スターバックスコーヒーUKが過去3年間で計12億ポンド(約1524億円)の売り上げがあったにもかかわらず、法人税をまったく納めていないとスクープしたことをきっかけに、ネット上で不買運動の署名が広がる騒ぎになっている。

2008年の世界金融危機で欧米各国は財政赤字が膨らみ、現在、社会保障費など歳出削減とVAT(付加価値税、日本の消費税に相当)などの増税で財政再建に取り組んでいる。

英国では課税の公正さを求める声が高まっており、iPhoneやiPadが爆発的に売れているアップルや大手検索エンジンのグーグル、大手ネット販売のアマゾン、ソーシャルメディアのフェイスブックの租税回避行為が次々とやり玉に挙げられている。

ロイター通信によると、スターバックスは1998年に英国に進出、現在、735店を展開。これまでに総額30億ポンド(約3810億円)以上の売り上げがあったのに、納めた法人税はわずか860万ポンド(約10億9220万円)。2011年は3億9800万ポンドの売り上げがあったのに、3300万ポンドの損失を計上していた。

そのからくりとは…。

【手口その1】スターバックスコーヒーUKは昨年、コーヒー一杯につき代金の6%の知的財産使用料を英国の会社に支払っており、その額は2600万ポンドにのぼる。

【手口その2】コーヒー豆をスイスの会社を通して購入、オランダで煎った後、英国に持ち込んでおり、法人税が英国(昨年は法人税率26%)の約半分のスイスに利益を分散させていた。

【手口その3】子会社や関連会社間で融資を行い、スターバックスコーヒーUKはロンドン銀行間取引金利(LIBOR)に4%を上乗せした利息を支払っていた。ファストフードチェーンのマクドナルドの利息はLIBOR以下だった。

わかりやすく言えば、法人税が高い英国での利益をさまざまな方法で、法人税の安い国に移していたとロイター通信は指摘したのだ。

これに対して、スターバックスコーヒーUKはホームページで「私たちは英国で8500人以上を雇用しており、今後、300店を新規オープン、従業員も5000人増やす。数億ポンドの投資を考えている」と釈明したが、消費者の怒りはおさまらない。

英国での租税逃れ疑惑はスターバックスだけにとどまらない。

先週はフェイスブックが糾弾された。昨年、英国での収入が1億7500万ポンドにのぼり、法人税額は2100万ポンドと推定されるのに、納めた法人税は23万8000ポンドだった。

経費は英国で計上、法人所得は法人税率が英国の約半分のアイルランドで申告する仕組みだった。

英紙サンデー・タイムズによると、アップルは昨年、英国で67億ポンドを売り上げ、22億ポンドの利益に対し5億7000万ポンドの法人税を納める義務があったのに、売り上げは10億ポンド、利益は8100万ポンドにとどまったと申告、1440万ポンドの法人税しか納めていなかったという。

英最大野党・労働党のマイケル・ミーチャー元環境相は「彼らは税務当局を手玉に取っている。タックスマンというゲームに興じているのだ。まったくもってけしからん」と怒りをあらわにした。

ミーチャー元環境相によると、グーグルもタックス・ヘイブン(租税回避地)の英領バミューダ諸島などを使って、本来なら2億2400万ポンド支払わなければならない法人税を600万ポンドで済ませていた。

アマゾンは2006年に欧州本部を英国からルクセンブルグに移し、2010~2011年の2年間、英国に法人税を納めていなかった。このため、英税務当局は2004年から6年間にわたって税務調査を実施している。

いずれもクリエイティブで消費者に安価で高品質な商品を提供するというブランドイメージをつくってきた企業ばかり。それだけに若い消費者には裏切られたとの思いが強いようだ。

複数の国にまたがって活動する多国籍企業の場合、子会社や関連会社との取引を利用して、法人税の高い国で経費を計上し、「タックス・ヘイブン」と呼ばれる法人税の低い国で所得を申告する租税回避行為が頻繁に行われる。

各国の税務当局は法人税を取り損なわないように、まったく関係のない会社の取引と同じ価格で子会社・関連会社間の取引を計上するよう定めている(移転価格税制)。しかし、情報通信技術(IT)やソーシャルメディアの発達に伴って知的財産やサービスといった無形資産が取引されるようになったため、価格の算定が難しくなっている。

このため、各国とも法人税率を引き下げて多国籍企業が自分の国で法人所得を申告し、法人税を納めるよう促している。しかし、財政難の折、法人税率引き下げの穴を所得税やVATの増税で埋めるわけにもいかず、にっちもさっちもいかない状態になっている。

英国の税金ウォッチャー、リチャード・マーフィー会計士は「こうした企業は株主利益のため、税金の安い国で納税するのが義務のように喧伝しているが、まったくのでたらめだ」と指摘。米国では、こうした租税回避行為に目を光らせる部局を新設、欧州連合(EU)も会計の透明性を保つため、多国籍企業に国ごとの報告を求めるなど基準を強化する方針だ。

また、経済協力開発機構(OECD)は租税回避行為を封じ込めるため、中国やインド、ブラジルなど新興国にも協力を求めている。

日本のスターバックスコーヒージャパンは今年3月期決算で法人税など39億6800万円を計上している。日本の場合、法人税の実効税率は約40%で、世界的に見てズバ抜けて高いだけに、英国で租税回避行為が指摘された企業がどうしているのか気になるところだ。(了)

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