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ノンフィクションライターの石戸論さんに聞く「夜の街」新宿・歌舞伎町のいま

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いま最も注目されるノンフィクションライターの1人、石戸論(いしど・さとる)さん。
毎日新聞、BuzzFeed Japanの記者を経て、2018年に独立しました。
新型コロナウイルスでやり玉に挙げられた「夜の街」、新宿・歌舞伎町。そこで働くホストやバーの店主は本当に「けしからん」存在なのか。その問いを深く掘り下げた2020年8月4日号の『ニューズウィーク日本版』の記事は大きな話題となりました。「名指しされた人々の声」を丹念に記録してきた石戸さんに、笑下村塾たかまつななが新型コロナへの向き合い方を聞きました。

■ホストへの感染はシェアハウスでの“家庭内感染”

ーそもそも新宿・歌舞伎町のホストを取材しようと思ったのはなぜですか?

石戸:小池都知事の会見で、東京の新型コロナウイルスの感染者数の増加の原因として、「夜の街」新宿・歌舞伎町のホストクラブのホスト、キャバクラがいきなり悪者になったじゃないですか。あたかも「あいつらが感染を広げているんだ」と言わんばかりに。

確かにホストの感染している確率はある程度高かったと思います。でも、なぜ感染がホストたちで広がっているのかを、みんな考えないわけですよ。店でシャンパンタワーをワーッとやって、乾杯して飲み回しているからでしょって思っている。

ー確かに理由は気になっていました。なぜ夜の街で感染が広がったんですか?

石戸:実は、売れないホストって寮で生活しているんですよ。マンションの一室を借りて、1部屋に2人とかで寝泊まりしている。まさにシェアハウスです。つまり、ホストへの感染として非常に大きなルートの一つは「家庭内感染」なんです。雑魚寝しているような若者の間で広がっていく。そう考えると、「ホストだから」じゃなくて、「家庭内感染だから」広がるわけですよね。

しかも、彼らは感染してもほとんどが無症状です。だから彼らに必要な対策は、感染者を別の部屋に隔離するとか、ホテルに入ってもらうとかで十分なわけです。「夜の街」と呼んで、あそこに行ったら感染するかのようなイメージを広めるのは、醜悪だと僕は思いましたね。「夜の街」があることによって生きている人たちはいっぱいいます。そういう人たちを名指しして敵だと言って、排除しようとする空気感に対しては、違うでしょと言いたい。

■ホットラインを介して協力した区とホスト

ー「夜の街」への偏見が広がる中、感染経路の特定に急ぐ区に対して、普段は行政とは相入れないイメージのあるホストクラブの人たちが協力して対策に乗り出したということですが、その舞台裏には何があったんですか?

石戸:歌舞伎町の顔役として社会への発信役を担っている実力者がいるんですが、その人と新宿区長が昔から顔見知りだった。簡単にまとめれば、新宿区長がその人を呼んで、「感染者にホストらしい人がいるんだけど全然答えてくれないから経路が追えない。困っている」と相談したら「よし分かった」と話し合いの場を持ったんです。保健所も交えて協力体制を作り、ホストたちの検査、追跡調査を協力的にできるようにしたんです。ホストクラブの寮=シェアハウスルートというのもその調査でわかったことです。寮が感染経路になっているなら、そのルートを断ち切らなければならない。接触者全員が検査を受けなきゃいけないということで、協力したんですね。

ーホストクラブ側は、よく協力しましたね。

石戸:大事なのは信頼関係ですよ。新宿区の保健所の所長さんも、きちんと自分たちの思いを伝えた。プライバシーは守る。その代わりに接触者を教えてくれと。一緒にリンクを断ち切ろうと言ってホストクラブ側を巻き込んだ。彼らも店名を公表されたら困るけれど、出さないのなら協力していきましょうとなった。その結果、今は感染者が少しずつ減っていますよね。ちゃんと効果があったということです。


逆に歌舞伎町をロックダウンしろと言って閉鎖していたらどうなっていたか。ホストたちは仕事を求めて、川崎とか横浜、浦和、もしかしたら北関東にまで生活のために行っていたかもしれない。するとそこで感染が広がる。だから、地域の中で、生活をしながら感染経路を追いかけていくというやり方が、結局正しかったということになる。それは区長も保健所もちゃんと現場を熟知してたからです。とにかく現場がすごかった。

■情報発信に反省すべき点があったと告白した専門家

ー今回、感染を広げた原因として、若者にすごく批判が集まりました。石戸さんは、そのきかっけとなる発言をしたクラスター対策の専門家にもインタビューされています。

石戸:若者が危ないという意識が広がったのは、政府が設置した専門家会議のメンバーの東北大学教授・押谷仁さんが3月の記者会見で漏らした言葉がきっかけだったと僕は考えています。そこで押谷さんは、「若年層で感染が大きく広がっているエビデンスはないが、そうでないと説明がつかない」と言った。僕はそれに対して、エビデンスがないことを言っても仕方がないと思った。それを言ったら、安全のために若者を排除しようという社会的な感情を後押ししてしまいます。だから、不用意に言うべきじゃないとその後もずっと批判してきました。

そして今回、それを直接ご本人に伝えるべく取材を申し込むと、ある時期を境にメディアの取材を避けるようになった押谷さんが、東京都内で直接会って取材を受けると返事をくれました。押谷さんに、専門家の発言が若者へのバッシングを強めたのではないかと聞くと、「僕らも反省しなければいけない」と答えました。「このウイルスは、50代くらいまでは重症化リスクが比較的低く、60代以降になると急激に上がっていくので、『若年層』という言い方はよくなかった」と言っていましたね。

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