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「半沢直樹」と海外人気ドラマに共通するヒット要因 フォーマットが生む決定的な違いも

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TBS「半沢直樹」公式HP

TBSのドラマ『半沢直樹』が2013年に続き、再び大きな成功を収めている。前回シリーズでは「倍返し」というフレーズが流行語大賞を獲るなど大きな社会現象を起こしたが、それから7年がたった今夏、満を持して制作された新シリーズもまた、毎週の放送毎に高視聴率と新しい話題を生み出している。

一方ストリーミングの台頭により、各配信プラットフォームでは、世界規模でヒットする海外ドラマが頻発している。現代日本のドラマを代表する『半沢直樹』と海外ドラマの作品たち、国やフォーマットも大きく違う中で、熾烈な競争を勝ち抜くヒットの要因がどこにあるのか探りたい。

ヒット作に必要な要素が詰まった『半沢直樹』

筆者がロサンゼルスの映画大学院でプロデュースを学んだ際、数多くのハリウッド作品の企画開発に携わってきた教授陣が、ヒット作品に外せない要素として口を揃えていたのは、魅力的なキャラクター、主人公が達成すべき「ゴール」、その達成を阻む「障害」と達成できなかった時に待ち受ける「リスク」であった。

『半沢直樹』といえば、主人公の半沢が巻き込まれる金融業界での熾烈なサバイバルゲームと、個性的な脇役たちによる濃厚な演技、それに「倍返し」というキャッチフレーズが話題に上ることが多いが、半沢は同期や部下たちを大事にする信頼できる仲間であり、頼もしい上司であると同時に、家庭では穏やかな顔が見える旦那であり、彼の魅力は疑う余地がない。出向や懲戒解雇という上からの脅し文句にひるむことなく正義を貫き、視聴者を裏切ることなく最後に勝利を収める半沢の姿は、本作が幅広い層から支持を集める最大の理由だろう。

さらに、期限までに債権回収や不正を暴くという「ゴール」と、できなければ出向や解雇という「リスク」がはっきりと提示されたストーリーは、金融業界に詳しくない視聴者にとってもわかりやすく、代わる代わる半沢の前に立ち塞がるライバルや国家権力などの「障害」も明確である。

このように、本作はハリウッドでヒット作に必須と言われる要素がそっくり押さえられているのであるが、加えて筆者は本作に非常に時事的なものも感じた。それはこのシリーズの核とも言える「大きな権力に立ち向かい、不正を暴く」という部分である。

この数ヶ月、このコロナ禍では奥歯に物が挟まったような情報発信を見かけることも多く、国や自治体は何か隠していることがあるのでは?と感じられた方も少なくないのではと思う。そんな中、隠された不正を暴き出し、ピンチを乗り越えて大きな権力を打ち倒すという構図は、私たちがここ数ヶ月で感じてきたストレスを代弁している気さえしたものである。こういった痛快さこそ、前回から7年という月日を経ても古くなることなく受け入れられた要因と言える。

BLOGOS編集部

近年の海外ヒットドラマのキーワード「Zeitgeist」

一方、アメリカをはじめとした海外ドラマでは、テレビドラマの黄金時代と言われた2010年代中頃から、HBOなどのケーブル局や、ネットフリックス、アマゾンなどの配信プラットフォームがその中心を担うようになった。例えばネットフリックスの『ストレンジャー・シングス 未知の世界』やHBOの『ゲーム・オブ・スローンズ』の他にも、『13の理由』『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』『トランスペアレント』『ウォッチメン』、また英語圏以外でもドイツの『ダーク』、スペインの『エリート』など、書ききれないほど多くの良作がここ5年ほどの間に誕生した。

Getty Images

こういった海外ドラマでもやはり、魅力的なキャラクターがヒットのための重要な要素の一つであることは変わらないが、加えて欧米では「Zeitgeist」という言葉がヒットのキーワードになることが多い。「時代精神」と訳されるこの言葉の意味するところは、社会的にタイムリーで、議論を促すような意義のある内容ということで、例えばジェンダーや人種間の不平等性が社会問題となっている数年では、特に女性のエンパワメントや、マイノリティのアイデンティティを掘り下げた『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』や『13の理由』などの作品がそれにあたる。

一方で『ハウス・オブ・カード 野望の階段』のようなドラマも大きなヒットを収めたことは、メンツをかけた争いや、不正を装ってライバルを失脚させたりという政治ドラマが、決して日本独自のものではなく、普遍的なものであることを物語っているだろう。アマゾンの『高い城の男』でも、権力をかけた派閥争いや、ナチスの上級将校の妻が旦那の出世のために、上司の妻に取り入ったりというプロットがあり、前回シリーズも含めた『半沢直樹』とも相通ずるものがある。

Getty Images

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