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むしろ分別と言える

大江さん「内閣、世論を侮辱」 日比谷公園で脱原発集会(朝日新聞)

 脱原発を掲げる市民集会「さようなら原発集会」が13日、東京・日比谷公園であり、約6500人(主催者発表)が集まった。大間原発(青森県大間町)の建設が1日に再開されたことへの反対表明が狙い。

 呼びかけ人の一人、作家の大江健三郎さん(77)は「内閣も、次を担おうとしている政党も、明らかに原発を続けていこうとする人たち。世論に対する侮辱だ」と訴え、「そこになかった道を作っていくことが反原発の行進であって、それが私たちの希望を作ることになる」と脱原発へ向けた粘り強い活動を呼びかけた。

 高橋哲哉・東京大学教授は「今こそ経済よりも命と尊厳を優先する国に変えていかなければいけない」と力を込めた。

 中国での反日デモと同じくカジュアル化の傾向が指摘されると同時に、その辺を高く評価する向きもある反原発系の運動ですけれど、これまた反日デモよろしくメディアの注目も着々と低下している感じでしょうか。例えば参加人数など、かつては外部からカウントした数字なども併記されていたものですが、今はもう主催者発表をそのまま垂れ流しているだけです。報道する側の、やる気のなさが伝わりますね。ニュースとしては「賞味期限切れ」の扱いなのかも知れません。

 呼びかけ人の大江健三郎曰く「内閣も、次を担おうとしている政党も、明らかに原発を続けていこうとする人たち」なのだそうです。それはお前の被害妄想じゃないのか?と思わないでもありません。「次」の最有力候補である自民がどう転ぶかはさておき、少なくとも現政権は再稼働に関する判断を行わない云々と明言してきたわけで、要するに責任を電力会社に丸投げしているだけ、どういう結果になろうと電力会社のせいにしてしまおうという姿勢こそはっきりしているものの、原発を続けようとする姿勢が明らかかと言えば、それは違うでしょう。むしろ判断を放棄することで世間の非難から逃れようとしているのですから。

参考、政府は責任を負いません、と枝野は語る

 これに続けて大江健三郎は「世論に対する侮辱だ」とも語ります。世論に阿るという点では、日本の政治は世界の最高水準にあると私は思いますけれど、ただそれが正しいことであるかは微妙なところです。果たして大江にとって、世論はいつだって絶対のものなのでしょうか。世論が死刑制度の続行を望み、世論が雇用破壊と賃金引き下げを望み、世論が周辺国との衝突を望んだとき、政府がそれを無視するのも大江の論理では「世論に対する侮辱だ」と言うことになります。それは愚劣なことですし、あるいは自分の説に都合が良いときだけ世論を引き合いに出し、不都合なときは世論を無視するというのなら、それは卑劣なことです。

 高橋哲哉の発言は大江健三郎以上にアホらしい、私が雇用主であれば能力不足を理由に解雇を検討するレベルです。曰く「経済よりも命と尊厳を優先する国に変えていかなければ」と、これで大学の教授職だというのですから恐れ入ります。いったい何を根拠に、今の日本が経済を優先していると言えるのやら。経済的な豊かさを追求するばかりで精神的な豊かさが蔑ろにされてきた云々は保守系の論客にも好まれる語りですが、まずその固定観念を疑うところから始める必要があるように思います。本当に日本は経済を優先、追求してきたのか、少なくともこの十数年来、日本で働く人は一貫して貧しくなり続けてきたという現実に目を向けるべきです。

参考、本当に日本は経済成長を追ってきたのだろうか?

 どうにも私には日本が経済を優先してきたとは思えない、むしろ構造改革なり政治主導なり諸々の「理想」のために経済を犠牲にしてきたように見えてなりません。労働者から企業への所得移転を進めること、経済格差を広げることを「経済」と呼ぶなら確かに日本は経済優先と言えますが、流石にそれは違うと考えたいです。そして高橋哲哉に限らず、しばしば「経済」は「心」なり「命」なりと背反するものとして語られますけれど、これが正しいなら日本人が貧しくなり続けたこの十数年来は精神的に豊かになった時代でなければならない、命と尊厳を優先する国とやらに変わっていなければならないはずです。しかし現実はいかばかりでしょう?

 確かに経済を慮るなら原発を使い続ける、もう少し増やすという判断が合理的とは言えます。しかし、反対に原発を止める、新設を止めることで「命と尊厳を優先する国」へ向かうかといえば、それは明らかに違うわけです。高橋哲哉の脳内ではいざ知らず、そこには何の必然性もありません。むしろ脱原発によってこそ脅かされる命や尊厳の方が多いとすら言えるのではないでしょうか。経済的な困窮によって命や尊厳を奪われる人は元より、電力不足によって生活を脅かされる人もいれば、節電のための操業シフトに巻き込まれて深夜や休日労働を強いられる人もいる、火力発電をフル稼働させることで二酸化炭素排出量も増えれば世界の化石燃料争奪戦に拍車をかけることにもなる、脱原発がもたらす負の影響は深刻です。

 結局のところ大江健三郎や高橋哲哉は自分の頭の中のユートピアに思いを馳せているだけで、脱原発が何を傷つけているのか、そこから目を背けていると言えます。「私たちの希望を作ることになる」と大江は語りますが、その「私たち」に含まれるのは大江と信仰を同じくする人だけでしょう。そして高橋哲哉のように原発=経済/脱原発=命という、なんら必然性もなければ現実に符合するでもない稚拙な二項対立を、あたかも自明の真理のごとくに考えている人も少なくなさそうですけれど、これもまた高橋と信仰を同じくする人の頭の中でしか成り立たない脳内設定でしかないのです。信じるものを共有している人同士では話が通じるのかも知れませんが、「外」の世界では何の意味もない、耳を傾ける必要性がないと言い切れる代物です。どんなに信者が真剣になったところでハルマゲドンは訪れません。それを無視したところで侮辱でも何でもないでしょう。

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