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「芸能人に会えて羨ましい」放送作家に抱く世間のイメージと現実の違い

「職業は放送作家です」学生時代の友人・知人に伝えると、お世辞を含んでいると思いますが、「凄い」「羨ましい」といった声をよく頂きます。そうした放送作家に抱くイメージと現実との相違を私の経験からお伝えします。将来、放送作家になりたい方は、この記事を読んだうえで本当に目指すべき仕事かどうか。その指針に少しでもなれば幸いです。


皆さんは「放送作家」という職業にどのようなイメージを持っていますか? 私の経験上、よく耳にする放送作家のイメージは「好きな仕事でお金を貰えて羨ましい」「芸能人にたくさん会えて羨ましい」「クリエイティブな仕事で凄い」「服装が自由で羨ましい」「働く時間が自由で羨ましい」「仕事の内容が同じことの繰り返しじゃなさそうで羨ましい」などなど。

このようなイメージに「全然そんなことないよー」と言うと、謙遜しているように思われるかもしれませんが、本当にそのようなことはありません。今回は私の経験をもとに、放送作家の現実とイメージの違いをお伝えします。

仕事をしてがっかり? 憧れの人ほど会わない方がいい説


放送作家は仕事内容や量に応じて、テレビ局やラジオ局などから報酬を貰う歩合制がほとんど。そのため「好きな仕事でお金を貰えて羨ましい」「夢を叶えて凄い」とよく言われますが、現実は大きくかけ離れています。

私が「放送作家になりたい!」と思った10数年前にイメージしていた放送作家の仕事は、面白い企画や面白いセリフを考えるクリエイティビティの高いものでした。もちろんそのような一面はありますが、地味な雑務に追われることも珍しくありません。例えば、テレビのリサーチ業務は一日中ネット検索をすることがメイン。イメージしていた放送作家の姿とはかけ離れていました。

ラジオではどうでしょう。ラジオ好きの方なら、放送作家はパーソナリティと一緒にスタジオへ入り、トークを聞いて笑うというイメージでしょうか。しかし、この役割を担うのは全体の構成を担当するメイン作家。メインとは別に雑務をこなす放送作家、通称サブ作家もいます。パソコンの前に座り、リスナーが送ったメールをひたすら印刷。ディレクターやメイン作家の指示を受けるだけで1日が終了することもよくあります。これも放送作家の立派な仕事。クリエイティブな仕事をするまでの下積みは雑務がほとんどで、これが嫌になり放送作家を諦める人も少なくありません。

放送業界で働くと芸能人を目にする回数は一般の方より当然増えますが、テレビでは見せない裏の顔を垣間見ることもあります。時にはショックを受けることもあるでしょう。打ち合わせを真剣に聞いてない、番組スタッフには丁寧だがマネージャーには言葉遣いが強いなど。憧れた人であればあるほど、些細なことが気になります。個人的な経験としては憧れの芸能人ほど実際に会わない方が良いと思います。

「服装が自由で羨ましい」⇒実は放送作家は「衣」に気を配らないといけない


一般企業に勤め、スーツや制服で仕事をする友人によく言われるのがこれです。確かに決められた制服はありません。私服で様々な現場へ行きます。それなら何でも良いのかと言われると、これが難しいところです。

服装は、提出する企画や仕事での立ち振る舞いと同じように、ディレクターが放送作家を判断する材料になります。私が放送作家の仕事を始めてすぐの頃、先輩に「衣」「食」「住」で作家が最も気を遣う要素は「衣」と教わりました。先輩曰く、仕事が増えるのは服装に気を遣っている人。そして仕事量に比例して服装が小綺麗になるそうです。

他にも放送作家の先輩から「売れている人は全員服装の自己プロデュースが出来ている」と聞きました。自分の出すアイデアや企画、会議の発言といった作家的な要素に加えて、年齢、キャラクターに合わせた服装をどれだけ着こなせるか、そしてキャラクターに合った企画を出せるのか。これが放送作家に求められます。放送作家=裏方ですが、会議や企画に合わせて自分をブランディング、プロデュースすることが必要です。

放送作家は、決められた時間に決められた場所で仕事をすることはありませんが、なぜか時間の融通が利きません。一般企業の場合、上司や取引先、お客さんの都合に合わせて仕事をするのと同様に、放送作家も各テレビ・ラジオ局の都合や、芸能人に合わせて会議や収録の時間が前後します。

コロナ禍になった今ではリモート会議が増えましたが、以前は会議の場所も都内から地方まで様々でした。急な時間変更はもちろん、会議そのものがなくなることもあります。一般企業でも上司の都合で会議がなくなることはありますが、放送作家にとって会議時間の急な変更や休止は非常に不毛な時間です。

早起きして放送局へ行っても、プロデューサーの都合で会議は中止。交通費と時間が無駄になった経験もあります。忙しい曜日も非常に偏ります。私のスケジュールだと、木曜日は早朝から23時まで仕事。イレギュラーな仕事が入ると、日をまたいで仕事をしていることもざらです。他の曜日は朝と夕方に少し仕事をするだけのスケジュールなのに…。

「同じことの繰り返しではない仕事が羨ましい」⇒実は大半が繰り返し


これもよく言われますが、毎日のスケジュールにそれほどの差はありません。毎週同じ内容の課題・宿題を出されることも往々にしてあり、非常にストレスです。毎週同じ課題が出ることは、番組内でクリアできていない課題があることを意味しています。そのため生半可なアイデアは通りません。

記憶に強く残っているのは「毎週新しい形式のクイズを考えてくる」という宿題。最初は様々なアイデアが浮かびますが、何週も同じ宿題が続くとアイデアも枯渇します。本当に何も思いつきません。

やっと浮かんだアイデアも、記憶を辿ると以前のアイデアとほぼ同じということもあります。数時間考えて浮かんだアイデアも、すでに別の番組で放送されていると考え直し。クイズ番組の問題作成やリサーチは約3年半担当しましたが、色々な意味で記憶に残る仕事となりました。

それでも私が放送作家を続ける理由

放送作家の仕事について綴ってきましたが、この記事を最後まで読むと「なんで放送作家を続けているのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。その理由はシンプルで、番組に貢献できた時の快感が忘れられないためです。

地味な雑務、急な時間変更にもめげずに参加した会議。このような仕事の積み重ねが番組のパーツになると喜びを覚えます。私が書いた台本に出演者がノッてトークをしている時の快感はたまりません。リサーチしたネタがテレビで使われること。ラジオで自分が選んだメールをパーソナリティが読んで番組が盛り上がることもたまらない喜びです。

以前、芸人のネタを作っていた時に、自分の書いたボケを芸人がそのまま使っていた時の快感が私の放送作家の出発点だったのかもしれません。すべての放送作家が、私と同じポイントに喜びを覚えるわけではありませんが、私が放送作家を続ける理由はこれに尽きます。

武村圭佑
1986年生まれ 奈良県出身。
『ダウンタウンのごっつええ感じ』など数多くの番組を手掛けた放送作家が講師を務める『かわら長介放送作家魁塾』を卒業し、放送作家の道へ。大阪吉本のイベント構成を経て2014年拠点を東京に移す。現在はテレビ、ラジオの構成や芸人とのネタ作成を中心に活動中。

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