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中国は「トランプ落選」を望んでいるか――混迷のアメリカ大統領選挙

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  • トランプ大統領は民主党の大統領候補バイデン氏が中国寄りで、「バイデンの勝利は中国の勝利」と主張する
  • これに対して、バイデンは「トランプこそ中国にあしらわれてきた」と批判し、トランプとは異なるアプローチでの中国包囲網を目指している
  • バイデンの国際主義的な戦略は、トランプとは別の意味で、中国に対する大きな圧力になるとみられる

 中国への対応は11月に迫ったアメリカ大統領選挙の一つの主要テーマになっており、トランプ大統領は民主党の大統領候補バイデン氏を「中国寄り」と批判するが、当の中国は「バイデン当選」に警戒感を隠していない。

「中国語を勉強させられる」

 デカップリング(中国との全面的な断絶)を強調するトランプ大統領は8月11日、支持者の前で「バイデンが当選したら、アメリカ人が中国語を学ばなければならなくなる」と発言。民主党の大統領候補となったバイデン氏が中国寄りで、中国に甘いと批判した

 実際、バイデンにはこれまで中国を擁護する姿勢が目立った。

 1979年にアメリカが中国と国交を樹立した当時、若手の上院議員だったバイデンは真っ先に中国を訪問した議員団の一員だった。それ以来、中国の要人に広い人脈をもち、米中貿易戦争が激化した2019年5月には「中国は競争相手ではない」と強調している。

 トランプのバイデン批判はこれらを念頭に置いたもので、「自分しか中国に対抗できない」というアピールに他ならない。

中国はバイデン当選を望んでいるか

 では、中国にとっては「バイデン当選」が望ましいだろうのか。

 そうとは限らない。アメリカでこれまでになく反中感情が高まるなか、バイデンは従来のスタンスを転換したからだ。

 民主党の大統領候補指名を受諾した際の演説で、バイデンは習近平国家主席を「悪党」と呼んだ一方、トランプ政権がコロナ蔓延に関して中国に説明責任を果たさせることができなかったと批判した。また、民主党のCMはトランプが習近平に「遊ばれ」、貿易戦争に「敗れた」とこき下ろしている。

 要するに、バイデンは「自分ならもっとうまく中国を封じ込め、アメリカの利益を守れる」と主張しているのだ。

 状況に応じてスタンスを変えるのは政治家の常で、その「変節」の良し悪しはここでの問題ではない。むしろここで重要なことは、バイデンの軌道修正が中国にとって、トランプとはまた異なる圧力になることだ。

 実際、中国政府系の英字メディア、グローバル・タイムズは8月末、「バイデンの中国政策で劇的に変化するか?」と題した社説を掲載したが、ここではバイデンとトランプのどちらがより脅威とは述べていないものの、少なくともバイデンが当選した場合でも中国にとっては楽観できないと示唆している。

チーム・バイデンの国際主義とは

 中国も警戒するバイデンの戦略とは、どのようなものか。

 ごく少数の取り巻きが決定権をほぼ独占するトランプ陣営と異なり、バイデン陣営には2000人以上の外交・安全保障の専門家が集まり、20以上のテーマごとのチームに編成されている。

 チーム・バイデンの方針は、一言でいうと「国際主義」と呼べる。つまり、他の国がついてこず、たとえアメリカ一国でも、とにかく突っ込んで相手に衝撃を与えるトランプ流とは対照的に、多くの国を巻き込むというものだ。

 これは中国政策についてもうかがえる。

 例えば、バイデンはトランプが決定した世界保健機関(WHO)脱退を取り消すと主張している。WHOに限らず、中国は国際機関への拠出金を増やすことで国際的な発言力を強めてきた。トランプ大統領はこれを批判し、国際機関との関係を縮小させてきたわけだが、バイデン陣営はこれとは逆に国際機関へのかかわりを強めることで中国の足元を揺るがすことを目指している。

 この方針は、トランプ流とは異なるものの、中国にとって油断できないものである点で変わらない。

貿易摩擦の「引き継ぎ」

 それでは、チーム・バイデンの中国政策を、貿易を中心にもう少し詳しくみていこう。

 バイデンは中国との貿易戦争がアメリカ経済をむしろ疲弊させていると主張している。関税引き上げの応酬が製造業のコストを引き上げただけでなく、最大の農産物市場である中国にアクセスできなくしたためだ。

 そのため、バイデン政権が発足すれば、中国への高い関税は引き下げられると多くのエコノミストはみている。ただし、無条件に関税が引き下げられるかは疑わしい。

 米中関係に詳しいGFMアセット・マネジメントの投資アドバイザー、ターリク・デニソンはバイデン陣営がトランプ大統領の政策をむしろ利用するとみている。つまり、バイデン政権が誕生した場合、アメリカは関税の引き下げを交渉カードに用いるというのだ。

 だとすると、外国企業の先端技術に関する情報を半ば強制的に開示させる、国内市場への外資参入を制限するといった貿易慣行を改めるように中国に求める圧力は、バイデンが当選した場合でも続くとみてよい。

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