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「日本にはまだ磨いてない玉がたくさんある」コロナが暴いた日本の“実態” 危機をチャンスに変えるには… ロバート・フェルドマン×ちきりん 社会人の学び直しが日本を強くする

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〈コロナとの闘いによって世界経済は大打撃を受けている。今やっておくべきこととは?〉

コロナで分かれた日本人の働き方

ロバート 新型コロナウイルスは収束しませんが、日本経済や日本人の働き方に、さまざまな変化を及ぼしていますね。

ちきりん リモートワークが普及して無駄な通勤が減ったり、用もないのに「とりあえずご挨拶に」などと会いに行く、みたいな生産性の低い仕事が減ったのはよかったと思います。

ロバート 富士通は、社員の出勤率を最大25%に抑えて、国内のオフィススペースを3年で半減させるそうです。このような企業は増えています。

ちきりん パソコンに向かう仕事は、ネットとセキュリティーさえ確保できれば、自宅でもできますからね。

ロバート 会社に「少し家賃を払って」とお願いする人もいるでしょう。

ちきりん 家賃は無理でも、光熱費を補助する会社はでてきています。昼間のエアコン代は、オフィスに行って働くなら要らないお金なので。

ロバート 通勤定期代を支給しなくてすみますしね。

ちきりん ただ日本の家は狭いので、急に在宅勤務を命じられても手狭で困った、という人も多いと思います。

ロバート リモートワークができない仕事もあります。たとえば理髪店は、感染防止のため席に間を空けています。単純計算すれば、席が半分になったら単価を2倍にしないと、売り上げは維持できません。私はちょっと高い4100円の理髪店に行ってますけれども、一回8000円も払うなら、頻度を減らすしかないでしょう。さまざまな物価体系に、これからコロナの影響が出てくると思います。

「多極」集中型への転換が地方再生の秘訣

ちきりん レストランや映画館、劇場も、今後はギュウギュウ詰めにはできません。利益率が高い業種ではないので、それでは利益がでない。

 エンタメに関しては、感染収束後もオンラインとオフラインのチケットを同時発売するのが当たり前になるでしょう。座席数が減った分、オンラインチケットの売り上げで埋め合わせるという形で。リモートワークやオンラインエンタメが定着したら、東京に住んだり、何度も来たりしなくてもすむし。

ロバート 東京に住まなくても、いろいろなことができるから、地方再生にもつながるでしょう。

ちきりん 実は私、地方の再生は、東京一極集中と結びつけるべきではないと思っています。すべての町や村に人が増えることを目指すのではなく、福岡や名古屋、仙台といった地方の中核都市が東京と対抗できる選択肢になるのを目指すべき。一極集中を多極集中型に変えることが、地方再生の秘訣だと思います。

ロバート 1960年ぐらいまで、企業の本社は東京と大阪の2カ所にあったんです。それがジェット機と新幹線の登場で、東京だけになりました。しかし、人が直接動いてビジネスをする時代はまもなく終わりますから、地方は頑張り時です。

残されたままの年金問題

ちきりん 地方都市は、東京とは違う独自の文化を持つ必要があります。ニューヨークが金融や芸術の街なのに対して、列車で数時間の距離にあるボストンはアカデミック。ハーバードにMITという大学を街のアイデンティティとして差別化する、という都市戦略ですよね。

 大阪と福岡はわりと頑張ってる気がしますけども、そうした戦略が、新潟や仙台、札幌にも必要だと感じます。

ロバート 国に目を移すと、コロナ対策でたくさんお金を使ったので、財政の健全化がさらに遠のいてしまいました。老後の資金が2000万円足りない、という年金の問題も残されたままです。すべてを解決する策は、ひとつしかありません。国民みんなが、もっと長く働くことです。

 私の結論は、2040年までに、企業の退職年齢を段階的に76歳へ引き上げる。引退から寿命がくるまで、どのくらい残っているかを計算した結果です。

ちきりん 余命から逆算して、年金支給開始年齢を76歳にするということですね。

ロバート そうです。大人たちは、若い人の負担になってはいけません。

ちきりん 働く期間が長くなると、「楽しく働ける仕事に就いていない人」はつらくなりそう。

ロバート ちきりんさんの考えでは、退職年齢はどうすればいいですか。

ちきりん 私は、年齢による退職を企業が一律に決めるのは、もうやめたほうがいいと思っています。年をとればとるほど、人は多様になります。経済的な成功の度合いも違ってくるし、ずっと働き続けたい人と、あまり働きたくない人に分かれてきます。なので「この年齢だからこうしなさい」と一律に決めるのは、無理がある。

ロバート 退職する年齢を自分で決める、ということですね。

日本は「自己決定しないまま人生を終えられる国」

ちきりん 欧米では、大学卒業後に少し遊んでから就職するのもありだし、働いている途中で一回辞めて勉強するのもありだし、自分の人生をどう組み立てるか、それぞれが自己決定しますよね。

 でも日本は、何も自己決定しないまま人生を終えられる国なんです。進学とか就職とか、すべて年齢によって国がレールを敷いています。そのせいで、自分の人生がうまくいかなかったら国が補償すべきだ、みたいな感覚があるんです。

 もし「いつ就職してもいいし、いつ退職してもいい。何歳まで働くかは自分で決めなさい」と言われたら、自分はどうしたいか、誰もが考え始めるはずです。

 会社と個人が話し合って、好きな時期にバラバラに退職する制度になったら、自分の人生に対する日本人の自己決定意識が高まると思うんですよね。

ロバート 本当は「老後の資金を誰が払うんですか。自立しなさい」と政界、労組が言うべきなのに、誰も言いません。

ちきりん 選挙がありますからね。

年金は社会保障ではない

ロバート 年金制度についても同じです。私は公的年金に100%賛成ではありませんが、自分が何歳まで健康で生きるか、世の中がどう変わるかわからない以上、必要だと思っています。人間は、目の前のことしか考えない動物ですから。

ちきりん 年金は老後保障のための福祉といったイメージがありますが、実際はアメリカの401kと同じで、個人の貯金に近い制度です。給料が高い人ほど、払う年金保険料は高く、もらえる額も大きい。反対に若い頃のお給料が安い人は保険料も低い代わり、もらえる額も少ない。

 大企業で定年まで勤めたら、けっこうな額の年金がもらえます。そういう人は現役時代の貯金と退職金もあるので、実は年金なしで暮らせる人も多いんです。一方、ずっと非正規で働いてきて貯金も退職金もない人は、年金も少ない。

 つまり今の年金は社会保障ではなく、事実上、個人の資産形成プログラムなんです。そこを理解せず、国が個人を助けてくれる社会福祉制度だと誤解している人が多いのも問題です。

「運」が大きい新卒一括採用

ロバート 新卒一括採用は日本独自のシステムですが、運に左右されますね。たまたまバブル期だった人はラッキーですけれども、突然コロナのパンデミックで不景気になって、採用人数が絞られてしまう年もあります。その年の新卒はみんな非正規雇用で低賃金のまま働き、老後にもらえる年金も少ないのでは、あまりに不公平ですよ。

ちきりん 新卒一括採用は弊害も大きな制度ですよね。だからこそたまたま新卒就職時が不景気で、その後もギリギリの生活が続き、年金を払えてこなかった人にこそ給付を増やさないといけない。でもそうすると、たくさん払ってきた人は不公平だと感じるでしょう。この点についてはどう思われますか。

ロバート 私は基本的に、ベーシックインカムに賛成なんです。「非正規の人たちは貯蓄しなかったのがいけないんだ」と、正規の人たちが言うのはおかしい。

ちきりん あと、非正規で働く人の貧困や、老後の生活資金不足について考えると、少なくとも都市部での最大の問題は、住まいにかかる費用が高すぎることです。家賃を払うにしろ、マイホームを買うにしろ家が高すぎる。

 高齢になって孤独でお金がない人も、みな一人ずつ6畳のアパートに住んで、5万円とか7万円といった家賃を生活保護や年金から払っています。これは壮大な無駄だと思います。

ロバート 家賃や住宅ローンの負担は、大きいですからね。

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