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【台風19号水害】「次の首相は被災者に手厚い政治を」 ようやく進む郡山の家屋解体 公費での解体は建物のみ、自己負担が家計圧迫

昨秋の台風19号に伴う「10・12水害」から来月で1年。甚大な被害が出た福島県郡山市では公費での家屋解体がようやく進められている。しかし、公費解体の対象となるのは建物のみ。完全にさら地にするために塀や樹木を撤去する費用は全て自己負担で、被災者たちの家計に重くのしかかる。安倍晋三首相の辞意を受け、間もなく次の自民党総裁が決まる。新しい政権はこれからも弱者を切り捨てるのか。被災地では「被災者に手厚い政治を」との声があがっている。

【「年度内には解体完了」】

「この辺りも転居なさる方が増えましたね。あそこも壊したし、あそこもこれから解体する予定。家の裏もさら地になりました。今年はどうなるやら…。被害が無いよう祈るしか無いですね」

 JR東北本線・安積永盛駅からほど近い福島県郡山市田村町徳定地区。家庭菜園の一角で女性は言った。実ったばかりのトマトを差し出しながら、「ほら、あそこも」と周囲のさら地を指差した。解体が終わった跡地には、不動産業者の看板が立っている。

 郡山市3R推進課によると、昨秋の台風水害に伴う公費での家屋解体は5月29日で申請が締め切られている。締め切りまでに約500件の申請があり、「新型コロナウイルス感染拡大の影響でペースダウンした事もあり正確な見通しは立っていないが、年度内(2021年3月末まで)には完了させるべく取り組んでいる。

 業者の都合もあるし、アスベストが多く発生する事業所など特殊な事例もあるので、どうしても時間がかかってしまう」という。

 徳定地区の男性は、公費解体を待ちきれずに〝自主解体〟した。それでもようやく解体が終わり、自宅新築の真っ最中。昨年10月の水害で自宅は235センチも浸水したが、行政の判定は「半壊」。再び阿武隈川が氾濫しても浸水しないように、新築中の自宅は起訴の部分を2メートル近くかさ上げした。

「取り壊したのは早かったよ。わが(自分)でやったから。〝自主解体〟ってやつだな。解体費用?それは後から支給されたけど、書類だけで何枚も出さなくちゃいけなくて大変だったよ。それにね、実際にかかった費用が全額戻って来るわけじゃ無いからね」

 男性は解体から新築まで合計すると1500万円近くの出費になった。しかし、市から支給された解体費用は300万円ほど。見舞金や保険金があるにしても、残りの多くは自己負担だ。それが水害被災者の現実だった。

解体後、新築途中の新しい自宅は、新たな浸水を防ぐために基礎部分が2メートルほどかさ上げされた=福島県郡山市田村町徳定

 そもそも、「浸水した自宅を市が公費で解体してくれる」とは言っても、さら地になるまで全てを面倒見てくれるわけでは無い。

「公費解体の対象となるのは、基本的には建物のみです。どうしても重機を入れられないなどやむを得ない事情がある場合は塀や樹木も一緒に取り除きますが、原則として建物以外は自己負担になるという事は了承いただいている。あまり範囲を広げてしまうと費用の問題も生じるので…」と郡山市3R推進課の担当者。

 売却を視野に完全にさら地にする場合には、かなりの自己負担となるのだ。
 「今日は井戸を埋めるので神主さんに来ていただいたんです」

 すっかりさら地になった自宅の前で、50代の女性は言った。これまで大雨でも床上浸水する事は無かったが、昨秋の台風19号では130センチほど室内が浸水した。被災を機に転居したが、転居先の家賃に加えて解体費用もあり、家計への負担は大きいという。

「建物そのものは市を通して解体してもらいましたが、後は全部、自己負担です。樹木の伐採に井戸、塀の撤去と結局、何百万とかかるんですよ。保険?確かに保険には加入していたけれど、とても足りないです」

 そして、女性の怒りは政治に向けられた。

「本当に、この国の政治は冷たいですよね。私たちのような被災者には。ここ、ちゃんと発信してくださいね」
 アメリカから武器を〝爆買い〟するなど、金の使い方は果たして、弱者に軸足を置いているだろうか。先の男性もこう言った。

「安倍さんが辞めて新しい首相が決まるけど、もう少しこういう所に手厚い政治だと良いよね」

多くのアパートで1階部分が浸水。発災から来月で1年になるが、改修工事は緒についたばかりだ

【「誰が首相になっても…」】

 日大工学部の近くで小売店を経営する女性は「浸水のショックで店を閉めようと思ったんだけど、お客さんが『いつ再開するの?』と言ってくれるから、もう一度頑張る事にしたの」と話した。

 1階は180センチも浸水した。店内はもちろん、奥の住居も水に浸かった。避難先から帰宅すると、水の力で持ち上げられた畳がひっくり返っていた。日大生に部屋を貸していたが「2階は無事だったんだけど、1階の学生さんにはかわいそうな事をした」と女性。

 浸水した室内の乾燥に3カ月を要し、改修工事が終わったのが5月末。店舗は6月11日に再開した。

「公的支援?とてもじゃないけど足りないわよ。1000万円以上かかったんだから。火災保険があるだろうって思われるかもしれないけど、意外と入っていない人も多いのよ。保険に加入していても、水害までカバーしていないケースも多い。だからみんな苦労しているのよ」

 女性はそう言った。新しい政権には言いたい事は山ほどあるが「じゃあ、新しく首相になった人が私たちのような被災者のためにきちんとやってくれるの?って思っちゃう。誰がなってもね…」とも。それ以上、何も口にしなかった。

 間もなく新しい自民党総裁が誕生する。国会での首班指名を経て、次の内閣が発足。10月にも総選挙が行われているとの声が多くなってきた。

 新しく自民党総裁、そして首相の座に就く御方に被災地からの声は届いているだろうか。福島には大地震や大津波、原発事故後の課題も横たわっている。台風水害からの復旧に苦しんでいるのは福島だけでは無い。多くの人が「弱者に優しい政治」を待ち望んでいる。

(了)

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