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【読書感想】国家の怠慢

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国家の怠慢 (新潮新書)

  • 作者:高橋 洋一,原 英史
  • 発売日: 2020/08/19
  • メディア: 新書

Kindle版もあります。



国家の怠慢(新潮新書)

  • 作者:高橋洋一,原英史
  • 発売日: 2020/08/19
  • メディア: Kindle版

すべては怠慢のツケである―医療は崩壊寸前にまで追い込まれ、オンラインでの診療・授業は機能せず、政府の給付金さえスムーズに届かない。新型コロナウイルスは、日本の社会システムの不備を残酷なまでに炙り出した。それは、政治、行政、マスコミの不作為がもたらした当然の結果でもあった。これまで多くの改革を成し遂げてきた財務省と経産省出身の二人のエキスパートが、問題の核心を徹底的に論じ合う。

 1955年生まれで財務省OBの高橋洋一さんと、1966年生まれで経済産業省出身の原英史さんの二人が、「なぜ、このコロナ禍での政府の対応はスムースにいかないのか。そもそも、国はこの事態にどう対応すべきなのか」について語り合った対談本です(実際のやりとりは、対面ではなく、オンラインで行われたそうです)。

 僕は、医療従事者のひとりとして、「もうちょっとどうにかならないのか」「なんでも現場任せにして、危険な目にあわせているにもかかわらず、国は『自粛要請』という名目で、積極的に休業補償をしようともせず、責任逃ればっかりしている」という憤りを感じていたのです。拍手するなら金をくれ、と、昔流行ったドラマの台詞のほうなことを思っていました。

 その一方で、こういう事態は、政府や官僚たちにとっても、まさに「想定外」であり、いろんなことがうまくやれないのも、致し方ないのかな、けっこう大変なんだろうな、と同情もしていたのです。

 この本を読むと、現場で問題に対処している人たちの苦悩が伝わってくるというか、外野はけっこう思いつきでものを言っているだけなんだよなあ、と考えずにはいられないのです。

「PCR検査は全国民にしたほうがいいのか?」という問いに対して。

高橋洋一:新型コロナウイルスに関して、たとえばテレビ朝日がよくやっているんですけど、PCR検査をガンガンやるべしという論調があります。コロナ関連の政府の会議の一部委員の中にも、PCR検査をどんどんやろうという意見があるようです。この種の話はいろいろと手を変え品を変え出てきます。たとえば、九州の理論物理学の先生が唱えたもので、ちゃんと数式があって全部公表しているというものなのですが、PCR検査を今の4倍やるとコロナがあっという間に終息するという話なんです。ただ、それはPCR検査を今の4倍すぐにできるかという議論になるんですよ。その話はモデル上、すぐに4倍にしなければ無理なんです。でも、検査能力を4倍にするうちに感染者は広がってしまう(笑)。

一気に隔離できて、検査能力が4倍になれば終息するという論理なんですけど、それができないからどうするかという話をしているのに何を言っているんだろう。そんなことができるわけがないことは、すぐにわかるはずなんですけどねえ。式をきちんと見ると、感染の初期段階との重大な前提があるにもかかわらず、それをマスコミは報じていない。初期以外でも実務を考慮するとできないのですが。

 さらにPCR検査を一気にやるという話もありますが、今は1日最大2万件くらいしかできません。たとえそれが10万件できたとしても、全国民にやるのに何日かかると思っているんでしょう。1000日かかるんですよ。検査をするために移動したら、ウイルスのほうがはるかに早く広がりますよ。

原英史:全国民検査論は、未来の感染症対策の構想としては大いに検討すべきですが、今の検査の精度やキャパシティを前提に、現実の政策論としては暴論でしょう。

高橋:確かに検査が瞬時にできて、無制限にできるんだったら全国民がやったほうがいいですよ。でも、PCR検査して隔離してもウイルスの伝播のほうが早いんですよ。PCR検査をするのは、たとえばお医者さんのところに患者が来て、コロナに感染しているかどうか判断できなかったら困りますよね。そのレベルですよ。お医者さんに行く人はPCR検査をしたほうがいいでしょう。

 「全国民に検査するには、1日10万件でも1000日かかる」というのを読みながら、僕は、柳田理科雄先生の『空想科学読本』のネタみたいな話だなあ、と思ったのです。

 そんな検査を症状もない人にも片っ端からやっていったら、それで感染を拡大させることにもなるでしょう。

 高橋さんと原さんは、日本の行政に携わる人やマスメディア関係者には、統計学などの理系の学問の専門家がほとんどいないことを嘆いておられます。外国では、経済学や数学などの専門家が、キャリアの一部として政治家をサポートするのが当たり前になっているのに、と。

 今回の新型コロナ禍というのは、そういう意味では、「専門家の意見をきちんと聞いて判断すること」の必要性を、多くの人に考えさせるきっかけになったとも言えそうです。

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