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新たな自治創出の契機に

「仮の町」構想

東京電力福島第1原発事故に伴い、町ぐるみで避難している福島県双葉郡の町村による「仮の町」構想がいよいよ動き始めた。先月末、避難側と受け入れ側双方の市町村と国、福島県による4者協議が初めて開かれたもので、これを受けて県も、いわき市など県内3市に「仮の町」の災害公営住宅(復興住宅)500戸を先行整備する方針を明らかにした。

住宅用地の確保など課題は山積するが、避難者の意向を最大限に尊重し、理想的な「町づくり」をめざしてほしい。福島県の避難者は、震災から1年7カ月が過ぎた今も全国に16万人を数える。このうち原発周辺の富岡、大熊、飯舘などの7町村は全住民が避難し、役場も移転している。

「仮の町」は、これら帰還困難区域の住民が元の町に戻れるまでの間、ある程度のまとまりを維持して暮らせるようにする“もう一つの生活拠点”である。

構想を実現する上で、まずクリアしなければならない問題は、住宅や役場を一カ所にまとめる「集約型」にするか、住宅を複数箇所に分ける「分散型」にするかだ。

町の絆の維持を優先するには集約型がいいだろうが、避難者が地域に溶け込みやすいのは分散型のようにも思える。正邪をめぐる議論ではないだけに判断は難しいが、知恵を絞り、能う限り双方納得の結論を導き出してほしい。

「二重登録」が取り沙汰されている住民登録の扱いも難しいテーマだ。選挙権をはじめとする市民権の保障など地方自治の根幹に関わる問題だけに、行政機構だけで決断するわけにはいくまい。

行政サービスなどをめぐって双方の住民の間にしこりが生じたり、避難者が居候さながらに肩身の狭い思いをすることがないようにするためにも、法整備も視野に入れた政治的な決断が必要だろう。

もう一つ、見落としてはならないのは、「仮の町」をめぐる議論の向こうに戦後自治システムの綻びがくっきりと浮かび上がっている事実だ。

早い話、「仮の町」とは、人と土地の一体化を大前提とする現行の地方自治の概念自体への挑戦でもある。人口流動の激しい現代社会にあって、土地を絶対視する自治システムがそれほどに有効なのか。一つの自治体の中に別の自治体を置くという前例のない“実験”は、そんな本質的な問いをも投げ掛けている。

自治体と住民の関係を捉え直し、新たな自治の制度設計に踏み出す時がきていることを強調しておきたい。

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