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安倍氏の今後は「実現できなかった理想を説き続ける」役割か

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佐藤優氏が語る「安倍氏の今後の影響力」とは

 長期政権を築いた安倍晋三首相が退陣を発表し、次期総理がどんな政策を打ち出すのか、日本国民が注目している。

【写真】赤い羽根を付けた60歳の小泉首相(当時)と横に座る髪が真っ黒な安倍晋三氏

「安倍辞任」を見越していたかのようなタイミングで共著『長期政権のあと』を上梓したばかりの元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏と、政治学者・山口二郎氏(法政大学教授)が緊急対談。今後の日本はどうなるのか? そして安倍氏は今後、どんな役割を果たすのか?

山口:長期政権にとって不可欠なのが「経済と国民生活の向上」ですが、コロナ危機で失業や倒産が出てくる中で、サービス業を中心に急回復するシナリオは描けない。まさに貧乏くじ状態というか、日銀の尻を叩きながら支出を続けるしかないでしょう。経済政策に関して新機軸を打ち出すことは極めて難しい。

佐藤:私も同じ認識です。観光にしても飲食にしても交通にしても、構造的にコロナ以前には戻りませんから、今後、ボトムからの経済危機が来ると思う。その影響が時差を経て大企業に及ぶと、政府の対策はもう効かず、いわば血流が止まって多臓器疾患になる可能性がある。こうした事態に直面せざるを得なくなると、安倍政権型の株価至上主義では対処できません。

山口:国債発行残高を見ても、これ以上の借金は非常に厳しい。そうなると予算編成が大変になり、日銀が直接国債を買うような、とんでもない状況で予算編成をすることになるかもしれません。

佐藤:それはもう、戦時経済です。

山口:それと安倍さんにはなく、他の長期政権を築いた首相にはあったものが、レガシーです。具体的には、吉田首相のサンフランシスコ講和条約、佐藤首相の沖縄返還、中曽根首相の国鉄分割民営化、小泉首相の郵政民営化です。

 ところが安倍さんの場合、憲法改正、北方領土返還、拉致問題の解決などの重要な政策課題に取り組んだものの、いずれも達成できないまま辞任してしまった。レガシーを遺せないまま、課題だけが次の政権に引き継がれた。

佐藤:安倍さんの辞任会見で興味深かったのは、憲法改正ができなかった理由を「国民世論が盛り上がらなかった」と言った点です。これを裏返すと、国民の支持がないと認識していることになる。おそらく、「次の政権は無理しないでいい」というメッセージだと思います。

 その代わり、安倍さん個人としては、“永久に未完の憲法改正”というかたちで改憲の旗を振り続けることが、自身が政治的影響力を残すためにも重要でしょう。

山口:客観的に見て、憲法改正が実現する条件はほとんどないと思います。が、安倍さん自身は実現できなかった理想を説き続ける、ある種、宗教家みたいな役割をこれから演じていくのかなと思います。

佐藤:次の政権にとって、安倍さんを支持した日本会議に代表される右派グループは、属人的に安倍さんのカリスマ性に依拠しています。それ以外の誰がなろうと、安倍さんに対するような熱烈な支持はない。裏返すと、「安倍ちゃんならいいか」と見過ごされてきた中国や韓国との政治的妥協について、今後は厳しい視線が向けられる。右派からの風に次の政権は晒されることになるということです。

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