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「逮捕されれば人生が狂う」「決して安全とは言えない」若者を中心に増加を続ける大麻事案、経験者が訴え

 10日、大麻取締法違反の疑いで送検された伊勢谷友介容疑者(44)。自宅からは乾燥大麻およそ20gと、吸引のために使っていたとみられる巻紙およそ500枚が押収されており、常習的に使用していた可能性が疑われている。

・【映像】摘発者の6割が20代以下 依存経験者に聞く「お酒で酔うような感覚で使う人が多い」

 近年、大麻による逮捕者は過去最多を更新し続けており、去年の年齢別の比率で見ると、20代以下が約6割を占めている。警察庁によれば、検挙した631人のうち、実に78.9%が「大麻に危険性を感じていない」と答えたという。

 依存症からの回復をサポートしている沖縄ダルク施設長・佐藤和哉氏は、薬物事件をめぐる報道のあり方について、「少しずつ変わってきているとは思うが、使用したということに注目し過ぎていると感じる。何がそうさせたのかに注目をした方がいい。大麻が安全かと言われれば、やはり安全ではないと思う。逮捕されれば人生が狂う」と指摘する。

■「自分の生き方を変えなければやめられない」

 佐藤氏自身、大麻を使用していた経験を持つ。きかけは21歳の時、肩を負傷して野球ができなくなったこと。先輩の勧めでシンナー、そして大麻に手を出したという。

 「それまでの人生は野球が占めていたので、急に心に穴が開いた。物足りなさや、それを埋めなきゃいけないという焦りの中で、シンナー、大麻に出会ってしまった。大麻を吸うと、多幸感というか“平和な感じ”になり、音楽などがとても心地良くなった。その点はお酒に近いといえるかもしれない。また吸いたくなるというのはタバコに近い感覚だが、それよりも強かった。ただ、体調によっては血の気が引くほど具合が悪くなったり、過食、被害妄想もあった。それでもはっきり言って、あまり危険性を感じてはいなかった」。

 ほどなくして覚せい剤の使用も始まった。25歳の時には逮捕、服役するが、出所すると大麻、覚せい剤を再び使用してしまう。「薬物を使っているグループにいると、最後は覚せい剤にたどり着くことが多い。僕も先輩に勧められたが、嫌われてしまうんじゃないか、つまらないやつだと思われるんじゃないかという思いもあって断りきれなかった」。

 苦しさから自殺未遂を繰り返す中、27歳の時に両親が北海道ダルクに相談。そして沖縄ダルクへ入所、リハビリが始まった。病院勤務などを経て、去年からは施設長として支援活動に従事している。

 「悪い友達がいるから薬を使ってしまうし、売人がどこにいるのかも知っているので、引っ越すことで環境を変えようとした。しかし、それは単に原因を外に求めていただけ。結局、自分の意思ではやめられず、友達や家族、仕事も失った。そういうサイクルに入ると、生きていること自体が辛くなる。僕も自殺未遂を3回したが、死にきれなかった。見かねた両親がダルクに相談に行ったことで変わった。結局は自分の生き方を変えなければいけないということ、仲間たちと一緒に回復の道を目指さなければ、薬物と離れるのは難しいということを学んだ」。

■「覚せい剤やヘロインなどに比べてマシだというだけ」

 MDMA、脱法ドラッグなどとともに、副作用や、依存性がより強いドラッグへの入り口と「ゲートウェイドラッグ」とも呼ばれる大麻。結果的に覚せい剤の使用に進んでしまった佐藤氏も「いわゆる“大麻愛好家”の人たちが他のドラッグにいくケースはあまり多くはないと思うが、“入り口”として大麻を吸う人は多い。一度“違法なものを使用している”という状態になると、“他の薬物もやってみようかな”という気持ちになりやすいと思う。

その意味ではゲートウェイという表現は正しい。インターネットによって入手しやすくなっているし、大麻を紹介する動画もあるので、目にする機会も増えている。加えて各国で合法化の動きがあることで、心理的ハードルが下がっているのだと思う。沖縄でも高校生が逮捕されたし、大学生など若者からの相談が増えている実感がある」と話す。

 世界では鎮痛目的などで医療用大麻を認める国が増え始め、アメリカでは嗜好用大麻が合法化された州もある。しかし厚生労働省はインターネットなどで誤った知識が広がっていると指摘している。

 大麻を研究している近畿大学薬学部の川畑篤史教授は「医療用大麻も存在するが、はっきり言って、既存の医薬品を超える効果はない。大麻の成分を抽出し、より強い薬を医薬品として開発するということはありえるが、大麻そのものを医薬品として使うのはあまり有用な方法ではないと考えている。覚せい剤やヘロインなどに比べてマシだというだけであって、大麻が無害ということはないと思う」と指摘する。

 「短期的な作用はもちろん、長期的に、大量に使用することで、脳への影響も非常に大きい。個人レベルで短期的に使用する問題のみに焦点を当てれば、合法化しようという議論があることも理解できなくはない。しかし社会の中で使用者が増えていくことによる社会、経済全体への影響は無視できないものがある。大麻を合法化した国というのは、すでに抑えきれないほど広がってしまった国だ。それ以上に強い薬物を規制することに力を注がなければならなくなったので、いわば“仕方がなく”という側面が大きいと見ている。日本はそのような状態になるべきではない」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

▶映像:摘発者の6割が20代以下 依存経験者に聞く「お酒で酔うような感覚で使う人が多い」

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