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苦境の百貨店の切り札となるか、タンスに眠る百貨店商品券

 2020年1月、山形県の老舗百貨店(株)大沼(TSR企業コード:210002948、山形市)が破産した。徳島県では今年8月、「そごう徳島店」が閉店。百貨店のない都道府県は2県に広がった。馴染みの百貨店の閉店も続いている。いま、百貨店が発行する「商品券」が行き場を失いつつある。

知らぬ間に紙切れになる可能性

「百貨店全国共通商品券」などの「商品券」は、基本的に有効期限はない。タンスに眠ったままの商品券も、発行した百貨店が生きている限り使用できる。

 だが、発行した百貨店が、倒産や廃業すると話は別だ。倒産した大沼の「商品券」は還付手続きが終了した。8月末閉店の福島県の中合が発行した自社「商品券」はすでに使えず、「全国百貨店共通商品券」も11月末で使えなくなる。救済措置を知らないと紙切れに変わる。

 全国で使われず眠っている百貨店「商品券」は2,000億円以上に達するもようだ。

「商品券」の販売は10年で半減

 全国の百貨店など約500店舗で使用できる「全国百貨店共通商品券」は、百貨店ごとに発行している。

「全国百貨店共通商品券」以外にも、自社のみで使える「商品券」やギフトカード、積み立て式の「友の会」など、さまざまな顧客サービスが展開されている。

 日本百貨店協会が公表する「商品券」の売上高では、この10年間で2010年の2,707億円をピークに、年々減少をたどり、2019年は1,302億円まで落ち込んだ。

「商品券」の未使用残高は公表されていない。日本資金決済業協会の「発行事業実態調査統計」によると、43百貨店が回答した商品券やギフトカードを含む未使用残高は、2018年度で2,459億円に達する。商品券だけでも2,000億円は未使用とみられる。

業績悪化が喧伝される百貨店だが、使われない「商品券」は高水準を持続しており、その利用促進が業界全体の課題でもある。

複雑な「商品券」の会計処理

 一般的な「商品券」の会計処理は、発券時は負債に計上し、商品と引き換えたタイミングで売上を計上する。また、一定期間の未使用「商品券」を収入や受入益に計上し、後に利用された分を損失や事前に引当金を積むケースもある。

 百貨店最大手の(株)三越伊勢丹ホールディングス(TSR企業コード:297339362、新宿区)の2020年3月期連結決算では、流動負債に「商品券」を773億7,400万円、取り崩し後の利用に備えた商品券回収損引当金は327億9,900万円を計上している。

百貨店や協会は、「百貨店全国共通商品券」の利用促進として、百貨店以外にも系列企業のデパートやスーパー、商業施設で利用できるように対象先を拡大してきた。

「商品券」は手数料以外では利用されて初めて対価を得る。だが、対象を広げるとグループ外の売上流出を懸念する百貨店関係者も多いという。顧客が買いたい物を買えないことも、利用が進まない背景にある。

「商品券」発行者が倒産や廃業すると

 万が一、「全国百貨店共通商品券」を発行した百貨店が破産開始決定を受けるなど倒産したり廃業すると、その「商品券」は全国どこの百貨店でも使えなくなる。

「商品券」が利用できなくなると、資金決済に関する法律に基づき、払い戻しや発行保証金の還付手続きが始まる。

 消費者保護のため、発行した百貨店は「商品券」の前受金の保全措置を講じている。1,000万円以上の未使用残高があれば、残高の2分の1以上を法務局に供託している。

 多くの百貨店は、金融機関や信託会社、割賦保証会社などと、発行保証金保全契約を結ぶ。現金で供託している百貨店もある。

 破産した大沼の「商品券」還付は、発行保証金の額から費用を引いた2億8,364万円が配当対象で、権利を申し出た9,967人に対し、1億8,791万円が還付された。

 還付率は100%配当となったが、大沼の「商品券」を持っていることを忘れている人もいたとみられる。

 福島県の中合が発行した「全国百貨店共通商品券」は、11月末まで全国の百貨店で利用できるが、12月1日から使えなくなる。

 中合によれば、払い戻し手続きに移行しても全額払い戻しできる見通しという。ただ、手続きが面倒なら、中合の商品券を他の百貨店で早めに利用すべきだろう。

 日本百貨店協会によると、「商品券」が利用できなくなった百貨店は、過去10社(百貨店)あったが、申請すればほぼ100%の還付配当を実現したという。

新型コロナで「商品券」相場に異変

 使用されない「商品券」の一部は、金券ショップなどに持ち込まれる。百貨店の「商品券」の買取相場は、百貨店により違いはあるが、大きな上下動はなかった。しかし、緊急事態宣言の発令後、臨時休業や時短営業、インバウンド需要消失で異変が起きた。

 横浜市内で金券買取店を営む経営者は、「百貨店の商品券相場は、緊急事態宣言中に10%も下落した。6月以降、徐々に回復し、持込み数もほぼ元に戻ったが、一時は30%ぐらい減少した」と語る。

 安定価格の代表格だった百貨店の「商品券」も、ひとたび異変に見舞われるとたちまち値崩れを起こした。これが百貨店への消費者の信頼感かも知れない。

 かつて憧れの対象だった百貨店は、時代の流れの中で苦境に立たされている。新型コロナで経営が悪化した百貨店は、「商品券」の供託資金が負担になる恐れもある。

 将来の百貨店の倒産や廃業に備え、「商品券」の煩雑な還付手続きの改定や、現在は60日である申出期間の延長など「商品券」の安心感を高める対策も必要だ。

 百貨店の応援には眠ったままの「商品券」利用が一役買う。カードレス時代に入っても、商品券の価値は変わらない。「商品券」の利用促進に向け、購買意欲を刺激する品揃えこそ、百貨店に求められている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年9月14日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

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