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法テラス(日本司法支援センター)の報酬基準と日弁連

 先の日弁連定期総会では、法テラスに関連して会員からの意見が多数出て少々、議論になっていました。

 問題となったのはこの宣言です。

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う法的課題や人権問題に積極的に取り組む宣言

「我が国における司法システムが適正かつ迅速に機能するためには、個々の弁護士、法律事務所及び全国の弁護士会が業務継続を行うのみでは足りず、裁判所、検察庁、日本司法支援センター、児童相談所及びその他の関係機関(以下「関係機関」という。)との連携が不可欠である。」

 日本司法支援センター(法テラス)の報酬基準は、従来の報酬基準から比べればかなり低額になっています。

 この点では弁護士の中で争いがないでしょう。

 但し、問題なのは、その額をもって対価として見合わないほどの低額になっているのか、という点です。

 法テラス利用には利用者の収入基準があり、収入が高ければ利用できません。弁護士費用を自身で用立てることが可能という前提があります。

 立憲民主党などから提案された改正案は、この収入基準を引き上げ、より多くの層での利用を可能にしようというものです。

 そうなってくると、今まで法テラスを利用できない層も利用できることになり、弁護士報酬基準が法テラス基準にまで下がることになります。

 それを日弁連執行部も一緒になってやっているのではないか、そうなると前述したとおり、弁護士費用そのものが下がることにもなり、売上にも直結することになるということで、日弁連執行部の対応が一部の会員からは問題視されていました。

 私自身の見解を述べれば、物価が下落している時代の流れでもあり、また弁護士業務の一部は定型化しているものもあることから、法テラス基準が一概に低いとまでは言えないのではないかと思います。

 法テラスが利用できない層であっても利用できた方がいいと思う場合も少なくなく、利用層の拡大も必要なことと思います。

 加えてコロナにより日本経済そのものが低迷し、この業界だけが所得が下がらない、ということでは国民からの理解は得られません。

 従って、日弁連執行部提案に反対とは言えません。

2020年9月5日撮影

 それでも法テラス基準に問題がないかといえばそうではありません。

 札幌などでは法テラス基準でもやっていけますが、物価が全く違う東京で法テラス基準ということになると結構、厳しいのではないかと思います。

 法テラス基準は全国一律であり、物価水準を反映していないからです。

 債務整理(破産、再生、任意整理など)の弁護士会の運営する相談センターでも弁護士報酬基準は異なっており、東京の方が高い設定でした。

 もちろん、法テラスの基準を地域で変えるということ自体が困難なので、現実的な解決方法はありません。

 また法テラスの報酬は、訴額、訴訟か交渉かなどにより定額となっているため、事件の難易度による報酬の差がほとんどないという問題があります。

 少なくとも法テラス基準は低いところに基準を置いているわけですから、難易度によって報酬を加算することがあって然るべきです。もちろん、そうなると依頼者に取り分も減ることはありますが、それは事件が難の部類に入るということであれば、相応の負担については理解して頂きたいところです。

 法テラス自体にも問題がないわけではなく、法務省の監督下にあること自体は、弁護士の職務の独立性との関係では問題を抱えたままです。

 コロナ後のあるべき法テラスのあり方が検討されなければならないのは当然のことです。

日本司法支援センター(法テラス)の運用の変更がもたらしたもの

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