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私が1年前に「ポスト安倍は菅氏で決まり」と断言できていた理由

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現在、「ポスト安倍」は菅義偉官房長官が最有力と目されている。国際エコノミストの今井澂氏はこのことを1年前から予想していた。今井氏は「2019年5月、菅官房長官が訪米していることが、その予想の根拠だった」という——。

※本稿は、今井 澂『2020の危機勝つ株・負ける株』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

菅義偉官房長官の隣でジェスチャーをする安倍晋三首相(左)=2020年5月4日、首相官邸
菅義偉官房長官の隣でジェスチャーをする安倍晋三首相(左)=2020年5月4日、首相官邸 - 写真=AFP/時事通信フォト

「ポスト安倍」はとっくの昔に決まっていた

安倍晋三首相は2019年7月の参院選に合わせ衆院を解散し、総選挙に打って出ると見られていました。憲法改正の発議に向け、自民党、日本維新の会など改憲勢力の糾合を目指すことが大きな目的です。

改憲は、いわば安倍政権の最大の課題です。安倍首相は、総裁任期が切れる2021年9月まで首相を務めることができますが、あと2年足らずですから(編集部註:昨秋時点)、時間的に余裕があるとはいえません。一気に改憲発議に持っていくには盤石な態勢が必要で、そのために解散総選挙は避けて通れない道と考えられていました。

ところが、W選挙は結局のところ見送られました。それはそれでよしとしても、安倍政権にとって参院選の選挙結果は惨憺たるものでした。

自民党は改選議席から9議席減らし、単独過半数も失いました。目指していたはずの改憲勢力伸長も果たすことができず、自民党と公明党の与党、改憲に積極的な日本維新の会計81議席で、非改選も含めた改憲勢力は、改憲発議に必要な3分の2(164議席)を割ることになりました。

この結果はある程度見えていたことで、誤算というわけではありません。

むしろ、これは安倍首相の戦略の転換といえます。どうあっても目的を達成するために、ある意味で迂回作戦とでもいうべき方法をとろうとしているように私の目には映ります。

どういうことか。

「禅譲」ではないだろうかと、私は考えています。少しさかのぼって説明しましょう。

昨年5月、菅義偉官房長官が訪米した「意味」

きっかけは参院選の2カ月前、新緑まぶしい5月の出来事でした。菅義偉官房長官が、ペンス副大統領と会談するため訪米を行いました。

9日にはペンス副大統領と会談し、10日にはニューヨーク国連本部で拉致問題担当相としてシンポジウムに出席、日本政府の取り組みを報告しました。危機管理を担当し、ふだんは東京から離れることのない官房長官の訪米は、異例中の異例と騒がれました。

外務省でこの件の調整が行われ始めたのは、4月初旬のころと推察されます。覚えておいでだと思いますが、2019年5月というのは北朝鮮問題に対する日本の姿勢があわただしく変化した時期です。

1年以上前に「次期首相候補」の存在感を国民に示した安倍首相

発端は、5月4日に行われた北朝鮮のミサイル発射実験でした。

6日には安倍晋三首相がトランプ米大統領と電話協議を行い、条件をつけずに日朝首脳会談実現を目指す考えを伝えました。その後、安倍首相は記者会見を行い、北朝鮮の金正恩委員長との会談について「私自身が条件をつけずに向き合わなければならない」と強調、これまで示してきた「拉致問題の解決に資する会談をしなければならない」という方針を転換しました。強硬姿勢を貫いていた安倍首相が、金正恩委員長に向かってボールを投げたのです。

その翌7日の官房長官の記者会見では、政府方針を転換させたのかという記者の確認に対して、菅長官は「(拉致問題について)政府の総力を挙げて最大限の努力を続ける」と強調しました。そこには、拉致問題の解決と金正恩委員長との会談を切り離すという政府の意志が込められていました。

そして9日を迎え、菅長官の訪米となるわけですが、北朝鮮はこの日にもふたたびミサイル発射実験を行いました。何かの符丁であるかのような、じつに不思議なミサイル発射でした。

菅長官の訪米は、もちろん安倍首相の指示で実現したのですが、こちらも複雑な狙いを持つ訪米だったと見られます。

「令和おじさん」をアメリカにもお披露目した

というのは、菅長官はポスト安倍のナンバーワン候補です。それまでまったくのダークホースだった菅長官をポスト安倍の1人に挙げたのは、自民党の二階俊博幹事長です。これは、4月発売の月刊誌「文藝春秋」掲載のインタビューでのことでした。

菅長官は、安倍長期政権を支える手腕に定評があるのはもちろんですが、新元号「令和」発表で注目を集めたという経緯もあります。何かが動いているなという感触は、このときすでにわかる人にはわかっていました。

思い起こせば、小渕恵三官房長官(竹下内閣)は「平成」の新元号を発表し、それをしたためた色紙を国民に示しました。そのため「平成おじさん」という呼び名で国民に親しまれ、のちに首相に上り詰めました。

今井 澂『2020の危機勝つ株・負ける株』(フォレスト出版)
今井 澂『2020の危機勝つ株・負ける株』(フォレスト出版)

このたびの天皇即位では、菅長官が新元号の色紙を示し、マスコミは示し合わせたかのように「令和おじさん」と親しみを込めて呼びました。

「令和おじさん」の役どころを務めたのは、たまたま官房長官という役職に就いていたからではありますが、もちろん次期首相候補の存在感を国民に示す含みもあったことでしょう。いまの世の中はすべてが宣伝の結果ですから、天皇の退位・即位という一大イベントを利用しない政権はありません。

その菅長官がわざわざ海を渡るというのですから、アメリカもお見通しで、「次期首相最右翼のお出ましだ」とピンときたことでしょう。だから、ペンス副大統領との会談が当たり前のように実現し、ポンぺオ国務長官も予定をキャンセルしてまで菅長官との会談に駆けつけてきたのです。

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