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「何をデジタル化するのか、誰がトップを務めるのかが問題だ」“ポスト安倍”が言及する「デジタル庁」「データ庁」は機能するのか

 8日に告示された自民党総裁選。最有力候補とみられる菅官房長官が「複数の役所に分かれている政策を強力に進める体制として新設したいと思う」として打ち出した“デジタル庁”に注目が集まっている。

・【映像】"デジタル庁"目的は省庁再編? 元経産官僚に聞く

 これに対し、石破元幹事長も「デジタル政治・行政」、岸田政調会長は「DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進委員会」「データ庁」に言及。「FAXで集めたPCR検査結果を手入力で集計」「定額給付金の受付を手作業で照合」「マイナンバーカードの暗証番号確認がオンライン未対応」など、世界に遅れをとる日本の行政の改革に意欲を示している。

■「何をデジタル化するのか」「誰がトップを務めるかが問題だ」

 元経済官僚で政策アナリストの石川和男氏は「IT領域が各省庁に分かれているのは確かなので、それらを横串にしたり、一緒にしたりする発想はいい。同様の議論の中で作られた組織として、消費者庁がある。それまで複数の省庁に業務が分かれていて、どこの誰に問い合わせていいのかもわからなかったからだ。問題は、省でも庁でも委員会でも、組織を作った後で何をやるかだ。それについては3候補が具体的に何を考えているかが全くわからない。我々に身近な役所や役場も含め、行政の仕事は大きく3つか4つに分けられる。まずは何といっても許認可。次にお金を配ること(補助金)と、お金を取ること(税)、そして統計だ。そのうち、どの部分をデジタル化しようという話なのか」と話す。

 また、官僚としての経験から、「組織を作れば進むというわけではない。誰がやるかだ」とも指摘する。実際、これまでの閣僚の顔ぶれを振り返ると、竹本IT政策担当相や桜田サイバーセキュリティ担当相などの認識や発言が非難を浴びたことは記憶に新しい。

 「これまでも色々いらっしゃったが、やはり誰も言うことを聞かないと思う。菅官房長官が次期総理・総裁として有力視されているが、確かに菅さんのように官僚人事を掌握するような、ものすごくおっかない人が“やれ”と言えば、デジタル庁があろうがなかろうが進む。新総理がちゃんとやるか、担当大臣を置くのであれば怖い人、例えば二階幹事長や安倍総理のような強い人と、その横にちゃんとした知見のある人を置かなければならないと思う」。

■“確実な実現のためには目標設定と法制化を”

 その上で石川氏は「デジタル庁」をアナログな役所仕事をデジタル化するための一時的な推進機関と位置づけ、まずデジタル化が不可能な仕事を各省庁に抽出させるプロセスが必要だと指摘。そして法律を作成、施行されたら2年程度で解散させるとよいと話す。

 「もちろん警察や消防の現場の仕事をデジタル化することはできない。また、保健所の報告がFAXだという話が話題になったが、これも保健所の人が遅れているというわけではない。保健所の人は医療のプロであれば良く、IT担当の人と予算ををつけてやればいいということだ。そしてデジタル化による書類の削減ができれば、それに伴う働き方改革が進みコスト削減にも繋がる、モリカケの議事録問題のようなことも起きにくくなる。そういう効果が分かるようにしないとないと、“デジタル庁を作ります”だけでは国民は関心を持たないと思う」。

 「また、新内閣がいつまでやるかどうかわからない以上、きちんと法律を作っておくことで、政権交代が起きようが強力なエンジンになる。加えて、役所はいわば“軍隊”なので、例えば“ハンコをやめろ”とトップが言えばやめる。問題は役所が“ハンコをやめろ”と言っても聞かない民間企業があるということ。ここは法律で強く規制しなくてはいけない。そういうことも含め、できないものを出させ、できないもの以外はいつまでにやる、何割を目指すという目標を作り、法律にするということだ」。

■佐々木俊尚氏「霞が関には“大手に頼まなきゃいけない”みたいな発想がある」

 ウツワ代表のハヤカワ五味氏は「最近、厚生労働省がWebマーケターを募集していたが、IT界隈では条件が良くないので集まらないでしょう、と言われている。もちろん誰がトップを務めるかも重要だが、作業にあたる要員と、その評価が適正になされるのかが心配だ」と話す。

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「2000年代前半から、IT関連を担当している総務省と経済産業省を再編し“情報通信省”を作れという議論があったし、現状では内閣官房のIT総合戦略本部が政策立案をしているが、実行するのは総務省、あるいは経産省になっている。しかし例えば経産省が電子カルテの実証実験をやって良かったと言い出すと、厚労省や医師会が反対するという具合に、他の官庁に潰されてきた歴史がある。デジタル省とか情報通信省を作るのであれば、他の官庁に命令できるだけの権限を与えないと意味がないと思う」と指摘。

 「会社名を出すとまずいが、ITゼネコンと呼ばれる、古臭いことやっている大手企業としか付き合っていない。だから確定申告のためのe-Taxという仕組みを作っても、“Internet Explorerにしか対応していません”というようなことになる。知人の経産省の課長は小さなITベンチャーに実証実験をやらせようとしたら、ある新聞社の記者に“あそこから金をもらっているのか?”などと言われたという。要するに、仕事は大手とやるのが当たり前で、どこの馬の骨かわからないベンチャーに金を出すのはけしからん、というような構造になっている。霞が関をクラウド化するとか、そんな話ではレベルが低すぎる。政治行政のインフラを構築するという発想がない限りうまくいかないんじゃないか」。

 その上で佐々木氏は、東京都の副知事にヤフー前社長の宮坂学氏が就任、新型コロナウイルス対策で活動していたことに触れ、「宮坂さんは当然エキスパートだし、若くて先進的な技術を持っているプログラマーのコミュニティとも繋がっているので、行政との橋渡しができている。新しいIT担当大臣にも、そのような役割を果たして欲しい」と注文を付けた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

▶映像:"デジタル庁"目的は省庁再編? 元経産官僚に聞く

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