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ガードン卿と山中博士の受賞対象論文から考察するノーベル賞

アルファブロガーのChikirinさんのツイートに以下のようなものがあって、我が意を得たり、と思いました。
メディアには「日本からノーベル賞受賞者が出たら、これとこれを報道すればいい」みたいな “型”がある。1,生い立ち、2.挫折経験、3.技術の説明、4.将来どう役立つかのイメージ、みたいなね。もうちょっとゼロから何を報道すべきか、自分のアタマで考えてほしいと思ったりもするよね。


だから、という訳でもありませんが(笑)、あまり報道されないようなことを拙ブログに載せておこうと思っています。
なお、拙ブログの文章は正式な論説というよりも、いつかそういうものを書くことがあったら、の叩き台と思っていますし、どなたかが私のブログにヒントを得て、もっとしっかりしたものを書かれてもまったく構いません。

本日はタイトルのとおり、ガードン卿と山中博士の受賞対象論文を比較します。
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ノーベル財団のHPに掲載されている受賞内容の説明に挙げられていたKey publicationsは、上の表になります。
ガードン卿のものは単著、つまり、自分一人だけが著者というものであり、タイトルの「オタマジャクシの小腸上皮細胞由来の核の発生的能力」からは、そのdevelopmental capacityが結局どうであったのかが不明です。
この論文が書かれた1960年代頃までは、「A study of ....」的なタイトルもまだ多かったのですが、最近では「もっとも短いエッセンス」がタイトルとなっています。
山中論文の方は、高橋さんとの共著ですが、その後の論文では著者の数はずっと多くなっています。
また、タイトルは「規定因子によるマウス胚および成体線維芽細胞からの多能性幹細胞の誘導」となっていて、ガードン論文よりも「何が得られたか」という結果がはっきりしていますね。

ガードン論文はJEEMという、英国発生生物学会のオフィシャル・ジャーナルへの発表であり(現在はDevelopmentというタイトルに変更されています)、当時はB4の大きさでした。
ページ数は18頁と比較的多い方ですが、山中論文では変形A4の13頁ですが、このほかにSupplemental Informationが、確か20頁分くらい付いていたはずです(すみません、今、出先で元論文確認できていませんが、そのくらいでした)。

ガードン卿のこのJEEMの論文の前に、実は1958年のNature誌に、単一の核を元にしてカエルをつくった、という内容の論文が出ており、その後、核移植のテクニックを磨き、2種のカエルを用いることなども利用した上で、さらに上記の受賞対象論文とセットとなる論文が同じ1962年に3本出ています(1つ前のエントリーで使ったものを含みます)。

Multiple genetically identical frogs.
GURDON JB.
J Hered. 1962 Jan-Feb;53:5-9. No abstract available.

Adult frogs derived from the nuclei of single somatic cells.
GURDON JB.
Dev Biol. 1962 Apr;4:256-73. No abstract available.

The transplantation of nuclei between two species of Xenopus.
GURDON JB.
Dev Biol. 1962 Aug;5:68-83. No abstract available.

今、Nature ArticleやCell誌に掲載しようと思ったら、これらの3本もまとめて1本になるところだと思われます。
でも、大事なことは、このようにしつこく「同じことを繰り返す」(ガードン卿の場合は、カエルの胚を用いた「核移植」)ことができる資質が、良い研究を行うのに必要であるということだと思います。
「同じことを繰り返す」といっても、ルーチンに行うという意味ではなく、少しずつ創意工夫を重ねて完成度を高めていくことが大切であり、こういう意味で科学者が行う営みは芸術家と似ているなぁと思うのです。
ともかく、年間4本論文を書いた1962年は、ガードン卿にとって大事な年であり、ちょうどその年に生まれた山中さんが、関係する研究でともにノーベル賞となったのはドラマティックですね。

現行の初等中等教育や高等教育、過度の流動性を高めるための施策は、必ずしもノーベル賞受賞者を輩出するのには向いていないと思いますが、一方で、より科学が発展した今、専門性を高めた人材が各界で活躍する必要もあると考えられます。
つまり、万に一人でも(例えばノーベル賞受賞のような)高みを目指す一方、それを支える多様な研究人材も輩出しなければならないのが現代です。

ガードン卿の最初の論文が1958年で、25歳のときですが、やはり天才的な仕事というのは若いうちにひらめくものかもしれないと思いつつ、山中さんの受賞対象論文が40代のものであることも興味深いことですね。

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