記事

「自助・共助・公助」〜「共倒れするまで助け合え」という呪い - 雨宮処凛

1/2

 「自助・共助・公助」

 自民党総裁選を控えた菅義偉官房長官がこのところ強調している言葉だ。

 「まず自分でできることはまず自分でやる。自分でできなくなったらまずは家族とか地域で支えてもらう。そしてそれでもダメであればそれは必ず国が責任を持って守ってくれる。そうした信頼のある国づくりというものを行なっていきたいと思います」

 9月2日に出演したニュース番組での発言だ。それ以外の場でも「自助・共助・公助」と書かれたフリップを持ち、この言葉をアピールしている。

 さて、貧困の現場で16年間活動している私なりにこの言葉を通訳すると、

 「自助」とは「自己責任で自分でなんとかしろ」
 「共助」とは、「一家心中するまで家族で助け合え」「共倒れするまで地域で助け合え」
 「公助」は、「何もかも失わないと公的福祉は機能しないからやっぱり自己責任でなんとかしろ」

 という意味である。

 この言葉について書きたいことは山ほどあって、どこから書いていいのかわからない。

 が、公助ということで言えば、第二次安倍政権以前から社会保障費は削減され、年金、医療、介護、生活保護などが引き下げられたり自己負担が増やされたりしてきた。そのような社会保障費削減は、長い時間をかけてまずは共助を支える「家族」を痛めつけてきた。一億総中流と言われた時代は多くの家族がセーフティネットの役割を果たせたが、「家族」「親」「実家」がセーフティネットになり得なくなったのだ。だからこそ、2007年頃から「ネットカフェ難民」という形で比較的若い世代のホームレス化が始まったのだろう。

 さて、それでは「共助」を支える「地域」はどうか。自民党は「地方創生」などとブチ上げているが、なぜそのような言葉を強調し、地方創生担当大臣のポストまで作らなければいけないかというと、それほどに地方が疲弊しているからだ。

 私の地元は北海道の小さな市だが、実家に帰るたびに駅前は空洞化し、すでに商店街だった頃の面影もなく、高齢化と人口減少がすごいスピードで進んでいることをまざまざと感じる。そのような地方の衰退の原因のひとつとしてよく挙げられるのが大店法(大規模小売店舗法)。1974年に中小小売店の保護などを目的として施行、一定程度の面積を超える出店を届け出制にすることで規制したものだが、90年代、規制は緩和され、郊外に巨大なショッピングモールが建設されていく。

 この流れは日本に住むある年齢以上の人であれば、変化をまさに目のあたりにしてきたことだろう。そんなふうに規制緩和によって地方の衰退を進めてきた当人たちが今、「地方創生」とか言っていること自体が大いなる茶番にしか思えないのは私だけではないはずだ。ちなみに政府は地方のシャッター通り対策として、空き店舗への課税強化という方針を打ち出してもいた。なんだか年貢に苦しむ農民にさらに重い年貢を課す悪い殿様みたいな話ではないか。

 このように、家族や地域の余力を奪ってきたのがこの「失われた30年」の政治だと思う。それを奪う政治を先頭で進めてきた政党の人間が今、堂々と「共助」を持ち出すことに対して「いや、それ脆弱化させたの誰?」と突っ込みたくなるのだ。

 ここまで読んで、「なんでそんなにキレてるのかわからない」という人もいるだろう。

 それでは「共助」という言葉の実害の例を上げよう。

あわせて読みたい

「菅義偉」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    橋下氏 任命拒否の教授らに苦言

    橋下徹

  2. 2

    田原氏 野党は安易な反対やめよ

    たかまつなな

  3. 3

    倉持由香 初の裸エプロンに感激

    倉持由香

  4. 4

    コロナ禍も国内工場は異常な強さ

    PRESIDENT Online

  5. 5

    iPhone12かProか...売り場で苦悩

    常見陽平

  6. 6

    数字を捏造 都構想反対派の欺瞞

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  7. 7

    ベテランは業界にしがみつくな

    PRESIDENT Online

  8. 8

    のん巡る判決 文春はこう考える

    文春オンライン

  9. 9

    社民党分裂 背景に立民の左傾化

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  10. 10

    世界も注目 鬼滅映画の大ヒット

    木走正水(きばしりまさみず)

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。