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【読書感想】吉田豪の巨匠ハンター

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吉田豪の巨匠ハンター

吉田豪の巨匠ハンター

  • 作者:吉田 豪
  • 発売日: 2020/03/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

日本が誇るマンガ&アニメ界の巨匠たちを、あのプロインタビュアーがロック・オン!!

聞き出せ秘話! 残せよ歴史の裏のウラ! 人気プロインタビュアー吉田豪の今度のターゲットはあのマンガ、あのアニメ、あの名曲を生み出した伝説の巨匠たちだ! 世界中にひろまる日本のマンガ&アニメ。その創成期から勃興期に関わった斯界の巨匠たち9人に吉田豪が迫る。『あしたのジョー』『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』から『この世界の片隅に』まで。必読のインタビュー集が誕生!

《収録インタビューイ》

富野由悠季(アニメーション監督/機動戦士ガンダムの生みの親。『海のトリトン』『伝説巨神イデオン』など)

渡辺宙明(作曲家/アニメ&特撮ソングの巨匠。『人造人間キカイダー』『マジンガーZ』など)

松本零士(マンガ家/70年代アニメブームの立役者。『銀河鉄道999』『男おいどん』など)

ささきいさお(歌手/アニソン歌手の第一人者。『宇宙戦艦ヤマト』『科学忍者隊ガッチャマン』など)

辻真先(脚本家/超人的な執筆量でテレビアニメの創成期をささえた大家。『鉄腕アトム』『デビルマン』など)

安彦良和(アニメーター/マンガ家/『機動戦士ガンダム』『アリオン』など)

杉井ギサブロー(アニメーション監督/現役最年長監督。『鉄腕アトム』『タッチ』『銀河鉄道の夜』など)

丸山正雄(プロデューサー/1000本以上のアニメ制作にかかわった業界のレジェンド。『あしたのジョー』『幻魔大戦』など)

押井守(アニメーション監督/現代日本を代表するアニメ作家のひとり。『うる星やつら』『攻殻機動隊』など)

 プロインタビュアー・吉田豪さんといえば、アイドルやサブカルの有名人、マンガ家に大物芸能人にプロレスラーなど、さまざまなジャンルの人たちに、本人すら忘れているような下調べをもとにインタビューし、意外な(あるいは、これまで表に出ていなかった)面を引き出す達人なわけですが、今回の『巨匠ハンター』は、アニメ界の「巨匠」たちをターゲットにしたものです。
 「巨匠」だけに、かなり高齢の方が多くて、登場する9人のなかで、いちばん若い押井守さんが1951年生まれ、最も高齢の渡辺宙明さんが1925年生まれとなっています。

 ある意味、いろんなしがらみから解放される年齢でもあるわけで(関係者はほとんど亡くなっている、という場合もありますし)、けっこう率直にしゃべっておられるな、この年齢まで現役でやっている人たちというのは、記憶も語り口もしっかりしているものなのだな、ということに感心しながら読みました。
 インタビューのなかに、手塚治虫先生の話がしばしば出てくるのですが、もうひとり、『宇宙戦艦ヤマト』のプロデューサーだった西崎義展さんのことを語る人が多かったのが印象的でした。

 手塚先生はわかるのですが、西崎さんという人は、アニメ業界人にとっては、すごくインパクトがあったようなのです。

 ささきいさおさんの回より。

──最初、『宇宙戦艦ヤマト』の主題歌は子門真人さんがレコーディングまで済ませてたんですよね。

ささきいさお:そうそう。子門だったけどキーが高かったから移調したんですよ。ほら、プロデューザーが声が低いのが好きだから:

──西崎義展さんが「これは違う」と。

ささき:そうそう。自分で歌うのにこのキーのほうがいい、みたいなことで(笑)。

──そういう事だったんですか!「これじゃ高すぎて俺が歌えないだろ!」と。

ささき:そうそうそう(笑)。なんか知らないけどキーを下げて。だからオケ取り直したり大変だったらしいんですけど。

 安彦良和さんは、西崎義展さんについて、こう語っておられます。

──オタクといえば、富野由悠季さんも安彦さんも「アニメは大人になったら卒業すべきだ」みたいな考え方の人ですよね。アニメを作る側がそう思っていたのって、アニメの仕事をやってて申し訳ないって気持ちが常にあったってことなんですか?

安彦良和:王道を歩んでない自覚があったからじゃないですか? 彼(富野)も、心ならずもアニメをやっているっていうタイプですよね。だから宮崎(駿)さんとか高畑(勲)さんとかだったら、そんなに言わないと思うんですよ。そこが違う。

──安彦さんにも当然そういう……。

安彦:ええ、「恥ずかしながらこんなことをやってる」って意識が常にあったから。

──それってなくなるものなんですか?

安彦:いまは……開き直ってるね。人に誇れるとは思ってないけども、「恥ずかしながらえ」っていつまでもイジケていてもしょうがないから。単なる開き直りですよね。よく言うのは『宇宙戦艦ヤマト』のとき、西崎(義展)とかああいういい大人が大金を動かしてトチ狂ってるのを見て、これも大人の仕事なんだと思った。

──西崎さんとは、安藤さんが虫プロにいた時代から接点ってあったんですか?

安彦:ないない。噂は聞いてたけど。

──変わった人が来たぞ、ぐらいの。

安彦:変わったというか困ったというか恐ろしいというか、ろくでもない人が来た。簡単に言うとヤクザが入ってきたという。

──ダハハハハ! なるほど(笑)。

安彦:そういう聞こえ方ですよ。金を持ったヤクザが来て乗っ取られたというね。

 1970年代はじめの生まれで、あの宮崎勤事件でのアニメファンへの大バッシングも経験してきた僕には、この本で巨匠たちが語っている、「アニメーションの仕事をしていることへのコンプレックス」もわかるような気がします。今は、アニメが市民権を得ていて、有名芸能人が「私、アニメ好きのオタクなんです」なんて言っても、かえって好感度が上がるくらいだし、アニメを作りたくてアニメ業界に入ってきている人ばかりなので、「なんでアニメをつくっていることに、この人たちはプライドを持っていないのだろう?」と思われるかもしれないけれど。

 アニメという「閉じていた世界」で、いかにも芸能界っぽい西崎義展さんという派手な人が「参入」し、ビジネスとしてアニメをやるようになった、というのは、当時の人たちには、大きな衝撃だったようなのです。
 
 そして、歴史というのは、後世の影響力がある人の発言で、書き換えられてしまうものなのだな、と感じたところも少なからずありました。
 これも安彦良和さんの回です。

安彦:わりと最近言われてるんじゃないですか、「日本のアニメをダメにしたのは手塚治虫だ」的な。それはいくら宮崎(駿)さんの言葉とはいえ違いますよっていうのはあるよね。

──最初に手塚治虫が安くアニメを作っちゃったのが全部悪いんだ、みたいな。

安彦:うん、ちょっとそれっぽく聞こえるけどそうじゃないですよ。そこから、じゃあ安かろう悪かろうで、そのなかで何ができるかって試行錯誤が始まったわけで。だいたい当時のギャラってそんなに安くないです。僕が入る前、60年代のアニメ業界は結構いい金でみなさんやってたんですよ。その名残は虫プロが潰れるまであったし。

──虫プロは手塚先生のおかげなのか待遇も比較的ちゃんとしていたみたいですよね。

安彦:ええ、ちゃんと人並みの給料は払ってたし、残業代も払ってたし、みんないい車に乗ってたしね。虫プロが1973年に潰れて、それから世の中的にも不景気になって、アニメーターに余分な金を払ってたらえらいことになるぜっていうんで、どんどんお金が細っていくんですよ。それについて手塚さんに直接の責任はないですよね。みんなして手塚さんのスネかじっていたんです。「会社に金ない。手塚さんのところにあるんじゃないの?」みたいな。それでみんな甘えてた。で、手塚さんも実際、どっかからお金出すしね。「ほら出たじゃないか」みたいなね。あの人も被害者ですよ。

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