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【114カ月目の汚染水はいま】「遠い海域での海洋放出が望ましい」 福島市長が市議会で異例の反論 「『福島』と付かない場所」求めるもロンドン条約違反の指摘

原発事故後に大量発生している〝汚染水〟について、福島県福島市の木幡浩市長が8日午前の市議会本会議で「『福島』という名のつかない場所での海洋放出が妥当」と答弁。改めて陸上保管に反対する姿勢を示した。山田裕市議(日本共産党福島市議会議員団)の一般質問に対し、通常の答弁だけでなく議長の許可を得て「反論」までする力の入れよう。「保管タンクは、私たちが1日も早く搬出したいフレコンバッグのようなものだ」などと陸上保管を否定したが、一方で「遠い海域」での海洋投棄はロンドン条約で禁じられている。実現性はかなり低いと言わざるを得ない。

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【「地上保管は復興を阻害」】

 「続いて反論を述べます。議員は原発敷地外での保管などとおっしゃいましたが、県内で保管を続けていく事による風評、不安についてどのようにお考えでしょうか」

 木幡市長は、一般質問の中で「国や東電は原発敷地外での保管や別施設への移送など海洋放出以外の方法を検討するべき」と陸上保管を訴えた山田裕市議(日本共産党福島市議会議員団)に対し、答弁とは別に反論した。

 「(原発敷地外保管では)その地域においてどんどんタンクを保管する場所が増えていく事になってしまいます。ようやく戻れるようになった双葉町や大熊町の人たち、さらには復興の街づくりを進めている富岡町や楢葉町の人たちに不安と恐怖を増大させ、故郷を取り戻す取り組みを阻害する事になります。私は、今回の災害で最大の被害を受け、さらに中間貯蔵施設の用地を県民のために提供してくれているこれら地域にこれ以上の負担を押し付けるような事は同じ県民として出来ませんし、するべきではないと考えます。この2つの観点から、議員はどのようにお考えか。お聞かせいただきたい」

 山田市議は「地上タンクに保管しておけば管理は出来る。安易な海洋放出ではなくて地上保管が必要。本市も(海洋放出に)反対の声をあげるべき」と迫ったが、木幡市長は風評被害や「地元の負担」に終始した。

 「政府の言う期限にこだわるわけではありませんが、いたずらに保管が長引き、福島だけが負うリスクが増えていくという事態は避けなければならないと考えています。長期地上保管を避けるためにも福島以外での海洋放出が現実的であると考えております。言うは易く、トリチウムの除去がいつ出来るのか。本当に可能なのか。そういう事を我々は考えないと、ひたすらこちらだけが我慢する事になります。議員は先ほど地元の負担について一切言及されませんでしたが、同じ県民としてそういった事も考えて対応しなければならないと思います」

 異例の反論に、自民党系市議も「スルーしても良かったのだが、あそこまで踏み込むとは…。県庁所在地の首長として他市町村をリードしていこうという気概もあるのだろう。市民も納得出来る反論だったのではないか」と驚いた表情で話した。議会事務局によると、福島市議会では過去に1回だけ市長が「反論権」を行使した例があるという。

反論権を行使し「放出場所が近海であれば、その地域がリスクを負う事になる。そのような事が無いように領海内の沿岸から遠い海域での放出が望ましい」と述べた福島市の木幡浩市長

【「世界で海洋放出している」】

 実は木幡市長は今年4月9日の定例会見で、福島民友記者の質問にこう答えている。

 「いろんな状況から考えると、やはり、様々な風評対策をとった上でも、少なくとも福島県沖とか福島沿海とか言われない場所で海洋投棄するのが妥当ではないかと思っております」

 「少なくとも、福島県沖とか福島県と名前のつくとこでやったらまた我々はどんなに補償があったとしても、また風評の被害を被るのは間違いないと思います。その点では福島と名前のつかないところで海洋投棄をしていただきたい。できれば、日本全体のことを考えると巨大なタンカーにでも処理水を持っていって、そして日本領海のできるだけ影響の少ないところでやるべきだと私は思います」

 今回の答弁もそれを踏襲したものだった。山田市議に対して「地元の負担について一切言及されませんでした」と批判した木幡市長だったが、一方で山田市議が指摘したトリチウムそのものの危険性や、トリチウム以外の放射性物質も取り除けずに存在する事については触れなかった。

 「トリチウムを含んだ処理水の取り扱いにつきましては、国民に対し十分な説明を行ったうえで『福島』という名のつかない場所での海洋放出が妥当であると考えています。トリチウム除去の技術開発に全く見通しが立たないまま、このまま先送りすれば、風評を招きます。世界の原発でトリチウム処理水を海洋放出している実態からすれば、海洋放出以外に現実的な選択は無いものと考えます」

 「海洋放出に際しては、どのような対策を講じても放出した地域に関する風評を招きます。特に『福島県沖』とか『福島沿海』とか、『福島』という名の付く場所で放出すれば、これまでの風評に合わせて風評が強く露呈してしまうものと考えられます。私たち福島県民はこれまで散々風評に苦しみ、いまだ風評が根強く残っています。これ以上、風評のリスクにさらされる事は受け入れられません。『福島』という名の付く場所以外での放出を求めます。しかしながら、どこかの近海で放出すれば、その地域がリスクを背負う事になります。そのような事が無いように、領海内の沿岸から遠い海域での放出が望ましいと考えております」

エネ庁担当者が作成した資料でも、沖合での海洋投棄はロンドン条約違反だと明記されている

【「海はつながっている」】

 「処理水の処分方法については、トリチウムを除去する技術を開発出来ればそれに越した事はありません。しかし原発事故から9年半。この間、除去技術の開発は進まず、今後いつになったら確立できるのか見通しすら立っていません。処理水を処分しなければ保管タンクは増えて行きます。私は、保管タンクは私たちが今1日も早く搬出したいフレコンバッグのようなものだと考えております。それを福島県の腹の中に抱えていけば、県民の不安も風評も海洋放出以上に大きくなる事が想定されます。これは福島全体の話であります。問題の最大の源である原発の廃炉作業が遅れれば、長期的に福島にとって大きな打撃になるものと考えております。こうしたことから、県民、国民に十分説明し、いたずらに先送りする事無く、海洋放出するのが現実的であると考えております」

 そう述べ、繰り返し〝沿岸から遠い海域での海洋放出〟に賛意を示した木幡市長。しかし、経産省資源エネルギー庁廃炉・汚染水対策官の木野正登参事官は今月3日に開かれた市民団体「これ以上海を汚すな市民会議」との意見交換会で、「ALPS処理水も放射性物質を含んでいるので、沖合で投棄すると『廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約(ロンドン条約)』違反になる」と発言。木幡市長の言う「沿岸から遠い海域での海洋放出」が現実的では無いと認めている。

 仮に海洋放出するのであれば、結局「『福島県沖』とか『福島沿海』とか、『福島』という名の付く場所」で放出するしか無いのだ。だからこそ、市民団体も地上での保管を求めているのだ。

 木幡市長の答弁を受け、意見交換会に参加した女性も「沖合での放出自体、ロンドン条約で禁止されています。そもそも海は地球上どこであってもつながっているのです」と改めて陸上保管を求めた。

 「ALPSで処理をしても除去できない核種があります。〝処理水〟から取り除けない核種をどうするのかを決められないうちに海洋放出を決めるのは早すぎると思います。除染をしないままの山林から、近年の大雨とともに放射能を含む水が海へ流れ出でています。その上、原発事故後の汚染水を海に流したら、二重、三重の海洋汚染となるのではないでしょうか」

(了)

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