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盗撮犯を捕まえて恐喝する「盗撮ハンター」悪人を悪人が狙う複雑な組織犯罪

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BLOGOS編集部

裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火です。今回、傍聴したのは野原大輔被告人(30)が恐喝未遂容疑で逮捕された事件です。

起訴は2件。いずれも氏名不詳者と共謀のうえ行っています。1つ目は2020年5月4日13時47分から15時40分の約2時間、JR池袋駅で男性A(36)に「お前盗撮してたな。警察行くぞ」と胸ぐらを掴んで金銭を要求。しかし男性Aが被告人のすきを見て逃走し未遂に終わった件。

2つ目の起訴はこの事件の8日後、5月12日14時32分から14時55分の約20分。JR池袋駅で男性B(39)を「盗撮しましたよね」と脅し、示談金を要求。不審に思った警察官が被告人と男性Bに声を掛け未遂に終わった件です。

写真AC

スマホで女性のスカート内を盗撮したという裁判はここ10数年でかなり増えています。スマホが便利なため悪用する人も増えているということでしょう。そんな中、盗撮犯を見つけては弱みにつけこんでお金を要求する新手の恐喝が数年前から登場。本件も「盗撮ハンター」とキャッチーな名前をつけられて報道されていました。悪いことするヤツをゆする悪いヤツということですね。被告人は罪を認めています。

検察官の冒頭陳述です。被告人は大学を中退後、派遣会社を経て飲食店を経営。犯行当時は宝石商をしていたようです。前科は1犯で、今回と同じ恐喝。前科に関しては被告人質問の中で詳細が明かされます。被告人は今年4月中旬から似たような犯行を繰り返していて、その中の2つが起訴されたようです。

犯行当日の5月4日。被告人と氏名不詳の共犯者はJR池袋駅で盗撮している人がいないか階段付近で待機。すると男性Aがスマートフォンで女性のスカート内を撮影したため、被告人が「お前盗撮してただろ?」と声を掛け、共犯者の方は盗撮された女性に捜査関係者を装って近付き別の場所へ連れて行ったといいます。

被告人が男性Aを問い詰めているところで、被告人は被害者になりすました女性に電話。その女性が男性Aに「盗撮は罰金100万円だと聞いている」と言ったとか。そこで被告人は男性Aに警察に行くかお金を払うかと迫り、コンビニのATMでお金を下ろすことになりました。しかし残高が無く、被告人と男性Aは消費者金融に向かうも男性Aがすきを見て逃走したというのが1件目の事件の流れです。

2件目の5月12日も同様の手口で男性Bを脅して、ATMでお金を下ろすためにコンビニに向かう途中で警察官から職務質問を受けて犯行が発覚しました。

調べに対し被告人は「去年の12月か今年の1月に共犯者の男と知り合った。パチンコをするために池袋に行くと、その知らない男から『ガラケーを渡すから、悪いヤツがいたら連絡くれ』と言われた。今年の4月中旬にオカムラという男にガラケーを渡されて、盗撮犯からお金を請求する仕事があると誘われた。他にうまくいった案件があるかどうかは覚えていない。被害者を名乗る女性は電話口で、お金を出せではなく誠意を見せろと男性に言っていた」と供述しているそうです。

盗撮犯を脅すヤツがいて、スカート内を撮られた女性に声を掛けるヤツがいて、電話を掛けて金を匂わせる女性がいて、ガラケーを提供するヤツがいて…とそれなりに共犯者が多いことから組織的な犯罪だというのが伺えます。それだけ仲間を集めて獲物が見つかるのか? という疑問もありますが、スマホを使った盗撮が横行している証拠かもしれません。それにしても、スマホで盗撮したヤツを脅すヤツはガラケーという「スマホVS.ガラケー」の構造になっているのが面白いですね。

法廷には被告人の父親が情状証人として出廷しました。

弁護人「事件はいつ知りました?」
父親「6月の初めに警察からの連絡で知りました」
弁護人「事件聞いてどう思いました?」
父親「悪いことをした人であっても、弱みにつけこんで脅したりするのは非常にマズいことをしたな、と」

被害男性の盗撮が事件の発端ですが、そこを悪く言える立場でもないですしね。今後はコミュニケーションを増やして連絡を取ると約束していました。

脅しに屈しない盗撮犯は駅員に突き出していた

写真AC

そして被告人質問です。まずは弁護人から。

弁護人「いつから何件やりましたか?」
被告人「4月後半から。起訴された2件です。捕まえましたが被害者に謝罪の意思がなかったため、そのまま駅員のところに連れて行ったこともあります」

脅しに屈しない盗撮犯も当然いたみたいですね。被告人としては恐喝出来る相手を探しているだけですが、盗撮犯を駅員に突き出すのは立派です。お金を脅しさえしなければ正義の味方「盗撮ハンター」なのでしょう。

弁護人「これは誰が思いついた手口なんですか?」
被告人「オカムラという人間だと思います」
弁護人「あなたはオカムラの指示に従っていただけなんですね。今回は2件とも未遂ですがもしお金を脅し取った場合どうなっていたんですか?」
被告人「聞いていた話では、お金を女性に渡して、女性からいくらかもらうということでした」
弁護人「分配額は?」
被告人「それは聞いていません」

検察官の冒頭陳述では4月中旬から犯行を繰り返していたと言いますが、実際は盗撮犯を脅したのは2回だけ。もちろん一度もうまくいってないので被告人としては報酬額も分かっていないという状況なのです。

弁護人「やってはいけないことだと理解していますか?」
被告人「被害者も悪いことをしているとはいえ、弱みにつけこむのはよくありません」
弁護人「それを行っている最中、罪悪感はありましたか?」
被告人「被害者も犯罪をしているため全然ありません」
弁護人「その考えは?」
被告人「間違いだと思っています」
弁護人「被害者1人とは示談が済んでいますけど、0円で応じてくれたと」
被告人「はい」

被害者としても非があるからなのか1円ももらわずに示談です。ちなみにもう1人の被害者とは示談交渉を続けるそうです。

弁護人「取り調べによると何人かの共犯者がいます。茶髪や坊主という名前で呼んでいたそうですね。彼らとは現在も連絡が取れますか?」
被告人「取れないです」

当然ながら共犯者同士で本名は名乗っていないため、茶髪や坊主というニックネームでお互いを呼んでいました。なぜそこまでヘアースタイルにこだわっているのか分かりません。

今後は二度とこういった犯罪には関わらないこと、過去にやっていた経験を活かして飲食店の仕事をすることを約束して質問終了。

続いて、検察官の質問です。

検察官「共犯者の素性は全く知らないんですか?」
被告人「知らないです」
弁護人「オカムラも知らないんですか?」
被告人「歌舞伎町で以前店をやっていたので、その時の顔見知りと言うか、2〜3回会ったりしてました」
検察官「あなたの持っていた携帯電話には“先輩” “富山” “チャン・ドンゴン”と書いてありましたがこれは?」
被告人「もらった携帯なので誰なのかは知らないです」
検察官「“先輩” “富山” “チャン・ドンゴン”のどれかが、(さきほどの弁護人質問で出てきた)茶髪や坊主ですか?」
被告人「どれかだと思うんですが…」

ややこしい話ですが、共犯者である茶髪や坊主という言い方は被告人が見た目から勝手に呼んでいるだけで、オカムラからもらったガラケーに登録してある「先輩」「富山」「チャン・ドンゴン」と同一人物かどうかも分かっていません。そもそもガラケーに登録してあった3人の名前の中に、茶髪と坊主がいたのかさえも不明です。

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