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高知氏自叙伝「生き直す」発売に寄せて その4 新旧の高知東生が抱える葛藤

講演する高知氏 ⓒ田中紀子

田中紀子(ギャンブル依存症問題を考える会代表)

【まとめ】

・高知氏は地元 高知県をこよなく愛し、誇りに思っている。

・地元の友人の感じた芸能界で演じていた「高知東生」とのギャップ。

・怒りや悲しみを力に変える生き方は高知氏を追い込んだ。

高知東生氏は講演活動を始めた頃よく泣いていた。

特に故郷高知に関する出来事やお母様のことを語り始めると、涙ぐむことが多かった。それだけ幼少期から青春期の高知氏の心の中には昇華しきれない思いを抱えていたのだと思う。そして「高知」と芸名を名乗る自分が不名誉な事件を起こしたことで、大切な故郷を傷つけてしまったことを悔いていた。

自叙伝にも詳しく書かれているが、高知氏がTwitterに母が自死した時のことを連続ツイートした際に2.2万のリツイートと16万ものいいねがつき話題となったのでご存知の方も多いかと思うが、お母様が最後に高知氏に残した言葉は「私、綺麗かな?」というものだった。その時、高知氏は「実の息子に何を言ってるんや。気持ち悪い。」と言って高校の寮に帰ってしまったが、車のドアが閉まる際にお母様は泣きながら笑っていたというのだ。

そして高知氏は生涯この時なぜ「綺麗やぞ、お袋」と言わなかったのかと悔やむことになる。

私も、はじめてこの話を聞いた時はなんという切ない最期だったのだと胸が締め付けられる思いがした。

そして高知氏は出会った当初「おふくろは母親よりも女でいたかったんだ。」とよく淋しそうに語っていた。「愛されなかった子供」高知氏は自分で自分のことをそう責めているように思えた。

また高知氏は地元高知県をこよなく愛し、自分が土佐っ子であることを心から誇りに思っている人である。高知氏というと「都会の色男」を想像する方も多いと思うが、実際はもっと素朴で、今でも深い絆で結ばれ、思い出話を楽しそうに熱く語るのは、決まって青春時代をすごした高知での話しなのだ。特にお母様が亡くなって、淋しさと居場所のなさ、そして受け止めきれない現実の中で、はちゃめちゃに暴れる高知氏を受け入れてくれたヤンチャ仲間との友情は、高知氏の大きな支えになっている。

私も、高知氏と仕事をする際には相手がどう出てくるのか?薬物事件をどう思っているのかがわからず身構えてしまうことも多いが、高知県での仕事で御一緒させて頂く時には地元の仲間の方々に守られている空気感にホッとできる。

高知氏と出会って意外性に驚かされることは沢山あったが、最も忘れられない出来事もこの地元高知県にまつわることである。

高知県には「よさこい祭り」という日本を代表する有名なお祭りがあるが、実は、江戸っ子の私はこれまでこの「よさこい祭り」を全く知らなかった。高知氏に「よさこい祭りって名前は聞いたことあるけどよく知らないなぁ?」と伝えると逆にものすごく驚かれ、その規模の大きさと、いかにそのお祭りが全国で注目され、白熱し、盛り上がるかを力説された。それでもうまく想像できない私に業を煮やし、高知氏はご自身がチームを作られて参加された時のDVDを見せてくれた。そのDVDはよさこい祭り当日までの練習期間から当日の熱気までを余すことなく伝えたドキュメンタリーになっていて、(実際ドキュメンタリー番組としてTV放送もされた)その迫力に私も圧倒された。

私もたいがい祭り好きだが、高知氏も相当のお祭り男のようで「こうやって振り付けを皆で練習するんや」とか「ここのアーケードが観てる人と距離が近くて一番盛り上がるんよ!」と解説にもどんどん力が入っていった。各チームにカラーがあるようでユニフォームなどもそれぞれ作られるようだが、高知氏のチームは「飛龍」と名乗り、高知氏らしい男らしいデザインになっていた。「ユニフォームかっこいいですね!今もとってあるんですか?」と聞くと、高知氏はしばらく沈黙したあと「見るのが辛ろうて、捨ててしもうた。」と言った。そしてDVDを見終わりふと高知氏をみるとそれこそ滂沱と涙を流していた。私が「どうしたんですか?」と驚くと「俺は、こんなに良い仲間がいたのに、みんなを裏切った」と嗚咽していた。

自叙伝には事件後故郷に帰りたくても、地元の仲間に合わせる顔がないと帰る気になれなかった高知氏に、故郷の友人が粋な計らいをして帰らせるエピソードがある。

この度の出版のタイミングでもたまたま高知でのセミナー(ギャンブル依存相談を 高知東生さんら呼び掛け 高知市でセミナーがあり、今回も高知氏の帰郷に立ち会わせていただくことになったが、地元の仲間の方は事件を起こした高知氏に対しても変わることなく迎え入れ「もう一度再起するまで頑張れよ!」とエールを送っていた。

多くの友人たちに青春時代のエピソードをからかわれながら、やんちゃな少年の顔を覗かせる高知氏を見ていると、芸能界で演じていた「高知東生」とのギャップに驚かされる。一人の同級生の女性が「ヤンチャで女の子にも本当にモテて、それこそよりどりみどりだったけど、不思議と丈二(高知氏の本名)は恨まれていないのよね。みんなよい思い出だと思っているの。」とおっしゃっていたのが印象深かった。

母の自死で天涯孤独となりたった一人で6万円を握りしめ東京に出てきた高知氏は、これまで身に着けた価値観だけを頼りに「負けるものか」「成りあがってやる」「今に見てろよ」と歯を食いしばって生きてきたはずだ。そして都会のましてや芸能界の荒波にもまれ、人の裏表を目の当たりにし、泥を飲むことを当たり前と思い、それでも平気な顔をすることこそ強さだと信じてきた。

しかしその怒りや悲しみを力に変える生き方は「もっと、もっと」と自分を追い込んでいくことになり、最終的には薬物事件へと繋がっていった。

高知氏は、我々と知り合い依存症のプログラムに繋がったことから、本当の自分の姿と、自分を鼓舞し作り上げていった精神論の狭間で苦しむことが今でも度々ある。

自分を厳しく責め続け、ダメ出しをし、歯を食いしばって我慢をしていないと、自分が自分なくなる気がしてしまうのである。「俺は、いつからこんな腑抜けになったんだろう」と良く話されるが、実は、依存症から回復する際には、この新旧の価値観が交錯する苦しみを誰もが経験することなのだ。高知氏は現在順調な回復を続けていると言えよう。

▲【動画】Japan In-depthチャンネル「薬物問題を知ろう!」 https://youtu.be/qfhk_pOnpuE

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