記事

民意に「耳を傾けすぎる政府」が混乱深めた?西田亮介氏に聞く、コロナ禍で場当たり的な対策が続いた理由

2/3

感染症だけでなく、不安のマネジメントに失敗した

——それくらい先の見えないというか、予測しづらい状況だったということでしょうか

感染症それ自体については、感染の先行き含めてある程度計算できるところがあるはずです。ただし、緊急事態宣言などで、広く国民生活や経済活動を制限することになったように、また持続化給付金や特別定額給付金のような給付措置もあり、コロナ対策は純粋な感染症対策の範囲にとどまりません。派生して広範に強い不安が生じ、そのマネジメントに失敗したのではないでしょうか。

10年前、新型インフルエンザが感染拡大したときにも、情報が人々の行動へ影響するということや、そうした状況を防ぐために行政が情報発信をしっかりとやっていかなければならないということは総括されていました。しかし、これはいまのところ改善されていません。ネットとSNSの普及もありむしろ、その重要性はますます増していますが、十分検討されてこなかったか、かたちにされてこなかったのではないでしょうか。

——情報がないことによって、不安ばかりが募っていく事態になっているわけですね

客観的な事態と認識の乖離はしばしば生じますが、不安によって人々は突き動かされます。なんとなく不安だから買い増しをする、買い占めをするということがありえるわけです。たとえ供給体制が揺らいでいなくても、そのことが実際の品不足を引き起こしたりするわけですよね。

もちろん感染対策もしっかりやる必要はありますが、政治も、行政も人々の不安とどう向き合って丁寧に対処する方法も考えるべきです。

——情報流通によって広がっていく不安に対して、できることはあるのでしょうか

WHOはおもにネットのデマ情報において、インフォデミック(インフォメーションとエピデミックを組み合わせた造語)の対応が必要だということで、ISAQという基準を出しています。

これは情報を発信するにあたって必要な、4つの項目「Identify(明確化)」「Simplify(簡素化)」「Amplify(拡散)」「Quantify(定量化)」の頭文字を取ったものです。不用意なデマ情報の拡散を防ごうというわけですね。

——たしかにネットではISAQとは真逆の不安を煽るような情報が拡散しやすいので有用だと思います。マスメディアについてはどうでしょうか

マスメディアも、とくにワイドショー的なものはこれらの観点でどれにも合致しないどころか、でたらめもいいところだったと思います。

ワイドショーは、やはり視聴率に重点をおいた番組作りになりますし、朝から晩まで、同じような内容を繰り返し流しています。ただ日本においては、よくも悪くもワイドショーは多くの人に見られていて、「民放キー局がやっているから」と、妙に信頼されている面もある。

——ネットではそうしたワイドショーの姿勢は批判されていましたが、結果的に、ネットでもその情報が大量に流れているという状況が生まれていました

結局、日本のメディア環境の特殊性というのは、ネットとマスメディアの距離がとても近いことです。ネットで広まっている情報の少なくない部分は新聞社やテレビの情報をもとにしたものです。それらがSNSなど様々な経路から大量に流通しています。

なので、マスコミ各社がどういった発信をするかは、新型コロナに対する世論や人々の受け止め方に強い影響を持っていたはずです。それがひどかった、でたらめだったといえるのではないでしょうか。

——マスメディアやSNSであやふやな情報が生まれ、それがネットを介して拡散することで民意のようなものを形成し、目に触れやすくなることで、「耳を傾けすぎる政府」が生まれる。ある種、仕組みのようなものができているということだと思いますが、これは今後どのような問題を生むと思いますか

「耳を傾けすぎる政治」に関連して、最近懸念するのは、本当に困っている人の声やニーズが聞き取りづらくなったのではないかと思うんですね。

生活保護バッシングや母子家庭の貧困問題などをはじめとして、日本においては、本当に困っている人ほど声を上げないという問題がある。そんな中で多くの人が、「政権どうなってるんだ」と思って、SNSで声高に発信すると、もともと声を上げることの少ない本当に困っている人の声がますます見えにくくなります。本来であれば本当に困っている人から対処しなければならないのに、「耳を傾けすぎる政府」は声の大きいマジョリティを優先してしまいます。このことを、大変懸念しています。

あわせて読みたい

「新型コロナウイルス」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    日本人はナゼ「貧乏になったこと」に気が付かないのか?

    内藤忍

    06月21日 14:24

  2. 2

    年上の高齢男性から告白されるということについて

    紙屋高雪

    06月21日 09:11

  3. 3

    「反ワクチン」言説は支持しません。が、Amazonなどからの一斉排除はいささかの懸念が残る

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    06月21日 08:18

  4. 4

    共同通信『慰安婦謝罪像、東京で展示を検討』 とんでもないことで許せぬ

    和田政宗

    06月21日 08:22

  5. 5

    60歳以上の約3割「家族以外の親しい友人がいない」孤独に長生きして幸せなのか

    毒蝮三太夫

    06月21日 09:31

  6. 6

    ワクチン接種の義務付けをめぐる「公共の福祉」と「個人の自由」日本とアメリカで違い

    中村ゆきつぐ

    06月21日 08:35

  7. 7

    日本政府、アストラゼネカのワクチンをタイに寄付へ

    ロイター

    06月21日 20:44

  8. 8

    小川彩佳アナと離婚へ ベンチャー夫の呆れた一言「今からなら、遊んでも…」

    文春オンライン

    06月21日 19:30

  9. 9

    尾身氏らが提言した無観客開催 五輪ファンの生きがいが奪われるリスクは検討したのか

    山崎 毅(食の安全と安心)

    06月21日 10:53

  10. 10

    日本に必要な国産ワクチン 「掛け捨て」で次の危機に備えよ

    WEDGE Infinity

    06月21日 15:24

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。