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民意に「耳を傾けすぎる政府」が混乱深めた?西田亮介氏に聞く、コロナ禍で場当たり的な対策が続いた理由

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新型コロナウイルスによって社会が大きく揺れていた7月末、東京工業大学准教授で社会学者の西田亮介氏が『コロナ危機の社会学』(朝日新聞出版)を上梓した。本書はコロナ禍において、不安が蔓延していく中で、不確かな情報によって政治や行政が混乱していく様を記録した一冊だ。

今回、新型コロナによって浮き彫りになった政治・行政の課題は何なのか、また、それらを生んだSNSをはじめとする現代の情報環境が持つ問題について話を聞いた。

感染症とともに顕在化した「耳を傾けすぎる政府」

——新型コロナウイルス感染症によって、この数ヶ月間、世の中はとても混乱した状況が続いていました。政治の分野でもそれは顕著だったかと思います。そのようすをどのように見ていましたか

まず、今回の新型コロナウイルス感染症の拡大は、戦後誰も経験したことのない規模でおこっています。10年前の新型インフルエンザの国内感染拡大と比べてもそうですし、社会、経済への影響もそうです。その点では、一定の混乱は仕方がないともいえます。

ただその中でも、政府が可視化された、わかりやすい「民意」に対して過剰に耳を傾けすぎたこと、つまり政策効果よりもそれによって支持率回復等が優先された可能性を懸念しています。

——『コロナ危機の社会学』の中でも「耳を傾けすぎる政府」というのはひとつのキーワードになっていますね

はい、「耳を傾けすぎる政府」という概念には、少なくとも3つのことが含意されています。

それは、①何かの原則に基づく判断ではなく、局面に応じて場当たり的に耳を傾けていること、②国民のことよりも、政権維持や内閣支持率といった政治の都合と利益を中心に考えていること、③効果的な対処よりも、単に幅広い人々の不安に突き動かされた不満と要求に対症療法的に何かしようとしているかのように見せかけたいということです。

東京工業大学准教授の西田亮介氏(2019年撮影)

——新型コロナによって、そのような状況が生まれたのでしょうか

新型コロナの影響ももちろんあるとは思いますが、これは安倍政権自体が持つ特徴のひとつが噴出したと考えています。おそらくこれまでに生じたいくつかの政治的なスキャンダル、インシデントも重なり、政治不信、それから政権支持層と不支持層の分断も強まっていました。このような政治的、社会的積み重ねが、コロナ禍でそのような事態を招来したという見立てです。

——これまではそうした対応の仕方でも様々なインシデントを乗り切ることができたものの、新型コロナにはそれでは難しかった?

コロナ禍は社会、経済に大きく影響を与えました。それらへの影響や人々の不安、不満、不信感にまったく答えられていないでしょう。

平時には場当たり的な対応で、相対的な優位に立つことができれば勝てる選挙もそうですし、いつの間にかソサエティ5.0的なものになってしまった「アベノミクス」はじめ、看板ばかりで実質が伴わない政策だとしてもなんとか政権の都合で乗り切ることができていましたが、人間の事情を考慮してくれないウイルスにはそうはいきません。

——一方で、民意に耳を傾けて政治をおこなうというのは、自然なことのような気もします

民意を注視する必要があるのは当然ですが、民意は正確であるとは限りません。ネットのランキングなどで可視化される、統計的妥当性も定かではない「民意」はなおさらです。他方、自由民主主義社会における民意は、たとえそれが不正確なものだとしても表明する権利が保障されているべきです。それが表現の自由でしょう。最近は世界中でその原則が揺らいでいます。しかしそうであれば、なおさら政治システムは単に民意に従えばよいというものでもありません。政策の前提となる情報に関して、政治行政システムと国民のあいだには非対称性が存在します。理解を求めるべく現状を詳しく説明するとか、場合によっては、ある政策の必要性を説得するということもすべきです。公文書、データの改ざん、隠蔽、国民の代表でもある国会での質疑、記者会見の受け答え等を見ても、端からそうした姿勢が見られませんでした。

——もし別の政権だったらうまくいったのでしょうか

わかりません。初期対応は相当程度、計画的なものだったので、それほど政権の如何にそれほど依存しないものだったようにも見えます。実際、新型コロナについては、野党も同じような「耳を傾けすぎる政治」になっています。たとえば国民民主党の玉木雄一郎代表は、「玉木私案」として、一時期補正予算100兆円、真水で用意するべきだと言っていました。いきなり国債で100兆円財政出動するべきだと言っているわけですが、しかも、使途の中身を見る限り、政府案とそれほど変わらないわけです。しかし民主党政権で行われた東日本大震災の復旧復興方針とは真逆ともいえるものです。どう理解すればよいのか、十分に説明しないどころか最近はこうした提案に言及することもめっきり少なくなったようです。思いつきだったのでしょうか。

これは、与党も野党もネットやSNSなどで見えやすくなっている民意に即応しようとしすぎているといえるのではないでしょうか。政治学者の御厨貴先生は政権を総括して「やっている感」と評していました。その現れのようでもありますよね。

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