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小太り韓国人ラッパーPSYのGangnam Style(江南スタイル)再考 全米1位とトップレスダンスは実現するか

英国シングルチャートで韓国人ポップミュージシャンとして初めて1位になった小太りの男性ラッパー、PSY(サイ)が、米国シングルチャートBillboard Hot 100で"Gangnam Style(江南スタイル)"が1位になれば「トップレス・パフォーマンスを世界中が視聴できる形で披露する」と宣言した。

"Gangnam Style"は英国シングルチャートで1位から2位に落ちたものの、ボリス・ジョンソン・ロンドン市長が英最大与党・保守党年次党大会での演説で「私もデービッド・キャメロン首相と"Gangnam Style"を踊った」とジョークを飛ばした。ネット上には、ジョンソン市長とキャメロン首相がPSYの馬ダンスを踊るパロディ動画まで登場した。

来月、創設60周年を迎える英国シングルチャートを主催する英オフィシャル・チャーツ・カンパニーの専務マーチン・タルボットさんは筆者に、「1967年デビッド・ボウイの”The Laughing Gnome”、1984年ポール・マッカートニーの”Frog Chorus(またはウィ・オール・スタンド・トゥゲザー)”を見ればわかるように、英国は昔からコミックソングが好きなんだ。コミックソングにキャッチ―なコーラスとダンスとくれば、ヒットはほぼ間違いない」と語る。

“The Laughing Gnome(笑うノーム)”は、デビッド・ボウイが、地中の宝を守る地の精ノームと「ワハッハッ、イヒッヒッ」と愉快に笑うコミックソング。”Frog Chorus”は、ポール・マッカートニーがカエルの合唱団と歌っている。

タルボットさんは「今回の大ヒットは世界中の音楽がインターネットやソーシャルメディアを通じて世界市場や英国に運ばれてくることを改めて示したと思う。”Gangnam Style"のヒットは大手動画投稿サイトYouTubeの力が本当に大きかった。米国の人気女性歌手ブリトニー・スピアーズが米トーク番組でPSYの”Gangnam Style"に興味を持った動画が世界中に流れ、英国ではウイルスのようなインパクトを持った。大スターも無名のアーティストも同じようにインターネットやソーシャルメディアの恩恵に預かれる時代になった」と話した。

国際レコード・ビデオ製作者連盟IFPIの年次報告書によると、2009年まで米国の音楽市場が世界一だったが、2010年には日本市場が40億9600万ドル(約3212億円、全体の25.4%)で世界一になった。米国市場は36億3500万ドル(約2850億円、同22.5%)だった。

しかし、その後はドイツ10.1%、英国9.7%、フランス5.7%、オーストラリア2.4%、カナダ2.3%、イタリア1.8%、ロシア1.7%、スペイン1.6%。欧米市場のトータルは57.8%を占める。

日本ではオリコンのCDシングル週刊ランキングで”Gangnam Style"は50位にも入っていない。米英シングルチャートでいずれも2位の”Gangnam Style"が日本市場でまったく売れていない理由は何なのか。

在日韓国人が多い関西圏の都市情報誌「関西ウォーカー」編集長で音楽業界にも詳しい玉置泰紀さんは「日本ではパパイヤ鈴木さんのように小太りだけで意外にダンスがうまいキャラがすでに売れており、欧米で受けたPSYのダンスもそれほど目新しく映らなかった。領土問題や李明博大統領の天皇発言で日韓関係が冷え込んでおり、何でも韓流の時代と違って、今、韓国のアーティストが日本市場に新規参入するのは難しい。これまでのK-popスターがまず日本市場を目指し、次に欧米市場で売っていったのに対し、PSYは直接、米国市場に乗り込んだ。日本には攻めてきていない。日本語を話せるのが日本市場で売る条件になるように、PSYの流暢なアメリカ英語は欧米市場で有利に働く」と分析する。

”Gangnam Style"が日本で売れていないのはPSYが日本市場でセールスをかけていないことが大きいようだ。韓国が日本をすっ飛ばして世界を目指していることは、スマートフォンや液晶テレビにおけるサムソンの世界戦略、そして欧州連合(EU)や米国と自由貿易協定(FTA)を結んだ韓国政府の戦略からもうかがえる。

いつもは、北朝鮮の核・ミサイル開発の取材でお世話になっている韓国・延世大学の武貞秀士国際学部専任教授にも”Gangnam Style"について尋ねてみた。以下は武貞専任教授のリポートである。
「 韓国のソウル市は、真ん中を漢江が流れています。その北側の地域が“江北(カンブク)”、南側が“江南(カンナム)”地区です。江北は大統領府、総合政府庁舎、旧市街ですから、古い町並み、大衆的な一杯飲み屋がたくさんあります。江南は新しい発展した街で、大型の店舗、トヨタ、現代の大型ショールーム、大型の百貨店が並びます。アパート群も多く、五輪競技場も江南。金持ちが多く、ファショナブルで、進歩的で、外車を乗り回し、スマ-トフォンを早くから使い回し、キザなタイプや、ファッションモデルなどが闊歩しています。進歩的野党の票田でもあります。鼻持ちならない体質をひやかしたのが“江南スタイル”です。江北の古くて保守的なムードを愛するオジサンと、江南スタイルを愛する進歩的な10代から40代前半までの世代との溝は深い。日本人は江南という地域の文化とその文化が持つ意味を知らないし、あのビートの効いたリズムは日本人にとっては、あまり主流にはならない。また、日本は可愛い子チャンブームであり、腰を動かす太り気味の韓国のオジサンには関心がないので、あの歌はヒットしないのでしょう。それに、日本では韓国ドラマ、韓国の歌手、韓国のリズムは、李大統領の天皇発言で“もう沢山だ”という雰囲気なので、日本ではヒットしないのでしょう」
筆者も参加している日本のブロガーサイト、BLOGOSで指摘された韓国政府の後押しについても武貞専任教授に質問した。
「韓国政府は韓国文化の発信を重視しており、ご指摘の通り、韓国政府は、韓国の料理、歌、ダンス、音楽を宣伝して、料理教室などの開催のために、中東、アフリカなどにも進出するため、50億ウォン(3億5千万円)の予算を先月、組みました。世界経済の冷え込みで韓国の輸出に不安感が出てきています。文化輸出は、韓国にとっての、重点項目になりつつあります」
YouTube で”Gangnam Style"の再生回数は何と4億回を突破した。週明けにPSYはトップレス・ダンスを披露できるのか。日本での関心がもう一つ広がらない中、世界中がどんなダンスが登場するのか注目している。(了)

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