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脚光を浴びる「個別株オプション」~ ソフトバンクGが謎の大量のオプション購入

「ソフトバンクグループ(SBG)が米ハイテク株のデリバティブ(金融派生商品)で数千億円規模の取引をしていることが分かった」(5日付日経電子版 「米ハイテク株急騰の陰にソフトバンクGか 米報道」

レギュラーコメンテーターを務めている「WORLD MARKETZ」(東京MX2;22:00~23:00)の先日(2日)の放送でも取り上げた「個別株オプション」取引。ここに来て直近のハイテクを中心とした米国株式市場の上昇、急落において「個別株オプション」取引が大きく関わっていたようだ。

そうした中でSBGが大規模はオプションを購入していたことはとても興味深い。

ベンチャー投資と上場企業のオプション取引とは根本的に異なる。孫正義氏ならそんなことは100も承知のはず。

なのにソフトバンクGは「「一部の内部関係者を不安にさせる」ほど「大量」のオプションを購入した」(5日付Bloomberg 「ソフバンクG、米ハイテク株オプションを1カ月に「大量」購入-報道」)と報じられている。同GはテスラやZoomといった直近の上昇相場の象徴的企業の株主で株価上昇によって大きなメリットを受ける立場にあるだけに気にかかる。

「ソフトバンクグループが6月末時点で米IT企業のネットフリックスやズーム・ビデオ・コミュニケーションズ、電気自動車(EV)メーカーのテスラなどにも投資していることが分かった。25銘柄への総投資額は約39億ドル(4100億円)」(8月18日付Bloomberg 「ソフトバンクG、ネットフリックスやズームにも投資-米株保有リスト」

SBGがテスラやZoomといった企業に投資をしていることが明らかになったのは「17日に米国証券取引委員会(SEC)に提出された四半期ごとの株式保有報告書「フォーム13F」」(同Bloomberg記事)によってである。

この報道が出てから、テスラやZoom の株価上昇に拍車がかかった格好になった。特にテスラの「個別株オプション」は大商いとなり、インポライド・ボラティリティ(I.V.)は110%超と異常な水準まで買い上げられていた。テスラ同様直近の上昇相場の象徴であるアップルの「個別株オプション」のI.V.は56%、Zoomでも70%程度であるから、テスラの「個別株オプション」の I.V.の高さは突出している。

プロの投資家はI.V.が110%を超えるようなオプションを「相場観」で手を出すことはしない。手を出す場合には必要なヘッジを掛けるのが一般的だ。しかし、直近の米国「個別株オプション」市場でじゃ取引の69%を個人投資家が占めており、「個別株オプション」取引に必要なヘッジが掛かっていなかったことはほぼ明らかだ。

「テスラ株が9%下落し407ドルを付け、権利行使価格500ドルのコールは翌日の満期日を前に90%下落。ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの株価は381ドルを付け、権利行使価格420ドルのコールは実質的に価値がなくなった」(4日付Bloomberg「米個別株オプションに熱狂した個人投資家、株急落で大やけど」

結果、3日の米国株式市場の急落によって「個別株オプション」に参加していた個人投資家は大きな痛手を被ることになった。

テスラは4日の取引では反発したが、「4日の米国株市場の時間外取引で米テスラの株価は一時8%の大幅安」(5日付Bloomberg 「テスラ株が大幅下落、時間外取引で-S&P500種銘柄に採用されず」)となっている。

これによってまたまた「個別株オプション」で痛手を被る個人投資家が出て来る可能性は否定できない。

気に掛かることは、テスラやZoom の大株主であり、株価上昇から大きなリターンを得る立場にある SBG が何故「一部の内部関係者を不安にさせるほど大量のオプションを購入した」のかというところ。SBGはテスラがS&P500に採用されることを目指し、それに賭けていたのだろうか。もしそうだとしたらSBGも4日の時間外取引でのテスラ株の急落によって痛手を被った可能性が出て来る。

一般的にオプション取引に関しては、「強気ならコール買い」「弱気ならプット買い」といったように、「相場観」に合わせて投資行動をとるものだと思われている。しかし、それは大きな誤解である。

個別株投資のように「相場観」で取引できるものには、ほとんど特別な「知識」は求められない。だからロビンフッドのような証券会社に大量の個人投資家が殺到するのだ。しかし、オプション取引は曖昧な「相場観」だけでなく、必要な「知識」が求められる取引である。オプション取引が個人投資家にあまり浸透しないのは、「相場観」以外の「知識」が求められるからに他ならない。

オプション取引の厄介なところは、知識の身に着け方、アプローチの仕方を間違えるとゴールに辿り着けないことだ。「相場観」からアプローチする方法と、難しいオプション理論を数学的に理解しようとするアプローチ方法などが代表的失敗例である。

もし、オプション取引の知識を身に着けたいと思っている方がいたら、拙著「中学一年生の数学で分かるオプション取引講座(Kindle版)」を参考にしてもらいたい。

これは数学が苦手な筆者が、「相場観」と「数学」を使わずにオプション取引を理解するために実践したアプローチ方法である。「相場観」を身に付けたい人や、オプション取引を理論的、数学的に理解したい方には何の参考にもならないが、投資家として理解したい人、理解しようとして挫折したことのある投資家には参考になるはずである。

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