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  • ロイター
  • 2020年09月05日 11:53 (配信日時 09月05日 11:35)

アングル:「普通の風邪」ベース、中ロのコロナワクチンに不安


[トロント/シカゴ 31日 ロイター] - 中国とロシアでそれぞれ開発されて世界に広く知られるようになった新型コロナウイルスのワクチンには1つの共通項が存在する。不十分な効果しか得られない可能性だ。どちらの国のワクチンも、ごく普通の風邪のウイルスをベースに作成されている。多くの人が感染した可能性のあるワクチンだ。これが効果を限定的にしてしまう恐れがあると専門家は指摘する。

<効果は7割に届かない、との指摘も>

中国人民解放軍のみに使用が承認されたカンシノ・バイオロジクス(康希諾生物股分公司)<6185.HK>のワクチンは、ヒトアデノウイルス5型(Ad5)の遺伝子組み換え操作によるものだ。米紙ウォールストリート・ジャーナルは先週、同社が大規模臨床試験を完了する前に、幾つかの国と緊急使用許可を得るための話し合いを行っていると伝えた。

ロシア政府が8月、ごく限られた試験だけで承認したガマレヤ記念国立疫学・微生物学研究センターのワクチンは、Ad5と、もう1つの、よりマイナーなアデノウイルスに由来する。

米ジョンズ・ホプキンス大学のワクチン研究者アナ・ダービン氏は「Ad5はすでに多くの人が免疫を持っているという単純な理由で、効果が気掛かりだ。中国やロシアの戦略がよく分からない。効果の程度は多分70%に届かないだろうし、40%かもしれない」と語り、何か別のワクチンが登場するまで何もないよりはまし、という理屈だろうかと首をかしげる。

ガマレヤ研究センターは、2種類のアデノウイルス由来というワクチン手法によって、Ad5の免疫を巡る問題は解決されるとの立場だ。

カンシノとガマレヤ研究センターはいずれもコメント要請に応じなかった。双方の研究者は、エボラ出血熱に対してAd5由来のワクチンを開発した経験を持つ。

<標的のウイルス誤る懸念も>

過去数十年を振り返ると、さまざまな感染症向けにAd5由来のワクチン投与実験が試みられてきた。ただ幅広く使われたケースはない。ワクチンは、遺伝子組み換え操作で無害化したAd5ウイルスが「ベクター(運搬者)」となって、標的のウイルス、つまり今回は新型コロナウイルスが持つ遺伝子を体内細胞に運び込んでしまい、実際の新型コロナウイルスが攻撃してきたとき、免疫反応を起こさせるという仕組みだ。

ところが多くの人は既にAd5への抗体を持っているので、免疫システムは標的のウイルスではなく、このベクターを攻撃してしまい、肝心の効果を弱めかねない。

こうした中で、Ad5以外のアデノウイルスをベクターに利用するか、あるいは別の遺伝子運搬メカニズムを用いる複数の研究が行われている。英オックスフォード大学と英アストラゼネカ<AZN.L>はチンパンジーアデノウイルスを、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)<JNJ.N>は比較的希少なウイルス株の「アデノウイルス26型(Ad26)」をそれぞれベクターに選んだ。

カナダのマクマスター大学出身で、2011年にカンシノ初のAd5由来ワクチンを結核用に開発する作業に携わったZhou Xing博士。彼のチームは現在、吸入式のAd5由来新型コロナワクチンを開発中。この方式により、人体が既に持ってしまっているAd5への免疫問題を回避できる方法を理論化しつつある。

それでもXing氏は、実用化競争ではこのワクチンよりもオックスフォード大のワクチン候補の方がかなり優位に立っていると認めた。Ad5をベクターとするカンシノのワクチンの投入量が増えると、発熱を引き起こす可能性があり、ワクチンへの人々の疑念をかき立てる恐れもあるという。

米フィラデルフィアにあるウィスター・インスティテュート・ワクチン・センターのファウンディング・ディレクター、ヒルデガンド・エルトリ博士は、Ad5由来ワクチンは抗体を持っていない人には有効だろうが、多くの人には抗体があると指摘する。専門家の話では、中国と米国でAd5の抗体を持つ人の割合はおよそ40%、アフリカでは最高で80%に達する。

<HIV感染のリスクも>

一部の科学者は、Ad5由来ワクチンが、後天性免疫不全症候群(AIDS)を引き起こすヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染リスクを高めるリスクに警戒感を示している。

米メルク<MRK.N>が04年に行ったHIV向けAd5由来ワクチンの臨床試験では、Ad5の抗体を持つ人のHIV感染確率が高まることが判明した。

一方、ロシアのガマレヤ研究センターのコロナワクチンは、Ad5とともに、J&Jと同じAd26の2種類をベクターに利用しており、ディレクターのアレクサンダー・ギンツバーグ氏は、Ad5の免疫問題に対処できると強調した。フィラデルフィアのエルトリ氏によれば、これで片方に免疫問題がある人でも、もう片方が機能することが期待できるという。

もっとも多くの専門家は、ロシア政府が大規模臨床試験のデータなしで10月からリスクの高いグループに接種を開始すると宣言したことについて、大丈夫だろうかと疑っている。

J&Jのワクチン開発を支援している米ハーバード大学のワクチン研究者ダン・バルーチ博士は「ワクチンの安全性と効果を証明することが非常に大事だ」と訴え、大規模臨床試験で望ましい、もしくは必要な結果が得られない場合も多々あると付け加えた。

(Allison Martell記者、Julie Steenhuysen記者)

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