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深刻な「大卒ニート」を減らすには、ハード面の労働政策だけでなくソフト面も大事~「既卒者カフェ」という名の"心のセーフティ・ネット"への支援を!

12月の就職活動解禁が近くなり、大学3年生や修士課程1年生は、就活に関して「何をどうやってよいか」そろそろ、気もそぞろとなる頃だ。そんな皆さんには「大卒ニート」という言葉はきっと嫌悪する言葉に違いない。

「大卒ニート」――決して気持ちのよい語感ではないが、一体定義は何だろう?まず、英国における"ニート"とは、「教育、雇用、職業訓練のいずれにも参加していない、義務教育修了後の16〜18歳(もしくは19歳)までの者」と定義されているが、日本では年齢も高く適用し、内閣府と厚労省の見解が違い、ややこしい。

正社員は6割しかなく、3万3千人の「大卒ニート」が発生

   そんなことより、文科省が8月27日に発表した2012年度学校基本調査(速報)は衝撃的だった。多くの人は、「大卒者の就職率は9割くらいだろう」とタカをくくっていたら、今春卒業した大学生約55万9千人のうち、就職したのは64%の約35万7千人と散々な結果。就職した学生のうち、正社員等の正規雇用に就いた人は6割しかいなく、約33万5000人。「進学も就職もしていない」卒業者が8万6千人もいて、その準備をしている人(多くは就活継続と推定する)は約5万3千人。残る3万3千人はどちらにも属さないいわゆる「大卒ニート」となってしまっている。

若者就職支援に「決定打」は今のところないのが現状

 重要なのは、意欲ある求職中の既卒無業者や、起業の準備や資格試験勉強をしていたり、ギャップイヤーを意識し、就業体験や社会体験をしている若者の存在で、彼らは前向きでニートと呼ぶ必要はない。深刻なのは、卒業して非求職型無業者になった青年や、就業・常用雇用(正規・派遣問わず)の希望がありながら、具体的な求職活動をやっていない既卒者だ。彼らの多くは、そもそも就活の失敗や挫折から自信とやる気をなくして、いつのまにか社会と接点が弱くなり、"ひきこもる"可能性が高い若者であるともいえる。こういう「大卒ニート」や「既卒ひきこもり」にならないよう、政策として政官の支援強化は行われている。思いつくままでも「3年以内既卒者トライアル雇用奨励金」「標準6カ月の無料職業訓練」「地域若者サポートステーションとの連携」「ジョブサポーター・ジョブカフェ・ジョブカード」などがあるが、残念ながら、決定打はない。「新卒一括採用」という慣行は、新卒者・企業双方にとってこれまで有用で、若年者の失業率を低く抑えてきたとされてきたが、間違いなく、一旦就職の機会を失った者(世代)にとっては再挑戦が難しいという構造的な問題を抱える。だから、就活を卒業後も継続して行なっている既卒者に話を聞いてみたいと考えていた。

「既卒者カフェ」という名の月1回のミーティングの存在

 そこで、6月20日の夕刻、新宿のファミリーレストランで行われた「既卒者カフェ」に、私は参加した。  「既卒者カフェ」とは、千葉大学を今春卒業した山口宏之さんが中心に立ち上げた任意団体だ。5月が初回、私は第2回目にオブザーバーとして参加した。コンセプトは、「大学等、高等教育機関を卒業して就職活動等を継続中の既卒者が集まるコミュニティ」で月1程度会って話をする会である。私は偶然この団体の存在をネットで見つけた。関心があったのは、欧米で大学・大学院卒業後にギャップイヤーを取って、就業・社会体験をして人材の能力・胆力作りをすることを社会も承認しているが、日本でも同様な人材評価の物差しにならないものかと、既卒者で無業の若者の様子を知りたかったこともある。 これは、BLOGOSでも簡単に報告している(7月3日付「卒業後ギャップイヤー」 http://blogos.com/article/42395/ )。

「新卒一括採用」をステレオタイプ的には非難しない既卒就活の身である参加者

 そうは言っても、5万人もいるはずなのに、彼らとの接点が見出しにくく、なかなか実像として「見えにくい層」である。バブル期の1990年以前に大学を卒業した世代は当然、その後の「就職氷河期」に該当しない人々にとっても、「大学を卒業して仕事が見つからない、あるいは就かない」という若者の存在はイメージもしにくいだろう。私も、新卒一括採用や社会評価システムに相当反感を持っている若者たちが集まるのではとも推測していたが、10人の皆さんにお会いし、見事にそれは勝手な思い込みであることを思い知らされた。そこでは、声高な制度や周りのせいにする声は聞かれなかった。

 個人情報に係ることかもしれないので、ひとことでいうと、どの方も分別があり、相手を思いやることができ、辛い就活があったがゆえに、それぞれ自分の考えや行動などを深くかえりみて内省ができていると思った。それと同時に、どうしてこういう魅力ある若者に正社員の道がないのか、企業の節穴を感じ、腑に落ちない思いになった。

既卒の就活継続者には、"心のセーフティ・ネット"として「ピアサポート」が必要では?!

 サイトを観ても「ピアサポート」という文字はないが、この集まりは、同じ個人的課題を抱える人同士が集まるミーティング形式の活動であり、「ピアサポート」そのものだと思った。  この日も、ひとりずつ順番に自己紹介を兼ねて、参加動機や自分の就活経験や現在の状況、家族との関係(境遇の理解不足、ギクシャクが多いように思えた)などを語る。他の参加者は時折質問をしたりするが、基本は話に傾聴し、「言いっぱなし」「聴きっぱなし」にしている。

 参加者のひとりは「卒業しちゃうと、他の学友は会社勤めで、自分は(マイノリティで)その集まりに参加しにくい。しかも母校のキャリアセンターも冷たく、ストレスを感じる。『既卒者カフェ』なら、大学は違っていても境遇は同じなので落ち着くし、家族には口にできないようなことでもここでなら安心して話して聴いてもらうことができる」と語ってくれたのが象徴的だ。「新卒マーケットより、中途採用の枠で応募してよいところもある」「東京新卒応援ハローワークは親切」など、実利になる情報交換もされている。人の話を聴くことによって元気が出てきたり新たな発見もあり、"英気を養う"機能があると共に、「大卒ニート」や「既卒ひきこもり」を未然に防ぐ"心のセーフティ・ネット"でもあるように思えた。

 その後、「既卒者カフェ」は活動が進展し、現在では横の連携として支部も整備されつつある。神奈川、大阪、神戸、沖縄に拡張し、10月4日には、NHK総合の夜6時すぎからの「首都圏ネットワーク」でも活動が紹介された。また、10日には30人の参加者をみて、「既卒者問題」をともに考える会「フューチャーセッション」を都内で開催し、進化を見せている。

 前述通り、既卒者雇用向けの"ハード"な労働政策はそれぞれ導入されているものの、決め手を欠く。せめて"ソフト"な「既卒者カフェ」のような活動を産官学民の各セクターでサポートできないかと提案したい。「産(経済団体や個別企業)」は、「卒後三年以内の新卒扱いの徹底によるフェアな機会提供の徹底」「再チャレンジへのリスペクト」、個別企業では、彼らに月1度程度ミーティング開催時に「会議室」を提供するところは出現してこないだろうか。「官(厚労省・文科省等)」は、さらなる有効性ある施策の検討と実行、「学(大学)」は卒業生への「就職サポートの強化」を願う。規制の多い現役就活生より、既卒は紹介もしやすいはずだ。これは、形ばかりのホームカミングデ―で好意形成を目論むより、実質的なキャリア支援は、今後大学の"売り"になるはずだ。

 最後に民のセクターでは、親はまず子供に無用なプレシャーをかけないことだろう。本人は大概自覚している。周りの特に叔父・叔母世代の40歳代以上の社会人は既卒者から求められたら、「社会資本」として喜んでメンターとなるということである。

「大卒ニート」は、中国では日本の100倍?!

 近藤大介(講談社)氏によると、中国には「無業遊民」と呼ばれる若者が最大5千万人存在するという。定義は「学校を卒業しても職に就かない、就けない」人々を指し、例の反日デモの主体をなす若者達だ。今年7月に700万人の大学生が卒業したが、300万人がこれにあたるという。単純計算で「大卒ニート」は、中国では日本の100倍にもなる。こういう事態にならないように、若者支援は産官学民の4セクターのオールジャパンで協力していかなければならないと強く思う。

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