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ふるさと納税、カジノ推進、辺野古移設…本当は地方重視の「真逆」 菅義偉は★1.5 ポスト安倍を辛口採点 - 古谷 経衡

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石破茂4.0を上回る最高点4.8は……? でもカギを握るのは二階俊博【ポスト安倍を辛口採点 篠原文也】 から続く

 歴代最長となる政権を担った安倍晋三首相が8月28日、体調不良を理由に突然の辞任を発表。今後の焦点は「ポスト安倍」の行方に移った。コロナ禍、東京五輪、経済対策など課題が山積する中で、次期宰相には誰がふさわしいのか。

「文春オンライン」では、各界の識者に連続インタビューを行い、「ポスト安倍候補」を5点満点で採点してもらった。今回は作家・評論家の古谷経衡氏に聞いた。


古谷経衡氏 ©文藝春秋

◆◆◆

菅義偉 ★1.5 実際は角栄と正反対の「富裕層重視」

 世襲ではなく、雪深い秋田から上京した苦労人だという点で、菅さんのことを“第2の田中角栄”だと言う向きがあります。確かに菅さんは北日本の日本海側出身者で、かつ地方活性を掲げているので「列島改造論」をぶった角栄と似た傾向があるかもしれませんが、菅さんが重視しているのは角栄とは正反対の大都市における富裕層だと言わざるを得ません。

 それは菅さんが総務相時代に地方活性の一環として創設した「ふるさと納税」に表れています。つい最近、泉佐野市がふるさと納税制度の対象自治体から除外されたことを受けて国相手に裁判し勝訴したことが話題となりましたが、創設から10年以上経った今、果たしてふるさと納税が地方活性に役立ったでしょうか。はっきり言って大都市の富裕層だけが得をする通販制度に成り下がっています。

 また菅さんはIR(事実上のカジノ)推進として知られていますが、IR利権で潤うのは地元ではなく、経営企業であり、日本人利用者も中産階級以上が想定されています。とにかく規制を改革して外資などに市場を開放していけば経済はうまくいく——。地方重視という割に、実際にやっていたのは新自由主義的な世界観の推進です。

 菅さんのやることは理屈ばかりで実践が伴っていない。現地に赴き、その地に住む人とどぶ板の会話をする「取材性」が欠けていて、理屈上、データ上でしか物事を考えていない。地方出身の叩き上げの政治家のわりに、永田町から遠く離れた地域の人や歴史のことを考えられていないのです。ここが田中角栄との最大の相違点です。

「沖縄の悲劇と屈辱に寄り添う」という姿勢は見られない

 菅さんは沖縄辺野古新基地建設にも関わり、地元ゼネコン等との関係を深めましたが、地元住民の理解を求めるためにUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)沖縄誘致を匂わせた時には私は失望しました。USJという“アメ”を沖縄に与えれば辺野古移設の議論も上手くいくと考えてしまう“垂直的な理屈バカ”さ加減に、一国のリーダーとしては危うさを感じてしまいます。軍民戦死者20万という壮絶な戦闘を経験した沖縄には、保・革双方に「損得」では割り切れない複雑な感情と中央(東京)との距離感があります。

 かつての宰相には少なくともこうした沖縄の保・革双方にある懊悩を踏まえたうえで、「先の大戦で唯一の本土地上戦を経験した沖縄の悲劇と屈辱に寄り添う」という姿勢があった。菅さんの一族は満蒙開拓団として敗戦時に内地に引き上げ、散々苦労しました。そういった戦争経験が一族にあるのに、「辺野古移設が唯一の選択肢」と居丈高に沖縄に強制する。はっきり言って沖縄を舐めている。取材力はおろか歴史への想像力が足りていないと思います。というか、単に歴史を不勉強なだけかもしれません。もっと勉強してはいかが?と言いたいです。

石破茂 ★5.0 ネトウヨに嫌われる「“まとも”な自民党議員」

 私はポスト安倍候補者のなかでは石破さんを一番推しています。実際に何度か対談させていただいたことがあるのですが、自民党内の杉田水脈氏や長尾たかし氏などの“人権意識を欠いた問題議員を許容する空気”について、石破さんははっきりと私に「(こういった風潮は)異常である」と断言しました。この一点を以ても、石破さんは極めて「まとも」だというのが私の評価です。

 石破さんがネトウヨから嫌われているというのも、高評価の根拠のひとつです。私は、ネトウヨに嫌われている自民党議員は逆に評価すべきだと思っているのですが、石破さんは見事に当てはまっている。ネトウヨの拒否反応の濃淡が「政治家としてまっとうか否か」を測るリトマス試験紙の役割を果たしてくれているのです。

 とはいえネトウヨも、2018年の総裁選で安倍総裁と単騎決戦した「反安倍議員」という一点のみで石破さんを嫌っているのでしょう。石破さんは侵略戦争の反省という戦後民主主義的価値観を重んじながら、現実的な防衛政策、とりわけ「本命」である憲法9条2項の改正を主張しています。彼こそが本当の保守本流なのに、それすらよくわからないで、対米追従と嫌韓・反中こそ「保守」であると錯覚しているものが石破さんを「左翼」などと批判しているだけです。これは「保守」の劣化以外の何物でもない。憲法9条2項を変えるという石破さんが「左翼」なら、全世界が左翼と極左急進主義の巣窟になってしまう。石破批判の理屈は荒唐無稽なプロパガンダです。

中曽根康弘氏と同じ、対米“面従腹背の思想”を持つ

 もう一点、石破さんが宰相に適格だと考えるのは戦後日本政治の構造的矛盾を認めているからです。

 私が考える宰相の条件で一番大切なのは、戦後レジームの脱却とそれに関する矛盾をどのように捉えているかという国家観です。日本には戦後続いた対米従属の構造を転換することが求められているが、第二次安倍政権で実際おこなわれていたのは更なる対米追従です。「戦後政治の総決算」を掲げた保守の政治家・中曽根康弘にはロン・ヤス関係に代表される日米同盟重視の水面下に、滾る面従腹背の思想があった。政治的理想と現状に矛盾が生じているなかで、日本の宰相にはその矛盾を認めつつ対米依存からの脱却の道筋を考えることが求められていると思っています。石破さんにはこの思想があります。

小泉進次郎 ★0 父親の存在がなければ市議で終わっていた人

 進次郎さんは著作を持っているわけではないので、テレビで見るインタビューの断片や雑誌への寄稿の断片から信条や思考を判断するにとどまりますが、はっきりと申し上げて、国政に出てきてはいけないレベルの堕落というのも憚られる低次元の政治家だと思っています。

アメリカに無批判にシッポを振る価値観

 彼の唯一の強みはアメリカに留学して英語が多少なりとも話せることだと思いますが、彼がアメリカで何をしていたかというと、共和党寄りのシンクタンクである米国戦略国際問題研究所の研究員だったわけです。事実上、アメリカ共和党の先兵です(しかしその中でも出来は悪い)。そのせいもあってか、2015年に記者団に語った言葉には「地元横須賀も、今週末に新しい空母、ロナルド・レーガンが配備される。ますます私の地元横須賀は大きな位置を占める」など自身とアメリカを一体視した極端なアメリカ従属的価値観が垣間見えます。まさに幼稚な事大主義者と言えましょう。

 こうした発言から感じられるのは、戦後日本政治の懊悩を理解するような基礎的教養も持たないままにアメリカについていくことこそが最良なのだと思いこんでいるのではないか、というイメージです。進次郎さんは父・純一郎氏と同様かそれ以上にアメリカに無批判にシッポを振る価値観を受容しているだけのように見えるのです。

 環境大臣としての世界への発信も危なっかしく見えるばかりです。環境大臣のポストが“キャリアの踏み台”のような側面があるのは否めませんが、小泉さんは環境問題に無教養すぎで、そもそも人文科学系統全般の基礎教養が無さすぎて、その知性はおおむね中堅高校2年生程度です。先の「セクシー」発言もそうですが、短い文章さえまともに書くことすらできず、無意味なポエムの羅列で、物書きとしての私からすれば、精神的に懲罰したいレベル。国内外に対して彼の存在は恥さらしです。

 彼は今回の総裁選には出ないでしょうし、次の内閣で閣僚ポストがどこになるのかによって存在感はどんどん薄れていくのではないでしょうか。どうせなら、横須賀の市議会議員からもう一度始めるべきです。というか、父親の存在がなかったら市議会議員レベルで終わっている政治家という見方が正しいような気がしてなりません。市議会議員が国会議員に比べてその地位が下位であると言っているわけではありませんが、こんな人間が「七光り」だけで国会議員になれる日本もいよいよ終わりです。

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