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モーリシャスで座礁 「社員17人」の小さな会社は莫大な賠償金を支払えるのか - 「週刊文春」編集部

 インド洋の島国モーリシャスの首都で8月29日、大規模なデモが起きた。

「沖合で貨物船『わかしお』が座礁して重油1000トンが流出し、事故対応をめぐって不安を覚えた住民が『今の政府はいらない』などと抗議したのです」(国際部記者)

 モーリシャス政府が損害賠償を求めているのが、貨物船を所有し、岡山県笠岡市に本社がある長鋪(ながしき)汽船だ。

「長鋪さんは江戸時代から150年続く同族企業で、長鋪慶明社長は地元ロータリークラブの会長も務めた。所有するタンカーなど外航船11隻を、今回貨物船を運航していた商船三井などの海運会社に貸し出しています」(地元関係者)


長鋪社長(笠岡ロータリークラブHPより)

 社員数は17人で、本社は老舗旅館のような佇まい。長鋪社長は海沿いの500坪の土地に居を構えている。

 今回の事故による環境への被害はどのくらいかというと、

「モーリシャスは世界有数の生物多様性を誇り、サンゴ礁やマングローブの経済価値はかなり高い。今回の事故は、推定100万頭の海洋動物が死ぬなど漁業にも多大な影響が出た、1989年のエクソンバルディーズ号のアラスカ沖での原油流出事故に匹敵すると考えられる」(環境経済学専門の栗山浩一・京都大学教授)

 この事故でタンカーの所有会社が地元住民らに支払った補償金は3億ドル(約320億円)以上。

 また、97年に島根県沖で6000トン強の重油が流出したロシア船籍のタンカー、ナホトカ号事故の補償額は約261億円だった。

保険でどの程度カバーされるのか?

 今回、モーリシャス政府は日本側にまず漁業支援費として約32億円を請求したと地元メディアが報じたが、長舗汽船は莫大な賠償金を支払えるのだろうか。

「船を所有する会社は船主責任保険に必ず加入しています。国際的な海事法『バンカー条約』で責任の範囲は決まっており、約10万トンのわかしおの場合、上限は約20億円。また、過失や故意と判断されても、油濁事故なら10億ドル(約1060億円)までカバーされるので、保険で支払える可能性が高い」(東海大学海洋学部・山田吉彦教授)

 ただ、環境法に詳しい高橋大祐弁護士が語る。

「単に従来の基準で賠償するだけでは、2010年にメキシコ湾原油流出事故を起こした英BP社のように国際社会から厳しい批判を受けることに。環境回復や被害者救済に向けて自主的に取り組むなど細やかな対応を行うべきでしょう」

 事故の対応について、長鋪汽船の広報を請け負う危機管理会社は「補償も保険会社と共に誠意をもって対応していきます」と答えた。

 モーリシャスの海が事故前の姿を取り戻すには、数十年かかるとみられている。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年9月10日号)

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